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5月13日 木曜日
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日直の仕事を終えて駐輪場に向かおうとしたとき、運動場から笑い声が聞こえた。
気になって運動場に向かい、フェンス越しにのぞく。
――そっか、体育祭のリレー練習か。
クラス対抗リレーのために、どのクラスも走順を決めて練習しているらしい。
僕は綱引きしか出ないから、こういう時間はない。
「明!すげー速かった!」
名前を聞いた瞬間、反射的に声のほうを見る。
そこにいたのは、やっぱり僕の知っている“明くん”だった。
体操服にバトンを片手に持ち、男子たちと笑い合っている。
――リレー出るんだ、足、速そうだもんな……。
遊びに行ったあの日から、直接話してはいない。
メッセージのやり取りはしているけど、会うのとはやっぱり違う。
また話せたらいいな、と胸の奥が締め付けられる。
帰ろうと背を向けかけたそのとき――バチッ、と音がしたように目が合った。
一瞬で足が止まる。呼吸も止まった。
「蓮翔!見に来たのか!」
後ろから、聞き慣れた声。
その声に体が軽くなり、振り返ると雄星が立っていた。
体操服姿で、手にはペットボトルの水。
「あ、う……雄星もクラスリレーの練習してるの?」
「も? ……部活の合間にな。少しだけ」
「そうなんだ。頑張ってね、怪我しないでね」
言葉を切ると、もうその場にいられなくて駐輪場へ駆けだす。
「おい!」と雄星が呼ぶ声が耳に入るが、振り返らなかった。
駐輪場に着き、息を整える。
――最悪だ、僕。
僕の名前を呼んだ声が雄星だとわかった瞬間、心のどこかで“明くんだったら”と思ってしまった。
雄星はいつも僕に優しくしてくれているのに。
涙は出ない。でも胸がきゅっと痛い。
視線を上げられないまま、自転車を押して家路についた。
気になって運動場に向かい、フェンス越しにのぞく。
――そっか、体育祭のリレー練習か。
クラス対抗リレーのために、どのクラスも走順を決めて練習しているらしい。
僕は綱引きしか出ないから、こういう時間はない。
「明!すげー速かった!」
名前を聞いた瞬間、反射的に声のほうを見る。
そこにいたのは、やっぱり僕の知っている“明くん”だった。
体操服にバトンを片手に持ち、男子たちと笑い合っている。
――リレー出るんだ、足、速そうだもんな……。
遊びに行ったあの日から、直接話してはいない。
メッセージのやり取りはしているけど、会うのとはやっぱり違う。
また話せたらいいな、と胸の奥が締め付けられる。
帰ろうと背を向けかけたそのとき――バチッ、と音がしたように目が合った。
一瞬で足が止まる。呼吸も止まった。
「蓮翔!見に来たのか!」
後ろから、聞き慣れた声。
その声に体が軽くなり、振り返ると雄星が立っていた。
体操服姿で、手にはペットボトルの水。
「あ、う……雄星もクラスリレーの練習してるの?」
「も? ……部活の合間にな。少しだけ」
「そうなんだ。頑張ってね、怪我しないでね」
言葉を切ると、もうその場にいられなくて駐輪場へ駆けだす。
「おい!」と雄星が呼ぶ声が耳に入るが、振り返らなかった。
駐輪場に着き、息を整える。
――最悪だ、僕。
僕の名前を呼んだ声が雄星だとわかった瞬間、心のどこかで“明くんだったら”と思ってしまった。
雄星はいつも僕に優しくしてくれているのに。
涙は出ない。でも胸がきゅっと痛い。
視線を上げられないまま、自転車を押して家路についた。
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