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でもそれでいいと思った。いまのオレは強い抑制剤を飲んでいても、フェロモンがちゃんと抑えられていない。だからこんなオレと会ったら、アルファの幼なじみは不快に思うだろう。
だから、知られたくない。
こんなオレを。
だけど声を聞いてしまったら、無性に会いたくなってしまった。また前のように、当たり前のようにそばいて、お互い一番分かりあっていた関係に戻りたい。
ああ、そうか。
オレはずっと、あいつのそばにいたかったんだ。
そう思った瞬間、分かった。
分かってしまった。
オレは幼なじみが好きなんだ。そしてその『好き』は、恋愛の『好き』だ。
それに気づいて、オレの目からまた涙がこぼれる。
なんでいま気づくかな。
もうどうにも出来ないのに・・・。
もっと早くに気づいていたら、ちゃんと告白してこんな辛い思いをしなくて済んだだろう。たとえ思いが叶わなくても、きっとこんなに胸が苦しくなかったはずだ。だっていまこんなにも苦しいのは、思いを伝えられないまま他のアルファに抱かれなければならないからだ。そうしたらオレはもう、幼なじみに思いを伝えることなんて出来ない。
嫌だ。
苦しい。
やめたい。
気づいてしまった思いに、オレは決意する。
まだ遅くない。
いまからだって、やめられるはずだ。
『治療』は2日後だ。
もう既に予定は全て組まれ、あとはその日を待つだけになっているけど、キャンセルはできるはずだ。だからそれを伝えてやめればいい。
そう思ってベッドから起き上がったその時、突然ドアがノックされる。
その音に、オレは母親だと思った。けれど母親は仕事に行っているはずだ。だからこの家には誰もいないはずなのに、誰かがドアをノックしている。その事実に身体が恐怖で強ばる。とそのとき、返事を待たずにそのドアのノブが回った。そしてドアの隙間から見えたその人は、幼なじみだった。
知った顔に身体から力が抜ける。けれどその突然の訪問に、オレは呆然とした。
なんでここに?
そう思うオレのそばに、息を切らせた幼なじみが近づいてきた。
電話が切れてまだ5分と経っていない。けれど幼なじみの家はうちから歩いて4~5分だ。おそらく走ってきたのだろう。
久しぶりに嗅ぐ、幼なじみの香り。その香りに、オレの鼓動は小さく跳ねる。
「なんで・・・?」
あまりに突然過ぎてそんなことしか言えないオレに、幼なじみは手を伸ばす。そして頬を親指で拭う。
「おまえが泣いてたから」
そう言ってさらに、ごしごしとオレの頬を擦る。
「なんで泣いてるんだよ。それになんだよ。こんな顔色して、ガリガリに痩せやがって・・・」
頬を擦っていた手はいつの間にか、オレの頬を包み込むように両手で挟んでいる。
「なんで何も言わなかったんだ。オレたち幼なじみだろ?何かあったらすぐに言えよ」
そう言う幼なじみの顔が辛そうに歪む。でもオレは、その言葉に胸が痛んだ。
『幼なじみ』
その言葉に、幼なじみがそれ以上の感情を持っていないことが分かってしまった。
確かにオレたちは幼なじみだけど、いまそれを言われるのは辛い。
ついさっきまで、ようやく気づいた自分の思いに告白して『治療』をやめようと思っていた。けれど『幼なじみ』として心配して駆けつけてくれたことに、オレは既に失恋している事が分かってしまったのだ。
オレは『幼なじみ』以上の存在にはなれていない。
だったら変に告白して、困らせることはない。
優しい幼なじみは、いつもオレが傷つかないようにしてくれる。だからもしオレが告白したら、オレが傷つかないようにと頭を悩ませるだろう。そして間違いなく、オレたちの距離はもっと離れてしまうに違いない。だったら言わないで、このままの関係を続けたい。
そう思ってオレは、開きかけた口を閉じた。けれどそんなオレの顔を見て、幼なじみはさらに辛そうに顔を歪める。
「・・・なきゃよかった」
ぼそりと呟いた言葉。その声は小さくて、オレには聞こえなかった。だから思わず聞き返したオレに、幼なじみは眉根をぎゅっと寄せて怒鳴るように言った。
「こんな顔をさせるなら、離れなきゃよかったって言ったんだっ」
突然至近距離でそう怒鳴られて、オレは驚いて目を見開く。
「オレがどんな思いでお前から離れたと思ってるんだよっ。お前が好きで・・・好き過ぎて・・・止められなくて・・・だけどお前は全然そうじゃなくて・・・だからオレの我慢が効かなくなる前に・・・お前に嫌われる前に離れようって・・・」
泣きそうな顔でそう言った幼なじみは、そのまま下を向く。けれどすぐに顔を上げてオレの頬を挟んでいた手を離すと、すごい勢いでオレを抱きしめた。その瞬間今まで嗅いだことの無いほどの濃ゆい香りに包まれる。
「お前はオレのことを幼なじみとしか思ってないから、オレの気持ちを押し付けて嫌われたくなかった。嫌われるくらいなら今までと変わらず幼なじみでいようって・・・そう思ってお前から離れたのに・・・」
ぎゅっと力を込められた腕の中で、オレはその状況が理解出来ない。ただドキドキとすごい勢いで脈打つ心臓の音を聞いていた。
これはどっちの鼓動だろう。
だから、知られたくない。
こんなオレを。
だけど声を聞いてしまったら、無性に会いたくなってしまった。また前のように、当たり前のようにそばいて、お互い一番分かりあっていた関係に戻りたい。
ああ、そうか。
オレはずっと、あいつのそばにいたかったんだ。
そう思った瞬間、分かった。
分かってしまった。
オレは幼なじみが好きなんだ。そしてその『好き』は、恋愛の『好き』だ。
それに気づいて、オレの目からまた涙がこぼれる。
なんでいま気づくかな。
もうどうにも出来ないのに・・・。
もっと早くに気づいていたら、ちゃんと告白してこんな辛い思いをしなくて済んだだろう。たとえ思いが叶わなくても、きっとこんなに胸が苦しくなかったはずだ。だっていまこんなにも苦しいのは、思いを伝えられないまま他のアルファに抱かれなければならないからだ。そうしたらオレはもう、幼なじみに思いを伝えることなんて出来ない。
嫌だ。
苦しい。
やめたい。
気づいてしまった思いに、オレは決意する。
まだ遅くない。
いまからだって、やめられるはずだ。
『治療』は2日後だ。
もう既に予定は全て組まれ、あとはその日を待つだけになっているけど、キャンセルはできるはずだ。だからそれを伝えてやめればいい。
そう思ってベッドから起き上がったその時、突然ドアがノックされる。
その音に、オレは母親だと思った。けれど母親は仕事に行っているはずだ。だからこの家には誰もいないはずなのに、誰かがドアをノックしている。その事実に身体が恐怖で強ばる。とそのとき、返事を待たずにそのドアのノブが回った。そしてドアの隙間から見えたその人は、幼なじみだった。
知った顔に身体から力が抜ける。けれどその突然の訪問に、オレは呆然とした。
なんでここに?
そう思うオレのそばに、息を切らせた幼なじみが近づいてきた。
電話が切れてまだ5分と経っていない。けれど幼なじみの家はうちから歩いて4~5分だ。おそらく走ってきたのだろう。
久しぶりに嗅ぐ、幼なじみの香り。その香りに、オレの鼓動は小さく跳ねる。
「なんで・・・?」
あまりに突然過ぎてそんなことしか言えないオレに、幼なじみは手を伸ばす。そして頬を親指で拭う。
「おまえが泣いてたから」
そう言ってさらに、ごしごしとオレの頬を擦る。
「なんで泣いてるんだよ。それになんだよ。こんな顔色して、ガリガリに痩せやがって・・・」
頬を擦っていた手はいつの間にか、オレの頬を包み込むように両手で挟んでいる。
「なんで何も言わなかったんだ。オレたち幼なじみだろ?何かあったらすぐに言えよ」
そう言う幼なじみの顔が辛そうに歪む。でもオレは、その言葉に胸が痛んだ。
『幼なじみ』
その言葉に、幼なじみがそれ以上の感情を持っていないことが分かってしまった。
確かにオレたちは幼なじみだけど、いまそれを言われるのは辛い。
ついさっきまで、ようやく気づいた自分の思いに告白して『治療』をやめようと思っていた。けれど『幼なじみ』として心配して駆けつけてくれたことに、オレは既に失恋している事が分かってしまったのだ。
オレは『幼なじみ』以上の存在にはなれていない。
だったら変に告白して、困らせることはない。
優しい幼なじみは、いつもオレが傷つかないようにしてくれる。だからもしオレが告白したら、オレが傷つかないようにと頭を悩ませるだろう。そして間違いなく、オレたちの距離はもっと離れてしまうに違いない。だったら言わないで、このままの関係を続けたい。
そう思ってオレは、開きかけた口を閉じた。けれどそんなオレの顔を見て、幼なじみはさらに辛そうに顔を歪める。
「・・・なきゃよかった」
ぼそりと呟いた言葉。その声は小さくて、オレには聞こえなかった。だから思わず聞き返したオレに、幼なじみは眉根をぎゅっと寄せて怒鳴るように言った。
「こんな顔をさせるなら、離れなきゃよかったって言ったんだっ」
突然至近距離でそう怒鳴られて、オレは驚いて目を見開く。
「オレがどんな思いでお前から離れたと思ってるんだよっ。お前が好きで・・・好き過ぎて・・・止められなくて・・・だけどお前は全然そうじゃなくて・・・だからオレの我慢が効かなくなる前に・・・お前に嫌われる前に離れようって・・・」
泣きそうな顔でそう言った幼なじみは、そのまま下を向く。けれどすぐに顔を上げてオレの頬を挟んでいた手を離すと、すごい勢いでオレを抱きしめた。その瞬間今まで嗅いだことの無いほどの濃ゆい香りに包まれる。
「お前はオレのことを幼なじみとしか思ってないから、オレの気持ちを押し付けて嫌われたくなかった。嫌われるくらいなら今までと変わらず幼なじみでいようって・・・そう思ってお前から離れたのに・・・」
ぎゅっと力を込められた腕の中で、オレはその状況が理解出来ない。ただドキドキとすごい勢いで脈打つ心臓の音を聞いていた。
これはどっちの鼓動だろう。
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