リノンさんは恋愛上手

そらどり

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友達作ろう編

駄目でしたね

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「無理だった…………」



午前を終え、食堂で昼食をとっていた俺は俯きながら莉乃に報告する。



俺が食べているのは日替わり定食。今日は俺の好きなハンバーグだったが、恋しき味を堪能する余裕は全くなかった。



「いやー見事に玉砕したね」



そう言う莉乃は野菜炒め定食。以前莉乃からご馳走になった手料理よりも野菜が多めである。



だが、それに手を付けず、テーブルを挟んで座っていた莉乃は端に配置されていた味噌汁を気まずそうに啜っていた。



「ああ、無理だ。やっぱり俺には無謀だった……」



「あんなに張り切ってたのにね。あ、拓海に友達作りはまだ早かったのかな――なんて……」



雰囲気を和ませようと莉乃が冗談を言ってくれたが、いつものように言い返す気力に全くなれない。



「ああ、駄目だった……俺には最初から向いてなかったんだよ……!」



「え、ほんとに落ち込んでる……。ちょっと他の人もいるんだから泣かないでよ……?」



周りの目を気にして、ハンカチを差し出してくれた。



「うん、ありがと……」



「うわっ! す、すごい素直……」



思わず動揺の声を上げる莉乃。そこまで大袈裟に言わなくてもいいのに……



「(もう帰りたいなぁ……)」



今日は散々な目に会った。



莉乃の立案した内容通り、まずは挨拶。教室ですれ違うクラスメイトへ『おはよう』と声をかけるだけの簡単な取り組みだ。



ところが、クラスメイトと距離が近づくにつれて全身が針金のように固まってしまい、最後にはまともに口が動かなくなってしまった。



―――えっと……なんか用?



相手にそう聞かれ、なにも言えないまま俺は挨拶せずに逃げ出してしまったのだ。



「あああああ――――……忘れたい…………!」



思い出してしまった。たかが挨拶さえできない自分に嫌気が差す。



「…………なんかさぁ、カメっていいなぁ」



初めてカメが羨ましいと思った。甲羅があったら俺も引き籠れるのに。



「切実だね。なんかもう、普通に可哀そう」



「いちいちうるさいよ……え、なに? そんなに俺の惨めな姿見てて楽しいの? 挨拶さえまともにできない幼馴染がここにいますよーって皆に宣伝するんですか? 人の不幸は蜜の味ってやつですか?」



「確かに……このキャベツ甘い」



「いや、誰も野菜の糖分の話なんてしてないよ」



「うわ、情緒がすごい」



流石に付き合いきれなくなったのか、莉乃はただ感想を言うだけの外野になってしまった。声に感情が籠っていない。



「そりゃあ、こんな醜態晒したら誰でも近寄りがたいよな……」



やっぱりカメになりたい。ちゃんと餌を食べられて偉いねって褒められたい。



「ああもう……また落ち込んでる。挨拶から始めようって言い出したのは私なんだから、そんな簡単に見捨てないって」



その後小さい声で「まあ、掴みの挨拶失敗は予想外だったけど」と顔を逸らしながら莉乃は付け加えるが、俺には委細聞こえない。



「莉乃……お前…………」



なんていい奴なんだと、感動してしまった。



「だから泣かないでよ……! ほら、二度見されてるじゃん……!」



「だってぇ……っ」



「もうほんっと情緒不安定なんだから……!」



借りていたハンカチで目を抑える。



涙を拭き取るためでもあるが、それ以上に目の前の彼女に顔向けができなかった。



彼女の温かさに触れ、存在自体が神々しく感じられる。



「(見捨てない、か……)」



莉乃は優しいから、俺のことを助けてくれる。信頼できる人がいるだけで、とても心強い。



これならきっと大丈夫だ。午後も頑張れる――――――



「あれ? りのっち、もう移動しないと次の授業間に合わないよ?」



後方から莉乃を呼ぶ声。突然のことに身が強張る。



女子生徒が二人やって来た。どうやら食事を終えてトレーを返却口に戻す途中だったらしい。



「嘘!? なら急がないとじゃん! あ、ふみちゃん、ゆず、ちょっとだけ待って……!」



合流しようと立ち上がる莉乃。器に盛られていた定食は既に平らげられていた。



「え、莉乃? どこ行くの?」



そのままトレーを持って立ち去ろうとする莉乃を俺は呼び止める。



「どこって次の授業だけど? ほら、5限の体育、女子は中距離走だから早めに行かないと……」



「え! さっき俺を見捨てないって言ってたじゃん! まさか裏切るつもりか……!?」



「裏切るって……体育は男女別なんだから仕方ないでしょ。流石にそこまで面倒は見切れないって……」



「じゃあね」と言い残し、莉乃は仲良しグループに合流していく。



「あ、ちょっと――――!」



再び呼び止めるが、今度は振り向かずに行ってしまう。先ほど話しかけてきた女子生徒と並び、そのままいなくなってしまった。



「(見捨てられた……)」



その場で呟く。が、誰からも反応されない。正真正銘の独りだ。



取り残され、俺はそんな無常感を味わいながら、味のしない昼食を済ませた。
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