桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
65 / 131

65限目 功績

しおりを挟む
 翌日。

 集中していたはずであったが、日舞の稽古では師匠に“心配ごとがあるのか”と聞かれた。うまく誤魔化したつもりであったが、師匠の目を見るとバレているような気がした。
 彼女は昔からレイラの心の動きを敏感に感じとが、深くは追求することはなかった。

 手に汗を握る思いで稽古場を後にして自宅へ戻り、昼食を食べると、すぐにリョウの部屋の向かった。
 リョウは部屋の前におり、レイラの姿を見ると挨拶をしてから足を進めた。

「港さんの運転で行きます」

 リョウは自分の運転手を指名した。レイラは特に否定する理由がなかったため承諾した。

 はじめはリョウの後をついて歩いたレイラであったが早く知りたいという思いが強くなり、車への足が早くなりリョウを抜かしそうになった。
 すると、彼は苦笑しながら、レイラの足の速さに合わせた。

 レイラの頭の中は、今回の事件のことでいっぱいであり、車の中でリョウは話しかける事がなかった。リョウも特に何も言わず、運転手の港も最低限の言葉しか発することはなかった。
 目的地に着くと、レイラとリョウはチョーカーを港から受け取った。
 迎えの時間を確認すると、港とはわかれてホテルに入った。

「ここは母のホテル。あの部屋を使うのですか?」
「ええ」

 リョウは返事だけすると、フロントを素通りしてエレベーターに乗った。レイラは色々言いたいことがあったが、目的地についてからと我慢した。

 リョウがエレベーターにカードキーをかざすと、動き出し最上階で止まった。エレベーターを出ると一番端の部屋まで来るとまたキーをかざした。

 音を立てて鍵が空いた。

 そこは、宿泊するための部屋ではなく二台のソファとローテーブルがあり応接室のような作りであった。

「あっ」

 部屋に入ってすぐに目に飛び込んできた人物を見て、レイラは思わず声を上げた。

「お久しぶりです」

 扉の横に立っていたまゆらは、丁寧に頭を下げて挨拶をした。そんな彼女を見て本当は彼女を抱きしめたかったが我慢して、丁寧に挨拶をした。

 リョウもレイラに続いて挨拶をすると3人はソファに座った。

「お久しぶりですわ。まゆらさん。お会いできてとても嬉しいですわ」

 レイラは隣に座るまゆらに微笑み声をかけた。

「私もです」

 その声を聞いた瞬間、レイラは天に登る気持ちであった。
 また、彼女を抱きしめたかったが、必死にその気持ちを抑えた。

「兄とお知り合いでしたのね」
「……え~、まぁ。そうですね」

 リョウの事を話題に出すと、まゆらは困ったような顔をして、チラリのリョウの方を見た。彼はすました顔をしてるが、レイラはモヤモヤした。

(やっぱり、ゲームの強制力はあるよな。まゆらはヤツを意識しているみてぇだし)

 苛つく気持ちをレイラは必死に抑えて、笑顔を作った。

「それで、昨日の件を教えてくださいます?」
「わかりました」

 そこで、ずっと黙っていたリョウが口を開いた。まゆらは彼に任せようで頷いた。
 レイラから見らたらそれはまゆらがリョウを頼っているように見え内心穏やかではなかったが、今は何も言わない事にした。

「中村幸弘と会ったホテルでの出来事は覚えていますよね」
「ええ」

(忘れねえよ。だけど、別に未遂だしなぁ。だだ、その後の親の対応は問題だ。強姦されそうになった娘を運転手がいるとはいえ、1人で帰宅させるとか)

 レイラはあの日の事を思い出して目を潜めた。まゆらは事情を知ってるようで眉をさげ悲しそうな顔をしていた。

「あの事をきっかけに、父は中村製薬会社との取引を一切やめました。それがどう彼に影響したの詳しくはわかりませんが彼はレイラさんを逆恨みしていたようですね」
「そうですか」

(バカだなぁ)

 レイラはため息をついた。
 リョウは一切表情を変えずに淡々と説明をした。その抑揚のない言葉は感情が見えず不気味に感じた。

「彼の元恋人であるカナエさんがたまたま大道寺の家政婦になったので彼女からレイラさんの情報を聞き出していたようです」

(は? 幸弘とカナエは恋人だったか?)

 レイラはめちゃくちゃ驚いたが、リョウがその事をレイラが知っている前提で話を進めるのでそういう事にしておいた。

(そこまで、条件がそろってるならカナエが大道寺にきたはの“たまたま”じゃないだろう)

「“たまたま”とは偶然ですか?」
「そうです」

 彼の“たまたま”には違和感しかなかった。

 カナエはレイラと同じクラスの特待Sである彩花にそっくりである。そして、幸弘の元恋人という事は……。
 レイラが口を開こうとした瞬間、それを止める様にリョウが説明を続けた。

「大道寺の家政婦は派遣会社に頼んです。ですので偶然です」
「そうですか」
「そうです。彼はレイラさんを呼び出して集団暴行を加えようと計画しました。ですので彼らをおびきよせました。そして現行犯で逮捕です」

 レイラはリョウの話が終わると、勢いよくまゆらの方を見た。

「現行犯って。まさか、まゆらさんが囮ですの?」
「はい」

 まゆらは小さな声でいった。その瞬間、全身の血が一気にひいていくのを感じた。

「ーッ」

 レイラが勢いよく立ち上がろうとした時、体に重みを感じた。

「まゆらさん……」

 拳を握り、リョウを殴りつけようとしたレイラをまゆらが全身でとめたのだ。
 彼女に伸(の)し掛(か)かられて、レイラはバランスを崩してソファに倒れた。その上からまゆらが覆い被さる形となった。

「違うです。わ、私から囮になると言いました」
「……」
「えっと、あの、私、その日、たまたまホテルにいてその現場を見ていたのです。だから、レイラさんを傷つけた方に復讐しようと思って……」

(“たまたま”がおおいな)

 疑問に思ったが、涙目になって話すまゆらの言葉をさえぎることはできなかった。レイラは、黙って彼女の顔を見上げた。

「そしたら、あの方が逆恨みしていたようでしたので葬らないといけないと思いました」
「そしたら、リョウさんが協力してくれました。更にこの事が解決したらその功績としてレイラさんのお側にいてもいいと言ったです」
「そばって?」

 レイラその言葉に心が踊り、リョウの方を向いた。すると、リョウはニコリと微笑みうなずた。

「河野さんは素晴らしい能力を持っています。今回の件を父に話したらぜひ礼がしたと言っていました」
「そうなんですか」

 レイラはまゆらの肩を押してゆっくりと起き上がった。それに従い、まゆらも置きてソファに座ったが頬がつくくらいレイラに近かった。

「今回、レイラさんの命も危険もありました。ですので、まゆらさんの学費はすべて父が負担します。編入は難しいんですが、それは父に任せました。ただ、テストは受けなければなりません」
「リョウさんにテスト範囲教えてもらったけど、大丈夫そうです」

(だろうな。いや、でも兄貴の奴ちゃんと約束守ってくれたんだな)

 レイラは嬉しそうに笑った。

「よかったです。これで24時間レイラさんといられます」
「24時間?」

 レイラが首を傾げると、リョウは頷いた。

「ええ、河野さんの自宅からでは毎日学園に通うには大変ですからね。寮は高校生から使用できませんしね」

 レイラはこれからの生活がとても楽しみになった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...