なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ

文字の大きさ
19 / 147
2章.冒険者編

17話.初めての依頼

しおりを挟む
 冒険者ギルドに到着したクロムは、昨日と打って変わり活気に溢れていることに若干の戸惑いを隠せなかった。

「誰もいなかった昨日とは大違いだなぁ……
 でもまぁ、とりあえずは手頃な依頼がないかを探さないと……」

 クロムはギルド内でもっとも人の集まっている場所に依頼が張り出されているのを見つけた。
 そしてその人垣をかき分けて張り出されている依頼の前に到着したクロムは、どんな依頼がでているのかを確認するのであった。

 張り出されている依頼は人探しから魔物討伐まで多種多様なものが並んでおり、どれが初依頼にふさわしいのかを決めかねていた。
 やがて全ての依頼書に<対象ランク>という項目が書かれていることを発見したクロムは、昨日スズがした冒険者の説明の中に自分の冒険者ランクの1つ上~1つ下までのものが受注できるというものがあったことを思い出したのであった。

 クロムはFランク向けの<薬草回収>の依頼書を手に取り、カウンターの列に並んだ。
 しばらくするとクロムの順番となり、昨日と同じくスズが担当してくれることになった。

「あ、クロムさん。おはようございます。
 今日は…… さっそく依頼探しですね?
 お持ち頂いた依頼は…… 
 初心者冒険者さん向けの依頼ですから、初依頼にはちょうどいいかもしれませんね」

「何事も基本が大事ですからね。
 この依頼は、依頼書に貼られている写真? の薬草を集めてくればいいのですよね?」

 クロムはいかにもファンタジーな街並であり文明レベルは中世レベルのように感じていたこの世界に写真があることに驚いていた。
 しかしそんなことは微塵もみせないように平静を装いながらスズに尋ねるのであった。

「はい、その薬草を20本お願いします。
 それ以上でも買取はしますので、無理のない範囲で頑張ってくださいね」

 スズからおススメの薬草の生息地を教えてもらったクロムは、さっそく採集に向かうこととした。
 その生息地は昨日出てきた洞くつとルインの丁度中間地点に位置する小さな森であるらしい。
 街から近場に存在する森なので歩き出して10分程度で目的の森に到着していた。

「ナビ、この森にも危ない魔物とかいるのか?」

『この森には魔物はウサギくらいしかいないわよ。
 完全な初心者冒険者向けの森ってところね』

「街近郊の森は弱い魔物のみか…… 
 いろんなところでゲームっぽさを感じる世界だな。
 なら、ちゃちゃっと薬草探して採集していくか♪」

 クロムは鼻歌を歌いながら森に入っていくが出会う魔物はナビの言う通りのウサギのみであった。
 見かけた瞬間に瞬殺を繰り返しつつ、森の中を探索すると少しひらけた空間を発見した。
 そこは森の中にありながら太陽の光が差し込む場所であり、依頼書で見た薬草が大量に群生している場所であった。

「あまりにも簡単に大量の薬草を発見しちゃったけど……
 こういうものなのか?」

『最下級の依頼だから誰もやらないうちに群生でもしたんじゃない?』

「そういうものなのかね?
 薬草って定期的に需要があるものな気がするけどな」

『さぁ? 僕はそこまで知らないよ』

「そりゃそうだな」

 辺り一面に広がる薬草をクロムは手あたり次第採集し始めた。
 採ってはストレージに突っ込んでいくという作業を繰り返し、1時間ほどでこの群生地の薬草を採り尽くしてしまった。

『採り尽くしたらもうここに生えなくなるんじゃないの?』

「あ……
 なんか途中から楽しくなってついつい……」

『はぁ……
 もう後の祭りだし、そのままギルドにもっていけばいいんじゃない?』

「そ、そうだな……」

 ナビの指摘にバツが悪そうにしているクロムであったが、今更どうにかできることでもないため、とりあえずギルドに報告するためにルインへと帰るのであった。
 ギルドに到着したクロムは、先ほどとは違いかなり混雑が収まっていることにほっとしながら、スズの元へと向かった。

「あ、クロムさん。
 おかえりなさい、早かったですね」

「なんかあっさりと終わってしまって拍子抜けというか……」

「あははは、Fランクの依頼ですからそんなものですよ。
 でも見たところ薬草をお持ちでないようですけど……
 ひょっとしてマジックバックをお持ちなのですか?」

 この世界には一定の質量までを収納できるマジックバックというものが存在しており、中級以上の冒険者には必需品であるらしい。

「残念ながら持っていませんけど、それと同じような効果の技能がありまして……」

「…… それって相当なレアな技能だと思うのですけど……
 昨日のギルドマスターとの試験といい、クロムさんって実はすごい人なのですか……?」

「昨日も言った通り記憶喪失ですからね、その辺は俺にもよくわからないんですよね。
 それより納品させてもらっていいですか?」

「あ、はい。
 では、そちらのスペースに出してもらっていいですか?」

 クロムが指示された場所に回収した薬草の半分ほどを出すと、山のように積まれた薬草を見たスズは呆気にとられるのであった。

「これで丁度半分くらいですね。
 残りもここに出してもいいですか??」

「え!!??
 えっと…… あちらの倉庫にお願いします」

 クロムがスズに指定された倉庫に残りの薬草全てを出すと、スズは顔を引きつらせていた。

「す、すごい量ですけど……
 どうやってこんなに……?」

「運よく薬草の群生地が見つかりましてね。
 これで依頼達成でしょうか?」

「も、もちろんです!!
 残りの分も買取させて頂きますね、実は薬草が不足していたのですごく助かります!!!」

 薬草不足はかなり深刻であったらしくスズからかなりの感謝をされたクロムは、何か誇らしい気持ちになりながらギルドを後にするのであった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...