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その異常な様子に、眠っているのでないことに気づいた親は急いで救急車を呼び、オレは病院へと運ばれた。オレは極度の脱水を起こしていたのだ。
点滴など必要な処置を受けながら、それでも発情期は終わっていない。身体が回復するとオレはそのまま病院の管理の下、残りの発情期を過ごすことになった。そこで分かったことは、オレの発情期が通常よりもかなり重いということだった。そしてそれは発情期だけではなく、普段のフェロモンもかなり多かったのだ。
それまでベータと変わらなかった生活は、その発情期を機に変わり、オレは抑制剤を服用することになった。しかもかなり強い抑制剤だ。そしてそれはオレの身体には合わず、重い副反応を引き起こした。
頭痛。
吐き気。
倦怠感。
そして落ちる気分。
抑制剤を飲まなければフェロモンを多く撒き散らし、飲めば苦痛をもたらす。そしてそんな日々を過ごした末に訪れる発情期は、自宅で過ごすことは危険とされ、病院で管理されながら過ごすことになった。
学校なんて、とても通えない。
オレは学校を通信に変え、痛く重い頭と吐き気を抱えながらどうにか課題をしていた。
はっきり言って辛かった。
オレはいま、なんのために生きているのか。
薬のせいか精神的に参っていた頃、医師からある治療を提案をされる。それはアルファと交わること。
オメガは常にアルファを求めている。だからアルファと交われば、ホルモンは安定するのだ。もし付き合っているアルファがいるのなら、そのアルファとの関係を増やし、いなかったら病院のボランティアを紹介すると言う。
それを聞いて、オレは幼なじみを思った。
発情期が来るまでオレの心をもやつかせ、常に頭の隅にいた存在。だけど高校で離れてしまってからは前のように頻繁に会うことも無くなり、ほとんど疎遠になっていた。
だけど他人になった訳じゃない。偶然会えば前と変わらずに話すし、時々メッセージも交わす。でも、そんなことをお願い出来る関係じゃない。むしろ前よりも距離が離れた分、心も離れたような気がする。
だからオレは、幼なじみの顔を頭から消した。
でも辛い。
本当に辛かった。
この辛さが無くなるのなら、どんなことをしてもいいと思うほど、オレは追い詰められていた。
それでも、知らないアルファに抱かれるのには抵抗がある。
まだ恋も知らない。
好きな気持ちも分からない。
なのに、そんなこと全てをすっ飛ばして、オレはもっとも深くまで、他人を迎え入れなければならないのか。
気持ちがついていかない。
でも辛いんだ。
早く楽になりたい。
だけど・・・怖い・・・。
がんがん痛む頭に、ほとんどの時間をベッドで過ごし食事もままならないオレに、とうとう親までもが言ってきた。
『治療をしましょう』
自分のことで精一杯で、オレは親のことまで見ていられなかったけど、そう言った親もげっそりやつれ、オレと同じくらい辛い顔をしていた。
ああオレは、こんなにも親に心配をかけているんだ。
そう思ったら、オレの気持ちなんて考えてる場合じゃないと思った。これ以上、親に心配をかけたくない。それに知らないアルファだと言っても、これは治療の一環なんだ。だから仕方がないことで、今のオレには必要なことなんだ。決していけないことじゃない。
手術をすると思えばいい。
これは身体にメスを入れる恐怖と同じ、目を閉じて眠っていれば、全てが終わって楽になっている。
だから、大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、オレは治療をお願いした。すると話はどんどん決まって行った。
病院によってオレに合うフェロモンのアルファが選ばれ、入院の日も決まった。少しでも早い方がいいと、それは2日後になった。
あと2日で、オレは知らないアルファに抱かれる。
そう思うと、自然と目から涙が流れた。そんな時、突然スマホが鳴った。
メッセージかと思ったそれは着信だった。しかも幼なじみからだ。
一瞬取るか迷った。
でも鳴り続けるそれに、オレはスマホを取る。
『久しぶり、元気してる?』
いつもと変わらない、幼なじみの声。
滅多に電話なんてしてこないのに、なんでこのタイミングでしてくるのか。
涙がさらに溢れ、喉が詰まる。
早く返事をしないと変に思われると思うのに、嗚咽を押し殺すことしか出来ない。
出なければ良かった。
そう思ったその時、電話が突然切れた。
オレは驚いてスマホを見る。すると確かに通話は終了していた。
突然切れた電話。
どうして切れたのか。
なにか用があったんじゃないのだろうか。
それとも間違って切っちゃった?
一瞬かけ直そうかと思ったけれど、もし用があるのならまたかけてくるはずだ。
そう思ってオレはスマホをベッドに置いた。
するとまた涙が込み上げてくる。
久々に聞いた幼なじみの声に、胸が痛くなる。
この痛みはなんなのか。そしてなぜオレは、泣いているのか。
高校に入ってから少しずつ会うことがなくなって、幼なじみはオレに発情期が来たことを知らない。そしていまオレが苦しんでることも、知らないんだ。
点滴など必要な処置を受けながら、それでも発情期は終わっていない。身体が回復するとオレはそのまま病院の管理の下、残りの発情期を過ごすことになった。そこで分かったことは、オレの発情期が通常よりもかなり重いということだった。そしてそれは発情期だけではなく、普段のフェロモンもかなり多かったのだ。
それまでベータと変わらなかった生活は、その発情期を機に変わり、オレは抑制剤を服用することになった。しかもかなり強い抑制剤だ。そしてそれはオレの身体には合わず、重い副反応を引き起こした。
頭痛。
吐き気。
倦怠感。
そして落ちる気分。
抑制剤を飲まなければフェロモンを多く撒き散らし、飲めば苦痛をもたらす。そしてそんな日々を過ごした末に訪れる発情期は、自宅で過ごすことは危険とされ、病院で管理されながら過ごすことになった。
学校なんて、とても通えない。
オレは学校を通信に変え、痛く重い頭と吐き気を抱えながらどうにか課題をしていた。
はっきり言って辛かった。
オレはいま、なんのために生きているのか。
薬のせいか精神的に参っていた頃、医師からある治療を提案をされる。それはアルファと交わること。
オメガは常にアルファを求めている。だからアルファと交われば、ホルモンは安定するのだ。もし付き合っているアルファがいるのなら、そのアルファとの関係を増やし、いなかったら病院のボランティアを紹介すると言う。
それを聞いて、オレは幼なじみを思った。
発情期が来るまでオレの心をもやつかせ、常に頭の隅にいた存在。だけど高校で離れてしまってからは前のように頻繁に会うことも無くなり、ほとんど疎遠になっていた。
だけど他人になった訳じゃない。偶然会えば前と変わらずに話すし、時々メッセージも交わす。でも、そんなことをお願い出来る関係じゃない。むしろ前よりも距離が離れた分、心も離れたような気がする。
だからオレは、幼なじみの顔を頭から消した。
でも辛い。
本当に辛かった。
この辛さが無くなるのなら、どんなことをしてもいいと思うほど、オレは追い詰められていた。
それでも、知らないアルファに抱かれるのには抵抗がある。
まだ恋も知らない。
好きな気持ちも分からない。
なのに、そんなこと全てをすっ飛ばして、オレはもっとも深くまで、他人を迎え入れなければならないのか。
気持ちがついていかない。
でも辛いんだ。
早く楽になりたい。
だけど・・・怖い・・・。
がんがん痛む頭に、ほとんどの時間をベッドで過ごし食事もままならないオレに、とうとう親までもが言ってきた。
『治療をしましょう』
自分のことで精一杯で、オレは親のことまで見ていられなかったけど、そう言った親もげっそりやつれ、オレと同じくらい辛い顔をしていた。
ああオレは、こんなにも親に心配をかけているんだ。
そう思ったら、オレの気持ちなんて考えてる場合じゃないと思った。これ以上、親に心配をかけたくない。それに知らないアルファだと言っても、これは治療の一環なんだ。だから仕方がないことで、今のオレには必要なことなんだ。決していけないことじゃない。
手術をすると思えばいい。
これは身体にメスを入れる恐怖と同じ、目を閉じて眠っていれば、全てが終わって楽になっている。
だから、大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、オレは治療をお願いした。すると話はどんどん決まって行った。
病院によってオレに合うフェロモンのアルファが選ばれ、入院の日も決まった。少しでも早い方がいいと、それは2日後になった。
あと2日で、オレは知らないアルファに抱かれる。
そう思うと、自然と目から涙が流れた。そんな時、突然スマホが鳴った。
メッセージかと思ったそれは着信だった。しかも幼なじみからだ。
一瞬取るか迷った。
でも鳴り続けるそれに、オレはスマホを取る。
『久しぶり、元気してる?』
いつもと変わらない、幼なじみの声。
滅多に電話なんてしてこないのに、なんでこのタイミングでしてくるのか。
涙がさらに溢れ、喉が詰まる。
早く返事をしないと変に思われると思うのに、嗚咽を押し殺すことしか出来ない。
出なければ良かった。
そう思ったその時、電話が突然切れた。
オレは驚いてスマホを見る。すると確かに通話は終了していた。
突然切れた電話。
どうして切れたのか。
なにか用があったんじゃないのだろうか。
それとも間違って切っちゃった?
一瞬かけ直そうかと思ったけれど、もし用があるのならまたかけてくるはずだ。
そう思ってオレはスマホをベッドに置いた。
するとまた涙が込み上げてくる。
久々に聞いた幼なじみの声に、胸が痛くなる。
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