桜華学園~悪役令嬢に転生した俺はヒロインに盗聴、盗撮、ストーキングされる~

黒夜須(くろやす)

文字の大きさ
100 / 131

100話 準備

しおりを挟む
 年が明けて、寒さが一層厳しくなった頃、レイラは桜花会室の窓から真っ白になった中庭を見ていた。

(相変わらず大道寺はクリスマスイベントはなく、年明けも両親が朝挨拶しただけだったな)

 レイラは毎年、この時期になると前世の盛大なクリスマスパーティーやカウントダウンが恋しくなった。

(あ、あれは?)

 レイラの視線の先には、中庭を歩く彩花と相馬の姿があった。彩花と相馬の姿があった。彩花は強い口調で何かを言ってるようだが相馬はそれをニコニコして聞いているようだあった。

 彼のいやに赤く腫れている頬が気になるが見なかったことにした。

「レイラ様?」
「え、あ、なんですの?」

 長時間窓の外を見ていたため、亜理紗に声をかけらた。

「何か気になる事がありましたか?」
「いえ、それよりもさっさと進めましょう」
「はい」

 レイラと亜理紗の前には山積みの資料があった。それは2か月行われる卒業式と桜花幹部の引き継ぎ資料である。
 数日前に憲貞と薫から引き継ぎを終え、今はそれをまとめると共に卒業式の準備をしている。

 扉を開ける音がした。

 分厚い資料を持って現れたのはレイラの兄であるリョウだ。

「お待たせしました。卒業式と襲名式の件は生徒会と話がつきました」

 そう言って、レイラと亜理紗に元に来ると二人に持っている資料を渡した。レイラは礼を言ってそれを受けるとすぐに読み始めた。
 亜理紗はリョウの顔を見ると大げさに机に突っ伏した。

「亜理紗もう無理」
「無理でもやってください」
「リョウちゃん、助けて」

 亜理紗の甘えるようなセリフにリョウは顔を赤くして隣に座り、資料を一つ一つ解説を始めた。

「実の妹の前でイチャつくのはやめてくださいます?」
「いえ、そんなつもりは……」
「レイラ様。お兄様を取ってしまい申し訳ないですわ。必要ならいつでも言って下さい。すぐに返すから」

 亜理紗が慌てる。リョウは嬉しそうに笑った。

「レイラさん。嫉妬ですか? 私はいつでもレイラさんが1番ですよ」

 レイラはため息をついた。

「お兄様、1番は辞退しますわ。それと、亜理紗、返却不要ですし不可です。だだ、公共の場では甘えないでください。兄のだらしがない顔など目が腐りますわ」
「腐るなんて……」

 反論しようとするリョウにレイラはキッパリと「恥じない行動を」と言った。それにリョウは素直に頷いた。

「あははは、いいね。会長らしくて素晴らしい」

 ずっと黙って仕事をしていた香織が笑いながら声を上げ、資料をまとめるとファイルに入れ棚にしまった。

「亜理紗の特待Aをクビにした時は驚いたが、リョウに家庭教師をさせるとは流石にいい考えだね。あんなに成績が上がるとは思ってなかったよ」
「クビではありませんあ亜理紗の頭の質は悪くないですわよ。兄は世話好きですから」

 レイラは、手を動かしながら答えた。

「そうかい。それにしてもレイラの方の特待Aはすごかったな」

 笑いながら言う香織を横目にレイラは、夢乃と藤子に“自分付の特待A”ではなくなる可能性を伝えた時彼らがダッシュで生徒会室に駆け込んだのを思い出した。

「生徒会の江本会長、驚いていましたね」
「あぁ、あの時はまだ学園側に相談中で話が生徒会までいっていなかったからな。レイラは伝えるのが早い過ぎる」
「失礼しましたわ」

 レイラがすまなそうに言った。

「この件で、レイラ君が特待Aに慕われていることが周知の事実になったからいいではないか」

 憲貞が助け舟の出すと香織が「結果だけをみればの話だ」とそう言いながら一枚の紙をレイラに渡した。彼女は礼を言ってそれを受け取るとすぐに目を通して満足げに笑った。

「おや、面白いかい」
「ええ。来年の生徒会も優秀な方が入りそうですね」
「う? 河野(かわの)まゆらって子かな? 中等部への編入っても珍しいがその編入試験が満点だったらしいじゃないか。通常の入試より難しい編入試験で満点は初じゃないかな」
「そうですね」

 レイラは桜花会メンバーを見て眉を寄せた。

(吉本先輩の名前がない……。辞めた? でもそんな話は聞かない。気づいたらいなくなっていた)

 彼女は深く詮索するのをやめて、他の生徒会メンバーと桜花会メンバーを確認した。

(あれ、阿倍野相馬が入っている。成績上げたのか。あとは新人1人……、うん?なんて読むん“一(いち)”か? いや、“にのまえ”かぁ。あとは……、桜花会は2名。この二人は知っている)

「桜花会の新規メンバーは2人ですか」
「二階堂(にかいど)春(はる)と横山(よこやま)大晴(たいせい)って……。アレか」

 春も大晴は香織が初等部卒業と共に入学したため接点はほとんどないが、噂になるほどの人物であった。

「二階堂さんは特殊性癖で、横山君は成金ですわ」

 亜理紗は発言すると、香織がニヤリと笑って彼女の方を見た。するとビクリと体を動かして小さくなった。

「せっかく、香織先輩とも話せるようになったのですから脅さないでください」
「あははは。亜理紗のリハビリまでご苦労だね」
「香織」

 バカにする香織を諌めたのは会長席でペンを走らせたいる憲貞だ。香織は素直に返事をすると軽く「ごめんね」と言った。憲貞の方からため息が聞こえたが彼はそれ以上何も言わなかった。

「特殊性癖は知っているが、成金って家のことか?」

 香織は続きを話すように亜理紗に目で訴えたが、彼女は言葉が出ず、困った顔でリョウを見ると彼は軽く頷いて口を開いた。

「はい。横山大晴は横山弁護士事務所の息子ですよ。現在は初等部の桜花会会長です」
「それは知っている」
「優秀な兄がおり、彼が継ぐようですから次男の大晴は割と自由に生きているようですね。特に母と姉は可愛がっているようで思い通りにならないことはなかったようです」

 リョウは感情を込めず淡々と話した。

「なるほどね。じゃさっさと天狗の鼻を折った方がいいよ」

 笑いながら言う香織であったが目が笑っていなかった。憲貞も頷いているようであった。

(過去の経験からくる判断かな。もしかして中村幸宏かぁ? 奴は先輩たちにトラウマ残しすぎだろ)

「二階堂春は噂通りの人物です」
「そうか」

 香織はリョウの説明に納得していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜

束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。 家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。 「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。 皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。 今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。 ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……! 心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...