【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ

文字の大きさ
138 / 143
第五章

27

しおりを挟む

 私は初めて入る地下牢でワクワクする気持ちと、ちょっと不気味だから怖いって気持ちで混乱する。

「大丈夫かい?怖かったら断っても良かったんだよ?」

 私がぷるぷる震えてるのを怖いせいだと思ってるユーリ様は、私を気遣ってくれる。

「大丈夫です。初めて入るので不思議な気分です。冒険気分でワクワクもするんですけど、ここの気配のせいか怖いって気持ちもあるんですよね」

「それが当たり前だと思う。ここは犯罪者の中でも凶悪犯が集まる牢屋だから、ここにいる者達は死刑が決まっているんだよ。そのせいで死の恐怖と戦ってるものばかりだからか、この場所は負の感情が集まってるからか空気が重くなりがちなんだ」

 スピリチュアルみたいなものか。

 暗い場所には悪いものが集まりやすいって言いますものね。

 てか………、ここにいる人達って全員が凶悪犯なんだ。

 テイラー伯爵令嬢はこんな所に入れられてるんだ。

 やったことを考えたら凶悪犯か。

「ちょっと怖い気持ちはありますけど、陛下が私がいたほうがテイラー伯爵令嬢の口が軽くなるって判断したなら、私はそれに協力するだけですわ。早く全ての真実が分かり、何の不安も無くなったほうがいいですからね」

 テイラー伯爵令嬢は牢屋に入ってからも、私に対してずっと悪態をついてるらしい。

 私が何もしないから悪いとか、自分はヒロインだとか、普通なら意味が分からないことばかり。

 この意味が分かるのは、私とレイチェルぐらいよね。

 でも悪役令嬢がいないとハッピーエンドになれないなんてその程度ってことよね。

 それに私は悪役令嬢って言っても、虐めたり妨害をするわけではない。

 ヒロインの成長を促すキャラだから、自分で成長できるように努力すればいいだけ。

 それなのに魅了魔法なんかに頼るから、こんなことになったのに私のせいにされても困る。

「イリーナ嬢は勇敢だな。でももしも途中で無理だと思ったら、遠慮なく言ってほしい。ここの担当の看守は半年で病んで辞めていく者ばかりだから、ここは精神衛生上あまり良くないんだよ」

「はい。無理は絶対にしませんわ」

 私達は何箇所かの牢屋の前を通るけど、誰も入ってない場所が続く。

 凶悪犯が何人も居るわけないわよね。

 それに死刑が決まってるものを、長期間もこの場所に居させるわけがない。

 死刑が決まったら、すぐに処刑されてしまうはず。

 だって犯罪者達が生きてる間にここで出される食事は、国民の税金が使われている。

 被害者からしても牢屋で苦痛もなく生きて、ただ飯を食らってるなんて許せないわよね。

 …………凶悪犯が沢山いるって考えたら、ちょっと怖くなってきたかも。

 もしも何かの事故で全員が牢屋から出てきたりしたら怖い。

 奥の方に進めば進むほど、牢屋の中に人が入ってる場所が増えてくる。

 私達が通ると牢屋の柵を掴み、助けを求めるように大声を出すもの。

 ここから出すように脅すものが居たり、牢屋の奥から出て来ないでブツブツ何かを言ってるものもいる。

 恐怖で体が固まってると、私の肩をユーリ様が抱き寄せる。

「大丈夫だから。何があっても絶対にイリーナ嬢は僕が守る」

 ユーリ様の励ましに勇気を貰い、ゆっくりとだけど前に進む。

 私達の前を歩いていた王妃様が私の様子に気がついてくれて、歩みを止めて私の隣に並ぶ

「まだ若い貴女にはここは怖いわよね。ごめんなさいね。私達がお願いしたからこんな所まで来ることになってしまって」

「王妃様が謝ることではありません。ユーリ様からテイラー伯爵令嬢が脱獄を企んでいたと聞きました。そんな人物を私だけの都合で部屋を移動させるわけにはいきませんから」

 テイラー伯爵令嬢は最初は若い女性ってことで、一般牢に入れられていたけど、看守を魅了して逃げ出そうとしていたと聞いた。

 魔導具のおかげで未遂で終わったけど、そんな危険人物を一般牢では無理ということで、警備も厳しいここに入れられた。

 もう魔法は使えないとはいえ、そんな危険人物を王族に会わせて良いのかしら?

「私よりも陛下と王妃様は大丈夫なんですか?逃げ出すためならお二人に何かする可能性もありますよね?今も逃げることを諦めてないって聞いてます」

「危険かもしれないけど、私はあの者を許せないのよ。馬鹿な息子だったけど私は子供を愛していたの。また子供を手放さないといけないなんて、理由を作ったあの者を許せないわ。絶対に罰を受けさせる」

 また子供を手放すか………、

 生まれたばかりの息子を実家に任せたことを言ってるのかな?

 王妃様からしたら双子って理由で息子を手放さないといけなかったことが、今でも辛い出来事として残ってるのかもしれないわね。

 今はその息子が学園に通うために近くに居るのに、自分が母親だって堂々と名乗れないのは、何よりも辛いかもしれないわね。

 この事件を陛下が率先して動いてるのは、王妃様と同じ気持ちだからなのかもしれないわね。

 今までの陛下を見てると、息子を見限ってるように見えたけど、本心では息子に跡を継いでほしかったのかもしれない。

 だけど息子に任せる事はできない。

 陛下にとってジレンマだったでしょうね。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

処理中です...