桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
70 / 131

70限目 扇子を盗られた後のレイラ

しおりを挟む
(マズいな、マズいよな。あー扇子盗られたなんて言うんじゃなかった。つうか、渡したら主従関係結べな良いかと思ったがそう簡単じゃねぇよな。このままだと退学とか?)

レイラは亜理紗に扇子をとられて、桜花会役員に啖呵を切って桜花会室を出た後、すぐに亜理紗を探した。

彼女がどこに行ったか検討もつかない上に、帰宅した可能性もあったためレイラはまず玄関に向かった。そこで、亜理紗の靴箱を探し中身を確認した。

(靴がある。じゃ教室かぁ。高等部エリアは行きづらいんだなよなぁ)

そう思いながら、廊下をあてもなく歩いていると窓から中庭が見えた。中庭を取り囲むように校舎が立っているため適当に歩くと中庭に着く。

「あ……」

そこで、レイラは亜理紗を発見して思わず声を出してしまい口を押さえた。幸い、亜理紗は大きな声で話に夢中になっているためレイラの存在に気づいていないようであった。

レイラはそっと壁に体を隠し、窓の外をチラリと見た。

中庭のテーブルに座ったいるのは亜理紗と男子生徒であった。

(あれは、亜理紗の新しい特待Aか)

亜理紗はレイラから奪った扇子を広げて、自分をゆっくりとあおいでいた。

「亜理紗様、その扇子はどうなさったのですか」
「うふふ、流石、春人(はると)ね。よく気付いたわ」

亜理紗は目の前に座るウェーブの髪のソバカスがある少年を機嫌良さそうな顔で見た。

「これはね。桜花扇子よ。ある方に頂いたの」
「それでは、亜理紗様が次期副会長という事ですね。会長はどなたですか」

目にかかるくらい前髪の長い少年が楽しそうに言った。

「晃(あきら)それはまだ言えないわ」

ニヤニヤ笑いながら、もったいぶるような言い方をした。

「それでは3月の式典には亜理紗様が出られるのですね」
「そうね」
「では、その特待Aである僕も舞台に上がれるですね」
「ええ、勿論よ」

自信満々に言う亜理紗を春人(はると)と晃(あきら)は目を輝かせてみていた。

(おいおいおいおい。それは……。アイツはバカなのか? バカだろ。奪った扇子が本来の意味を発揮するわけねぇだろ)

見ているレイラはハラハラして顔を青くした。

(なんで、そんな事言っちゃうだよ。自分の首絞めてるだけだぞ)

更に、特待Aの二人に自慢話を続けるのでレイラは気が来てではなかった。
しばらくすると、特待Aの二人が頭を下げて中庭から室内に入り、亜理紗だけが中庭に残った。
優雅に紅茶を飲む亜理紗をみた。

(俺から扇子を奪ったことは桜花会役員にバレてるんだよな。つうか、俺が言っちゃたんだけど。まずいよなぁ。アイツどうなんるだろう。俺が余計な事言ったから)

誰もいなくなった中庭にいた彼女から先ほど人を見下すような笑顔は消えていた。
飲み終えた紅茶のカップをじっとみてはため息をついている。
そんな彼女がレイラには可愛く見えた。

(普段、勝ち気な表情ばかりするからギャップがあっていいな)

そんな亜理紗に見とれていると、バチと彼女と目が合った。

「レイラさん?」

突然、亜理紗が大声を出したため、レイラはビクリと身体動かして窓から離れた。そして、扉から出るとゆっくりと眉を寄せる亜理紗にのもとへ向かった。

「豊川先輩」
「何か用かしら? もしかして、扇子を取り返しにきましたの?」

亜理紗は立ち上がるとと持っていた扇子を閉じてその先端をレイラに向けた。

「絶対に渡しませんわよ」

(う~、それ持っているとマズイのはオマエなんだけどな)

「まったく、なんで貴女のような方が桜花会役員に気に入られているのかしら」
「気に入られてますの?」

その瞬間、亜理紗の目が吊り上がった。

「はぁ? そんな事も理解できませんの? 門で会えば憲貞様も香織様も貴女に挨拶をなさるでしょ」
「挨拶は人として当たり前だと思いますけど」

レイラが首を傾げると、亜理紗は持っていた扇子でテーブルを叩いた。その音が中庭内に響いた。
そして、彼女は、レイラの胸を指さしおでこがくっつくくらい近づいた。

(うぁ、ち、ちけーよ。唇くっつくって)

レイラが動揺するが亜理紗は頭に血が上りそれに気づいていない。

「本当に、何も知らないのね。普通、桜花会の人間から黒服に声を掛けることはないわ。それこそ呼び出し以外はね。同じ桜花会でも上級生、まして役員の方から声を掛けるなんでありえないわ。挨拶されたらチラリと見るくらいよ」

(コイツ、キレイな肌してな。可愛い顔してんだよな。唇もぷるぷるじゃん)

「ちょっと聞いているの」

まったく返事をしないレイラに亜理紗は真っ赤な顔をして更に近寄った。

(なんだ? 真っ赤な顔してコレ“ちゅー”してもいいのか?)

レイラが亜理紗の唇をに自分の口で触れた瞬間、亜理紗の大きな悲鳴と共に、扇子を持った右手が飛んできた。

(やべっ)

レイラが足に力をいれて後ろに飛んだため、亜理紗の扇子を持った右手は空中を言った。

「ななななな、なんなんののの」

顔を燃え盛るように真っ赤して亜理紗は叫んだが、言葉にならず何を言ってるのかわからない。

「そうしましたの? 何か問題でしたか」
「はぁ? 貴女、わ、あ、亜理紗にキ、キ…スをしたのよ」
「あ、近かったものですから」

亜理紗は涙目になり、口を抑えてレイラを睨みつけた。

「本当、信じられないわ。人に唇奪っておいてその態度?」
「ありがとうございました」
「ちがうわよ」

レイラの言葉を即座に否定すると、亜理紗は「ホントになんなの」と言ってその場に座り込んだ。
彼女の目にあった涙を見て、レイラは慌てて彼女に横にちゃがみ謝罪した。

「申し訳ありませんわ。あまりに可愛い顔が近づいたもので……」
「可愛い顔だからしたの? なにを言っているの? 亜理紗が貴女に何をしたか分かってる」

亜理紗が睨みつけるようにレイラを見ると彼女は首を傾げた。

「えーっと、キス?」

レイラは口に手を上げて亜理紗の顔を見ながら悩んだ。それを見て亜理紗はため息をついた。

「違うわよ。貴女に手を上げて扇子を奪ったわ。それに、登校日には圭吾様と仲良くするから引き裂きましたわ」
「そうでしたわね」

レイラが頷くと、亜理紗は眉をよせた。

「登校日、貴女は亜理紗を特待Aから助けてくれたわ。それでも、扇子を持っている事に嫉妬して奪ったのよ」
「嫉妬ですの」
「そうよ。一年のくせに、桜花会の役員の方に認められ可愛がられて。所詮は病院の娘のクセに」

(認められたいのかぁ。だから頑張ってアピールしてたんだ。可愛いなぁ)

ニヤニヤと突然笑いだすレイラに亜理紗は「え」っと言って身体を彼女から離した。

「何をにやけているのよ」
「え? あ、認めてもらいたいから頑張っていたなんて可愛いなと思ったですの」
「はぁ?」
「私が亜理紗様の頑張りを認めますわよ」

亜理紗は目を大きくして、顔を赤くした。

「なんで、貴女なんかに。意味がないわ」

亜理紗は背筋を伸ばして、扇子の先端をレイラの方に向けながら言った。亜理紗はレイラより少し身長が高いため、彼女が背筋をのぼすとレイラの顔のすぐ下に彼女の胸があった。

(この子けっこう胸が大きいよな。16歳でこのサイズかぁ)

「レイラさん。さっきからなんなの? 話す気あるの?」

亜理紗の声に慌てて、レイラは亜理紗の顔を見た。彼女は目を細めていた。もうその目に涙はなかった。

(やばい、おっぱい見てたとか言ったらまずいよな。えっと、あ、そうだ。うん)

「豊川先輩が可愛いから助けにきました」
「はぁ? 意味が分からないわ。大体可愛いってイヤミ?」

亜理紗はレイラの顔を指さして強い口調で言った。

「私(わたくし)? 確かに私(レイラ)は美しいですわ。毎日、鏡を見てうっとりしますわ」

自分の頬を抑えて、ニコリと笑うレイラに亜理紗は「そ、そう」と気の抜けたような顔した。

「それはそうと、香織様が私(わたくし)に渡したのですわ。亜理紗様が持っていたら不信に思われますわよ」

亜理紗にニヤリと笑い、大きく音を立てて扇子を広げて顔を隠した。

「だから、こうして扇子を皆さんに見せていますのよ。全生徒が認識すれば扇子は亜理紗の物になるわ。仮に香織様がレイラさんに渡したとおっしゃたとしても問題ないですわ。亜理紗が持っている時点でレイラさんが扇子を大切にしなかった証拠になるし」

(スカートの中が見えそう……)

レイラは体勢を屈めて亜理紗を見上げた。すると、亜理紗は楽しそうに高笑いを浮かべた。

「今更、頭を下げても遅いわ。これからしばらくは扇子を皆様に見せて歩くわ」

そう言って、亜理紗はテーブルにあった鞄を持って中庭から去っていった。

(う~。やっぱり難しいかぁ)

レイラは座り直しと残念そうな顔をして亜理紗の後ろ姿を見送った。

「行ったちゃった……」

レイラも帰ろうと思い、あたりを見回すと鞄がないことに気づいて立ち上がった。

(桜花会室に忘れたか)

めんどくさそうな顔をすると、亜理紗が歩いた道をレイラは歩き校舎内に入った。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...