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第二章
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しおりを挟む自分の席に座り、お気に入りの万年筆と自分で作った辞書を一応持ってきた。
「イリーナ嬢それは何?」
「これですか?自分で作ったスベリア語をまとめた辞書です。昔っから交流がある国の言葉なら辞書があるんですけど、流石に最近交流を始めたばかりのスベリア国の言葉の辞書は無かったので自分で作ったんです」
意外と辞書って作るのが大変なのよね。
初めて知った言葉を順番に書いていくだけなら簡単だけど、後から見返すことを考えたら法則性を見つけて作らないといけない。
頭文字で合わせるのが一番良いんだけど、それだと後から新しい言葉が出てきた時に加えるのが大変なのよね。
何回も書き直したから当時は大変だった記憶が今でも思い出せる。
「それは凄いな。イリーナ嬢はどうやって学んだんだい?」
「私はスベリア国から嫁いできた婦人に基本的な言葉を教えてもらい、その後は婦人が持ってるスベリア国の本を借りて、それを読みながら知らない言葉を婦人とあった時に教えてもらいました」
「それは言葉が分かるようになればなる程楽しいだろうね」
確かに楽しかった。
向こうの国とこの国では好まれる本の種類もちょっと違うみたいで、新鮮で楽しく学ぶことが出来たのよね。
ユーリ様も同じ経験があるのかしら?
「趣味で学んでいた部分もあるので、お父様やユーリ様の役にたてて良かったと今では思ってますわ」
「本はその国の文化を学ぶには一番いい教科書になるからね。私も時間の余裕があるなら色んな国の言葉を学んで、色んな国の本を読みたいよ」
「ユーリ様は本を読むのが好きなのですか?」
「好きだね。物語を読んでると主人公になった気分になれる。私は生まれたときから自分の人生は決まってたからね。自由に生きてみたいって思ったことが何度もある」
ユーリ様の気持ちが分かる気がする。
私は公爵家の娘だからいずれは親が決めた人と結婚しないといけないんだろうけど、出来るなら私が好きになれて、相手も私を好きだと思ってくれる人と結婚したい。
でも私は恵まれてる方なのよね。
お父様は私の気持ちを尊重してくれる。
もしも私が嫌だと言ったら無理強いはしない人だから、他の家の令嬢と比べたら贅沢な悩みよね。
「君たち近くないか?ユーリは無駄に顔が良いんだから、あまり娘に近づかないでくれ。娘が君の毒牙にかかるのは見過ごせない」
「酷い言いようだな?それではまるで私が悪い男みたいじゃないか」
「貴方は無駄に愛想を振りまいて、何人の女性をその気にさせてきたか自覚はないのか?私は宰相補佐として近くで何度も可哀想な女性を見てきたぞ」
確かにユーリ様はとても優しいから、男性なれしてない令嬢なら勘違いしてしまいそうね。
「私だって純粋に好意を示してくれる相手には敬意を持って接してるよ。だけど私が王弟だから近付いてくる相手には、ハッキリ冷たく断らないと調子にのるだけだからね」
ユーリ様の言ってることは間違ってはないわね。
ユーリ様のことを王弟殿下だから狙ってる人は、優しく断っても離れていくことは絶対にない、それだけ王弟殿下って地位は魅力的ってことだけど、ユーリ様からしたらあまりいい気はしないわよね。
公爵家である私やお兄様も同じような経験が沢山ある、これが高い地位で居る者の宿命なのかもしれないけど、私達からしたら自分自身を見てもらってないみたいで悲しさしかない。
だけど難しいのが相手を簡単に突き離す事ができないことなのよね。
相手が周りから見ても明らかに好意を示してるなら断るために突き離しても問題ないけど、もしも相手が曖昧にしていたら突き離す事が難しい。
理由は高位貴族である私達は何か理由がない限り、特定の相手に冷たい態度を取るのはあまり良くないからだ。
しては駄目ってことではないけど、私達が特定の相手だけに冷たくしたり、もしくは優しくしたりしたら、その人が周りの人からも接し方が変わってしまうからなのよね。
それだけ公爵って地位は周りに影響を与えてしまう、公爵家の娘である私が特定の誰かを避けていたら、他の人達も巻き込まれたくないと思いその人を避けるようになってしまう。
逆に私が特定の人を優遇していたら、その人は周りから妬まれる可能性もありますし、その人が例え低い身分だったとしても、他の人から敬われる可能性もある。
そうならないために私達は皆に平等に接しないといけない、平等に親しくなるか、全員と距離を作るのかは決められることだけど、どちらを選んでも辛いのよね。
本心で話せる相手は中々作ることが出来ない、私が本心を見せることが難しいから仕方ないんですけど、寂しいことに変わりはないのよね。
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