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3章.激動の予感編
40話.竜人の試練②-2
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「クロム!!!
ねぇ!!!
目を覚ましてよ!!!」
「……
…… アキナ……?」
アキナの叫び声で目を覚ますクロム。
ビネガを氷像へと変えたクロムであったが、そのまま倒れ込み意識を失っていた。
「試練中…… じゃなかったっけ?
たしか…… 腹を焼かれた……???」
クロムは炎の槍に横腹を抉られ、焼かれた以降の記憶がないようだった。
アキナがその後のことを説明すると驚きを隠せない表情を浮かべ、脇腹に激痛が走るのを感じた。
「ぐ……
アキナの話だと回復魔術を使ったみたいだけど……
さすがに全快はできていないか……、 それに……」
出血や激しい火傷は治ってはいたが、身体の深部が負ったダメージが抜けきるまでには至っていなかったようだった。
そして、クロムは意識を失ったままの状態で大魔術を連発してビネガを氷像へと変えたということにショックを覚えた。
「しばらくは安静にしてなきゃダメ!!
族長さん、試練は1日でやらなきゃダメなの?」
「掟では特に決められていませんね。
……こちらとしてもビネガの様態は気になりますので……
試練の続きは明日にしましょう」
「ちょっと待ってくれ……」
クロムはフラフラした足取りでビネガの元まで歩いていくと、氷化を解除し回復魔術でできる限りの治療を施した。
「悪いけど、このまま少し寝させてくれ……」
そう言い残したクロムは再びその場で崩れ落ちるのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌朝、休息を取らせてもらっていた家で休息しているクロムとアキナ。
アキナがクロムの体調を心配そうにしていると、族長とビネガが訪ねてきた。
「どうやら無事に回復されている様子ですね」
「あぁ、ゆっくり休ませてもらったしな。
ビネガも元気そうだな」
「……我はあなたの治療魔術のおかげでしょうね。
我の完敗ですよ」
無事回復したようであったビネガは、共に倒れるという結果で終わった昨日の試練がクロムの勝利であると告げた。
共に戦闘不能になり、しかもクロム自身はそのことをまったく覚えていない。
この状態では勝ったといわれてもそれを素直には受け入れることができないクロム。
しかし、死力を尽くして共倒れした後、最後の魔力を振り絞って相手を治療するという心にも負けたというビネガの言葉を否定するだけの言葉をクロムは持ち合わせていなかった。
そして、クロムは渋々ながら勝利を受け入れるのであった。
「しかし氷・土・風・治療といくつの属性を扱えるのですか、あなたは……」
「その4つの属性以外では火だけかな、ビネガほどの火魔術は使えないけどな」
「5属性も……
はぁ…… あなたは自分の異常さを理解できていないようですが、それは通常ではあり得ないほどの魔術のセンスですよ。
しかもその全ての属性が我の火魔術と比較しても遜色ない……」
「それなのにあれだけ拮抗した結果になったのは、俺自身の未熟さゆえ…… ということだろうな」
「確かにあなたは魔術のセンスの異常な高さに対して、それを手に入れている者としては在り合えないほどの経験の不足さを感じましたね」
「痛いところをストレートに言うやつだな、その辺の理由は試練を乗り越えたあとに説明させてもらうことにするよ」
すでに試練を乗り越えることを前提として話すクロムに対して族長とビネガは苦笑するしかなかった。
そして、族長の提案により午前中はこのまま休息するものとして、午後から残りの2戦をするという話になった。
族長たちが退出したあとアキナと二人きりとなったクロムは、午後まで二人でゆっくりと過ごすことにした。
始めのうちはアキナから無茶しすぎであることを窘められたクロムであったが、心配し隣に居続けてくれるアキナのことを有難く想い、今の自分を支えてくれる大切な存在であることを改めて痛感していた。
そして、二人の絆を確かめあい、深め合った二人は、試練の続きを受けるために共に会場まで歩いてゆくのであった。
ねぇ!!!
目を覚ましてよ!!!」
「……
…… アキナ……?」
アキナの叫び声で目を覚ますクロム。
ビネガを氷像へと変えたクロムであったが、そのまま倒れ込み意識を失っていた。
「試練中…… じゃなかったっけ?
たしか…… 腹を焼かれた……???」
クロムは炎の槍に横腹を抉られ、焼かれた以降の記憶がないようだった。
アキナがその後のことを説明すると驚きを隠せない表情を浮かべ、脇腹に激痛が走るのを感じた。
「ぐ……
アキナの話だと回復魔術を使ったみたいだけど……
さすがに全快はできていないか……、 それに……」
出血や激しい火傷は治ってはいたが、身体の深部が負ったダメージが抜けきるまでには至っていなかったようだった。
そして、クロムは意識を失ったままの状態で大魔術を連発してビネガを氷像へと変えたということにショックを覚えた。
「しばらくは安静にしてなきゃダメ!!
族長さん、試練は1日でやらなきゃダメなの?」
「掟では特に決められていませんね。
……こちらとしてもビネガの様態は気になりますので……
試練の続きは明日にしましょう」
「ちょっと待ってくれ……」
クロムはフラフラした足取りでビネガの元まで歩いていくと、氷化を解除し回復魔術でできる限りの治療を施した。
「悪いけど、このまま少し寝させてくれ……」
そう言い残したクロムは再びその場で崩れ落ちるのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌朝、休息を取らせてもらっていた家で休息しているクロムとアキナ。
アキナがクロムの体調を心配そうにしていると、族長とビネガが訪ねてきた。
「どうやら無事に回復されている様子ですね」
「あぁ、ゆっくり休ませてもらったしな。
ビネガも元気そうだな」
「……我はあなたの治療魔術のおかげでしょうね。
我の完敗ですよ」
無事回復したようであったビネガは、共に倒れるという結果で終わった昨日の試練がクロムの勝利であると告げた。
共に戦闘不能になり、しかもクロム自身はそのことをまったく覚えていない。
この状態では勝ったといわれてもそれを素直には受け入れることができないクロム。
しかし、死力を尽くして共倒れした後、最後の魔力を振り絞って相手を治療するという心にも負けたというビネガの言葉を否定するだけの言葉をクロムは持ち合わせていなかった。
そして、クロムは渋々ながら勝利を受け入れるのであった。
「しかし氷・土・風・治療といくつの属性を扱えるのですか、あなたは……」
「その4つの属性以外では火だけかな、ビネガほどの火魔術は使えないけどな」
「5属性も……
はぁ…… あなたは自分の異常さを理解できていないようですが、それは通常ではあり得ないほどの魔術のセンスですよ。
しかもその全ての属性が我の火魔術と比較しても遜色ない……」
「それなのにあれだけ拮抗した結果になったのは、俺自身の未熟さゆえ…… ということだろうな」
「確かにあなたは魔術のセンスの異常な高さに対して、それを手に入れている者としては在り合えないほどの経験の不足さを感じましたね」
「痛いところをストレートに言うやつだな、その辺の理由は試練を乗り越えたあとに説明させてもらうことにするよ」
すでに試練を乗り越えることを前提として話すクロムに対して族長とビネガは苦笑するしかなかった。
そして、族長の提案により午前中はこのまま休息するものとして、午後から残りの2戦をするという話になった。
族長たちが退出したあとアキナと二人きりとなったクロムは、午後まで二人でゆっくりと過ごすことにした。
始めのうちはアキナから無茶しすぎであることを窘められたクロムであったが、心配し隣に居続けてくれるアキナのことを有難く想い、今の自分を支えてくれる大切な存在であることを改めて痛感していた。
そして、二人の絆を確かめあい、深め合った二人は、試練の続きを受けるために共に会場まで歩いてゆくのであった。
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