104 / 147
6章.ダイン獣王国編
96話.バロンの本気、意地
しおりを挟む
二人のやり取りをクロムの後方から眺めていることしかできないアキナは、そんな自分の状況に歯がゆい想いを持ちながらもとても自分が介入できる次元ではないことも感じているのであった。
そして、そんなアキナがバロンの不敵な笑みに恐怖を覚えたと同時にバロンの姿がアキナの視界から消えた。
「え……??」
いくら周囲を見回してもバロンの姿も気配も一切感じれない。
先ほどまでは恐ろしいほど感じていたあのバロンの気配をだ。
目の前で起きている現象が理解できずに混乱していると、甲高い金属音が響きアキナは反射的にそちらを振り向くのであった。
突如どこからか現れたバロンがクロムの頭上に向けて落下しながら刺突したのをクロムが氷の壁で防いだ…… そんな光景がアキナの視界に飛び込んだのだった。
「どっちもすごすぎる……」
「これも完璧に防いでしまいますか、本当にあなたは何者なのですか……」
バロンはクロムが自分の必殺の刺突をいともたやすく防いだことに驚愕していた。
しかしバロンとて爵位持ちの悪魔である、そんな感情で動きを制限されたりはしない。
刺突を防がれながらもクロムの懐に飛び込むことには成功していたバロンは、クロムの足元から左切り上げの斬撃を繰り出すのであった。 が……
その斬撃は空を斬ることとなった。
「さすがにいい斬撃だけどさ、そこから切り上げが来るのは見え見えすぎるよ」
バロンの追撃の斬撃を読んでいたクロムは一歩下がった場所に立っており、バロンの斬撃に合わせるように先ほどまで自分が居た場所に氷の杭を放っていた。
そして氷の杭が被弾するその時、バロンは再び姿を消すのだった。
「やっぱり…… か」
クロムはそのことに特に驚く様子もなく、むしろ何かに納得しているかのようだった。
「さすがは暗殺と隠密を得意とするっていうだけあるね、まさか空間術を使えるとは思わなかったよ。
ただね……
今回は相手が悪かったね、俺は空間を司る神の権能として空間術を修めている。
姿を見せるタイミングと場所をなんとなく感じることができる俺を相手にどうするんだい?」
クロムはバロンを煽るような口調で隙だらけの状態で言うのであった。
おそらくバロンは今までのクロムの言動から激しい動揺に襲われていたのだと思われる。
しかしそれを振り払うようにクロムの死角から一瞬姿を現して斬撃を放つとそのまま姿を隠す。
そしてまた死角から刺突を放ち、そのまま姿を消す。
そんな四次元な連撃とでもいうべきバロンの連撃は1撃ごとにその間隔を短くし、いつしか秒間数撃という人が反応できる限界を超えているような連撃となっていた。
その連撃をほぼ目で追えていないアキナは、その連撃の影響で発生した土煙の中からすさまじい間隔で響く斬撃音と周囲に飛び散る血飛沫をなんとか確認できていた。
「く、クロム…… ??」
アキナは目の前で繰り広げられる光景が何か現実ではなく、夢の世界のできごとのように感じつつも激しい不安に押しつぶされかけていた。
今すぐここから飛び出してクロムを救いたい。
そんな想いを抱きながら、アキナの両足は恐怖でピクリとも動かすことができなくなっていたのだった。
「―― ……」
そして、その恐怖はアキナから声すら奪っていた。
目の前の光景、自身の情けない状態、それらに絶望したアキナはうなだれるようにその場に崩れ落ちるのだった。
大量の血飛沫が舞い上がった瞬間、ずっと続いていた斬撃音が止まるのだった。
絶望に染まったアキナはそんな状況の変化に気づくことはなかった。
そして、そんなアキナがバロンの不敵な笑みに恐怖を覚えたと同時にバロンの姿がアキナの視界から消えた。
「え……??」
いくら周囲を見回してもバロンの姿も気配も一切感じれない。
先ほどまでは恐ろしいほど感じていたあのバロンの気配をだ。
目の前で起きている現象が理解できずに混乱していると、甲高い金属音が響きアキナは反射的にそちらを振り向くのであった。
突如どこからか現れたバロンがクロムの頭上に向けて落下しながら刺突したのをクロムが氷の壁で防いだ…… そんな光景がアキナの視界に飛び込んだのだった。
「どっちもすごすぎる……」
「これも完璧に防いでしまいますか、本当にあなたは何者なのですか……」
バロンはクロムが自分の必殺の刺突をいともたやすく防いだことに驚愕していた。
しかしバロンとて爵位持ちの悪魔である、そんな感情で動きを制限されたりはしない。
刺突を防がれながらもクロムの懐に飛び込むことには成功していたバロンは、クロムの足元から左切り上げの斬撃を繰り出すのであった。 が……
その斬撃は空を斬ることとなった。
「さすがにいい斬撃だけどさ、そこから切り上げが来るのは見え見えすぎるよ」
バロンの追撃の斬撃を読んでいたクロムは一歩下がった場所に立っており、バロンの斬撃に合わせるように先ほどまで自分が居た場所に氷の杭を放っていた。
そして氷の杭が被弾するその時、バロンは再び姿を消すのだった。
「やっぱり…… か」
クロムはそのことに特に驚く様子もなく、むしろ何かに納得しているかのようだった。
「さすがは暗殺と隠密を得意とするっていうだけあるね、まさか空間術を使えるとは思わなかったよ。
ただね……
今回は相手が悪かったね、俺は空間を司る神の権能として空間術を修めている。
姿を見せるタイミングと場所をなんとなく感じることができる俺を相手にどうするんだい?」
クロムはバロンを煽るような口調で隙だらけの状態で言うのであった。
おそらくバロンは今までのクロムの言動から激しい動揺に襲われていたのだと思われる。
しかしそれを振り払うようにクロムの死角から一瞬姿を現して斬撃を放つとそのまま姿を隠す。
そしてまた死角から刺突を放ち、そのまま姿を消す。
そんな四次元な連撃とでもいうべきバロンの連撃は1撃ごとにその間隔を短くし、いつしか秒間数撃という人が反応できる限界を超えているような連撃となっていた。
その連撃をほぼ目で追えていないアキナは、その連撃の影響で発生した土煙の中からすさまじい間隔で響く斬撃音と周囲に飛び散る血飛沫をなんとか確認できていた。
「く、クロム…… ??」
アキナは目の前で繰り広げられる光景が何か現実ではなく、夢の世界のできごとのように感じつつも激しい不安に押しつぶされかけていた。
今すぐここから飛び出してクロムを救いたい。
そんな想いを抱きながら、アキナの両足は恐怖でピクリとも動かすことができなくなっていたのだった。
「―― ……」
そして、その恐怖はアキナから声すら奪っていた。
目の前の光景、自身の情けない状態、それらに絶望したアキナはうなだれるようにその場に崩れ落ちるのだった。
大量の血飛沫が舞い上がった瞬間、ずっと続いていた斬撃音が止まるのだった。
絶望に染まったアキナはそんな状況の変化に気づくことはなかった。
20
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる