『相川蓮翔』

くろだ

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9月22日 火曜日

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月曜日が祝日でお休みだったので、火曜日が文化祭の振り返り休日になる。

昨日は、勉強ができなかったので今日はしないといけない。
受験まであと5ヶ月。半年を切っている。

机に向かって、問題集を開いている。
けれど、文字を追っても頭に入らない。
昨日、公園で猫に「好きだ」って認めてしまった言葉が、ぐるぐる頭を回って離れなかった。

「集中しろ……受験生だぞ……」

そう何度も心の中で繰り返すのに、思考の隙間に「明くん」が入り込んでくる。
やらなきゃいけないことは目の前にあるのに、心が追いついてこない。

「ダメだ……ダメなのに……」

シャーペンを握る手が震える。
ノートの上で線が何度も途切れて、ページはぐちゃぐちゃに汚れていく。
 
雄星と颯介のことを思い出す。
2人は自然に寄り添っていて、見ていると当たり前に思えるのに……。
「同性同士だっていい」と頭では理解しているのに、いざ自分の気持ちを向けた瞬間、胸の奥が「違う」と叫んでしまう。
 
「僕は……2人を否定してるんじゃないか……」
 
机に向かっていても文字が霞んで見える。
何度も書き直したノートのページに、ぽつん、と小さな染みが落ちる。

「あ……やだ……」

拭おうとするけど、次々に涙が零れて止まらない。
胸の奥にぐちゃぐちゃに溜まっていたものが、全部溢れ出してしまう。

「僕なんかが……明くん好きになっていいわけないのに……」

声にした途端、嗚咽がこみ上げて、もう我慢できなかった。慌てて、布団に潜り込んだ。

「……なんで、僕なんか……」

小さな声で呟いた瞬間、涙が止まらなくなった。
両手で顔を覆っても、熱いのが次から次へと溢れてくる。

「雄星たちを……否定してるみたいで……ごめん……」
「明くんには……もっと可愛い子がいるのに……」

ぽつりぽつりと言葉が漏れて、それに自分で苦しくなって、嗚咽に変わる。
枕に顔を押しつけて、声を殺して泣いても涙は止まらない。

「受験なのに……今はそんな場合じゃないのに……」
 
現実と気持ちの間でぐちゃぐちゃになって、胸が痛くて仕方ない。
布団の中は熱くて苦しいのに、出る勇気もなくて、ただ涙に濡れながら夜を過ごした。
 

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