とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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リハーサル

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あまりにすごい情報が一気に飛び込んできたため、頭の整理が追い付かない……。
 頭が絶賛沸騰中な私は独り言が忙しい。

 「……リリー?着いたよ?」
 
 肩を叩かれようやくレイが私を呼んでいることに気がついた。

 「……あ、もう着いたの?」
 
 レイが先に馬車をおりてエスコートしてくれる。せっかくレイと二人っきりだったのに!ということに今、気が付いた。遅いな、私。

 (まだ、いろいろ追い付かないけど、まずはリハーサル見学とマルシェのチェック!)
 
 孤児院の院長とオスカーと合流し、現況報告をしてもらう。
 
 劇は孤児院のホールを貸してもらう契約になっており、満席になると100名ほど収容可能だ。
 マルシェは、ホールに続く螺旋階段の下の玄関ホールから門に向かって店舗を並べていく。
 雑貨、食品、衣料品に加えて、その場で出来たてを食べられる屋台も準備した。
 
 この孤児院劇マルシェは、劇の入場料とマルシェの出展費用の一部が孤児院に。劇は収容人数に合わせての連動給を作り、役者の士気をあげている。マルシェも30枠ほど作ったが、ほぼ枠は完売。今回はテスト的にスタートすることもあり、二週間限定開催となっている。開催前から地元紙では話題になっていて、結構な集客が見込めそうだ。

 「じゃあ、リハーサルから見に行こうか」

 オスカーが先導してくれる。

 (ああ、あれなんだけど!オスカー見たらまたマリーベルさんのこと思い出しちゃった!)

 「み、ミスボス?」
 
 様子の可笑しい私にオスカーが不安そうな振り替える。

 「……だ、大丈夫だから」
 
 まさかここでマリーベルさんの名前を出すわけにもいかず、私はレイと院長と先を急ぐ。
 ホールに到着するとリハーサルが始まっていた。
 今日は、本番に備えての遠し稽古で、衣装や舞台も本番同様だ。

 「す、すごーい!」
 
 決して大きくはない舞台だが、そこそこの金額をかけて舞台装置や道具を作ってくれていた。
 ちょうど通し稽古もスタートしたところで、緊張感が伝わって来る。

 (主役の女の子、可愛いなー!)
 
 今回、私自身をモデルにしたストーリーをと思っていたんだけど、市場調査をした結果、
 
 婚約破棄×契約結婚ストーリー

 が流行っているらしく、そちらをテーマに脚本を書いてみた。
 
 タイトルは
 
 『白薔薇姫の華麗なる復讐~婚約破棄も、白い結婚も想定内!ざまぁは計画的に~』

 白薔薇姫は姫とあるだけあって、王女の設定。
 
 隣国の下種王子をバカ女に寝取られ、婚約破棄された挙句、自国で降嫁された公爵家では、白い結婚を突き付けられ、愛人に虐げられる始末。でも、姫には小さいころから心に秘めた男性がいてー。もちろん最後はざまぁからのハッピーエンド!

 白薔薇姫を演じる主役の女の子は、孤児院で立候補してくれた子。演技も初めてらしいけど、とっても様になっている。
 
 こんな短期間でちゃんと仕上げてくれたなんて、演技指導もだし、本人の努力も半端なかったことだろう。
 
 王女だから、所作とかね。あと、衣装や小物もとっても素敵で。
 もちろん、白薔薇姫だから、白薔薇グッズが満載なことはいうまでもない。
 
「オスカー。あの町へ抜け出したシーンの白薔薇ワンピースとスカーフがとっても可愛い!私も買いたいから取り置きしてもらってもいい?」
 
 オスカーは別宅に手配するよう伝えてくれた。劇も我ながらとっても面白い。
 チケットの販売状況もなかなかだそうで、明日から期待したいところだ。

 「では、次はマルシェに移動しましょうか」
 
 院長がそういうとホールを抜けて、螺旋階段まで移動する。会場はマルシェの準備でかなり慌ただしい。

 「今回のご提案で孤児院は寄付以外にも収益を得ることで少しでも子供たちの環境改善に費用が回せたらと思っています。本当にありがとうございます」
 
 院長は私に深々とお辞儀をした。
「何をおっしゃってるんですか、院長。慣例にとらわれず、一緒にやっていこうとおっしゃっていただき、こちらは嬉しかったのですよ。私はまだ正式に侯爵家を継いでおりません。それなのに、快く協力してくださった。こちらこそ、感謝申し上げます。子供たちの環境や将来にぜひ役立ててください」

 「おかげさまで、子供たちもやりがいが出来たと毎日楽しそうにしてますよ。特にオスカーはうちを出ていく時期でしたからね。ありがたいご縁です」

  院長からは、これからの収益で傷んだ施設の補修、子供たちの食事の改善や、学習環境を整えたいと申し出があった。これから先、孤児院を卒業した子供たちの受け皿として商会を発展させていく意味もあるだろう。
 
 マルシェには、領内の特産品の商品や地元のお店の商品、洋服、雑貨、化粧品などお店のほか、屋台では、クレープに、アイスクリーム、ドーナツにパンなど美味しそうなものが出店していた。
 
 「お嬢さん、おひとついかがですか」
 揚げたてのドーナツを紙にくるんで渡してくれる。
 
 「ありがとう!これはどんなものなの?」
 
 「小麦粉にキャッサバの粉を混ぜてモチモチ食感にしたドーナツで、大豆を粉末にした粉を砂糖と混ぜてかけているのですよ」
 
 キャッサバも領内の特産品の1つだ。いろんなアレンジの仕方があってこれまた勉強になる。
 
 「熱いうちに召し上がってみてください」
 
 「ありがとう。お代はここに置いておくわね」
 
 私は初めて食べるドーナツに興味津々で紙を不器用に剝がしながら口に頬張った。
 
 「…………あ、あっつ!」

 アツアツはやはり危険だけど、モチモチ食感でとても美味しい。大豆の粉も女の子が好きそうだ。
 
 「とっても美味しいですよ!明日から、売れそうですね」
 
 私はそう店主に告げると、嬉しそうに見送ってくれた。
 
 「……特に問題なさそうだな、オスカー」
 
 レイとオスカーは最終確認のため、立ち話をしていた。
 
 私はマルシェをぶらぶらと見学し、追加でオレンジの化粧水とパックと入浴剤、紅茶も購入した。

 (よくよく考えたら、私ってば脚本考えた以外にほぼ何もしてなかったかもね……)
 
 ここまで形になっているのは、レイとオスカーの努力の賜物だろう。本当にいいご縁があったものだ。
 
 「ミスボス~!打合せ終わったぜ。また開催中に立ち寄ってほしい」
 
 オスカーとレイが散策中の私を見つけてくれた。
 
 「リリー、そろそろ行こうか」
 
 私は頷くと最後に院長に挨拶をし、レイと共に辻馬車に乗り込んだ

 (そういえば……!!)
 
 何かを忘れていたと思ったんだけど、すっかり忘れてた!
 
 レイにディナーを誘われていたんだった!
 
 「ねぇ、レイ。今更なんだけど……。こんな格好で行けそうなレストランじゃないよね?」
 
 町娘姿な私。
 レイからは予想外の答えが返ってきた。
 
 「大丈夫だよ。ドレスは用意してあるから」
 
 何だか得意そうなレイ。私は予想外の展開に驚いていた。
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