45 / 147
3章.激動の予感編
41話.竜人の試練③
しおりを挟む
クロムたちが武舞台にたどり着いた時には、族長ともう一人の竜人族がすでに待っていた。
「待たせてしまったみたいだな、すまない」
「いえいえ、我々が早く着すぎていただけですので、お気になさらなくて結構ですよ」
「次の試練を担当させてもらうソイソと申します、お見知りおきを。
魔剣士の二つ名を頂いております」
「魔剣士ねぇ……
経験不足であることを絶賛痛感中の俺にとってはいい経験になりそうな相手で有難いよ。
手の内がバレている状態でどの程度戦えるのかも気になるし、それに今回はちょっと試したいこともあるしね」
やる気に満ちているクロムとソイソ。
族長が試練開始を宣言すると、クロムは速攻で大きめのかまくらのような氷のドームで自分を覆い始めた。
「突然どうされたのです? 氷の中に引き籠ることが試したいことなのですか?」
「これは時間稼ぎ用の防壁だよ。
試したいことをするためには少々時間がかかりそうだからね、それに……」
「私の力試しも兼ねている…… とでも言いたそうですね」
目の前の氷のドームが自分への試しでもあると解釈したソイソは、白色に輝く片手剣を振りかぶりながら氷のドームへと飛び掛かった。
そしてソイソが氷のドームまで接近したとき、突如白色の剣は緑色の光を纏った。
「ほぉ、剣に風属性を付与する魔術剣…… といったところかな」
「さすがに見抜きますか!
この刃の切断力を甘くみないことです!」
ソイソの斬撃が氷のドームに激突した瞬間、キンッ!と甲高い音が響き渡った。
その斬撃はドームを切断することはできなかったが、10センチ程度の切れ目を入れることに成功していた。
「一撃でそれだけ斬れるのはさすがだね、でも数分ぐらいは大丈夫そうかな。
時間もないし早速試させてもらうね」
クロムは自身を中心とした半径2メートル程度の範囲で強烈な上昇気流を伴う竜巻を発生させた。
氷のドームを切り刻むソイソにも竜巻は襲いかかることになったが、自身の周囲に風の膜を発生させることによって、竜巻の影響をかなり軽減させていた。
クロムは魔術にそういう使いかたもあるんだなぁと感心しつつも、実験の続きをすることにした。
竜巻の下部を火魔術で温め、上部を氷魔術で冷やすことにより上昇気流の速度をさらに引き上げることに成功した。
それによってクロムの頭上には急激に冷やされた空気が集まった結果、徐々に雲が生成され始めた。
そして肥大化を続けるその雲から大粒の雨が降り始めるのであった。
クロムは発生した雲の内部の水分を魔力で激しく運動させる。
すると、雲は運動によって発生した静電気を帯びた雷雲へと変化していった。
一連のクロムの行動の意図が理解できないソイソであったが、ソイソは無心で氷のドームを刻み続けた。
そしてついにソイソが氷のドームを切断した。
「ギリギリギだったけど、間に合ったみたいだね」
「何をするつもりか知りませんが、次に斬るのはあなた自身ですよ!」
そう言ってソイソが片手剣を構えた時、クロムは頭上の雷雲に対して魔力で命令を与える。
目の前の相手にその力を示せ と。
クロムの命令を受けた雷雲が貯め込んだ電気を一気の放電すると、それはソイソに対しての一筋の落雷となって降り注いだ。
一瞬の出来事であり予見もできていなかったソイソは直撃されるしかなかった。
「……」
言葉を失ってしまった族長を尻目にクロムは落雷の直撃を受けたソイソの元に駆け付け、急いで治療魔術を施した。
全身に酷い火傷を負い意識のないソイソではあったが、本人の強い生命力と落雷の規模が小規模であったこともあり、かろうじてではあるがまだ息があった。
「死なないでくれ……」
クロムは強い願いを込めた治療魔術を必死にし続けるのだった。
「待たせてしまったみたいだな、すまない」
「いえいえ、我々が早く着すぎていただけですので、お気になさらなくて結構ですよ」
「次の試練を担当させてもらうソイソと申します、お見知りおきを。
魔剣士の二つ名を頂いております」
「魔剣士ねぇ……
経験不足であることを絶賛痛感中の俺にとってはいい経験になりそうな相手で有難いよ。
手の内がバレている状態でどの程度戦えるのかも気になるし、それに今回はちょっと試したいこともあるしね」
やる気に満ちているクロムとソイソ。
族長が試練開始を宣言すると、クロムは速攻で大きめのかまくらのような氷のドームで自分を覆い始めた。
「突然どうされたのです? 氷の中に引き籠ることが試したいことなのですか?」
「これは時間稼ぎ用の防壁だよ。
試したいことをするためには少々時間がかかりそうだからね、それに……」
「私の力試しも兼ねている…… とでも言いたそうですね」
目の前の氷のドームが自分への試しでもあると解釈したソイソは、白色に輝く片手剣を振りかぶりながら氷のドームへと飛び掛かった。
そしてソイソが氷のドームまで接近したとき、突如白色の剣は緑色の光を纏った。
「ほぉ、剣に風属性を付与する魔術剣…… といったところかな」
「さすがに見抜きますか!
この刃の切断力を甘くみないことです!」
ソイソの斬撃が氷のドームに激突した瞬間、キンッ!と甲高い音が響き渡った。
その斬撃はドームを切断することはできなかったが、10センチ程度の切れ目を入れることに成功していた。
「一撃でそれだけ斬れるのはさすがだね、でも数分ぐらいは大丈夫そうかな。
時間もないし早速試させてもらうね」
クロムは自身を中心とした半径2メートル程度の範囲で強烈な上昇気流を伴う竜巻を発生させた。
氷のドームを切り刻むソイソにも竜巻は襲いかかることになったが、自身の周囲に風の膜を発生させることによって、竜巻の影響をかなり軽減させていた。
クロムは魔術にそういう使いかたもあるんだなぁと感心しつつも、実験の続きをすることにした。
竜巻の下部を火魔術で温め、上部を氷魔術で冷やすことにより上昇気流の速度をさらに引き上げることに成功した。
それによってクロムの頭上には急激に冷やされた空気が集まった結果、徐々に雲が生成され始めた。
そして肥大化を続けるその雲から大粒の雨が降り始めるのであった。
クロムは発生した雲の内部の水分を魔力で激しく運動させる。
すると、雲は運動によって発生した静電気を帯びた雷雲へと変化していった。
一連のクロムの行動の意図が理解できないソイソであったが、ソイソは無心で氷のドームを刻み続けた。
そしてついにソイソが氷のドームを切断した。
「ギリギリギだったけど、間に合ったみたいだね」
「何をするつもりか知りませんが、次に斬るのはあなた自身ですよ!」
そう言ってソイソが片手剣を構えた時、クロムは頭上の雷雲に対して魔力で命令を与える。
目の前の相手にその力を示せ と。
クロムの命令を受けた雷雲が貯め込んだ電気を一気の放電すると、それはソイソに対しての一筋の落雷となって降り注いだ。
一瞬の出来事であり予見もできていなかったソイソは直撃されるしかなかった。
「……」
言葉を失ってしまった族長を尻目にクロムは落雷の直撃を受けたソイソの元に駆け付け、急いで治療魔術を施した。
全身に酷い火傷を負い意識のないソイソではあったが、本人の強い生命力と落雷の規模が小規模であったこともあり、かろうじてではあるがまだ息があった。
「死なないでくれ……」
クロムは強い願いを込めた治療魔術を必死にし続けるのだった。
32
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる