280 / 280
最終章 天主殻解放編
第1話 邂逅
しおりを挟む
A.D101年 トウキョウCN古宿エリア 格納庫
「なんなんだアイツらはぁ!?」
「突然、上から降ってきやがったぞ! 関東のタイプか!?」
「奴らも襲われている、とにかく増援を出せェ!」
グイイイン ガシャン ガシャン
待機していたトウキョウの増員が駆け足で外部に出ていく。
格納庫からライオットギアも複数出撃開始していくのは、
天からの空襲による未知なる攻撃を受け続けていたからだ。
関東軍の新型と思いきや、急襲されているのは双方も同様で
敵味方の区別もつかない状況にみまわれていく。
一斉に陣形が崩されて部隊長もまともに指揮できない混乱にまみれる中、
1人のトウキョウ兵が仲間の頭部の上を見て何かに気が付いた。
いつも表示されていたMの字が消えていて真っ暗の枠だけになっている。
それどころか、アナウンスが先程からまったく聴こえなくなって
上層部からの指示が下りてこなかったのだ。
「No、状況を説明して下さい! あれはどこからの介入ですか!?」
「統制論理機関、応答ありません・・・数分前にPDが一斉に外出して
それ以来まったく誰も出てこなかった模様」
どういうわけか奇襲と同時に上層からの指示もパタッと消えてしまい、
応援や兵器要請ができなくなって次の行動に迷う。
謎の勢力による乱入と同時に起きたのは偶然か定かではない。
指揮系統もあっという間に失ってしまい、中層の部隊はどうにか
上部に目を向け、彼処に数値を意識しすぎている時、
衝撃音が聴こえてきた。
ドゴォン
トウキョウを囲う大きくて強靭な外壁が破壊されていく。
現れたのは異様な骨格をした白金の装甲だ。
兵達は発生源を特定した位置は空、天主殻からやってきた軌道は
判明できたものの、何故ここに来たのかまでは不明。
ただ、目撃したのは天からの脅威だけではなかった。
「・・・・・・」
「PD、どうした?」
フュウウウウン ゴトン
「動かなくなった!?」
自動人形が次々と停止、従者は全て駆動しなくなったのだ。
故障にしても、一斉に壊れるなんて有り得ない。
上層部であるNoもほとんど連絡がとれない状況で
管理者に異変が起きたのか、途切れた通信で確かめる猶予もなく、
フロアに横たわる疑似的な人へ見入る次に、再び穴が空いた壁へ向けると
トウキョウ兵達は予想外の代物に注目させられる。
「ゴギギギ、カカカカカカコ」
「これは・・・生物なのか?」
翼の付いた爬虫類が施設に侵入。
灰色の壁を容易く崩れてきたと思えば、隙間から白い物が目に入る。
かつて、見た事もない白金の生物が亀裂から頭部を突き出していた。
数分前 軍事執行局内部
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ゴスッ ブウゥゥン ガスッ ゴスッ ブウゥゥン ガスッ バスッ
「むうっ、ふんぬっ、もふっ、ぐふぅっ!?」
ズスッ
クリフはありったけの気力でグラハムの胴を殴打し続け、
ついにはNo2が上半身から床に倒れる。
片腕に装着した東北兵から譲られたナックルで内蔵に負荷を
与えていた効果に気付いていない俺は、今までどんなに
殴ってもビクともしなかった父の様を見て愕然とする。
「な・・・どうなってやがる?」
「グラハム司令!?」
内蔵にダメージを負ったようだ。
一応の決着はついたのか、少しやりすぎた感もよぎったが相手が
こんなだけについ夢中になってありったけ連打してしまった。
(東北のナックルはこんな性能をもってたのか、
やっぱ、関東と手を組んでいたのはマジだった)
俺がここにアブダクトされてから同盟をしたのは本当のようだ。
助け舟とばかり思わず手にしたこれで親父を倒せたなんて、
まだ信じられなかったがトウキョウに通用できる手段があった。
レッドの言うように他と協力すればできない事もできるんだと
やっとこんな石頭で分かるようになれた。
そして、今になって一気に攻撃しにきたらしい。
ここもそうだが、外側の様子もさっきよりやたらと音が大きい。
中庭から上を見上げると何か白い物体が飛来している。
トウキョウ兵諸共に安否確認しようと駆け付けようとした時だ。
ドゴォン
壁を破壊する音が同じ場にいた者達の耳にもとどいた。
トウキョウ兵にとって異常事態、俺にとっては援軍が来たと
思って期待がもち上がるがどうやら違っているようだ。
「あいつらがやって来たのか?
・・・いや、違う。あんな物まで造ってたなんて聞いてねえぞ」
「こちらニトベ、どうした?
なに、正体不明の機体だと!?」
「!?」
その期待はどちらもとどかぬ方となる。
亀裂から入ってきた脚部の太いクモ型の機械が無数のミサイルを
辺り構わず発射した。
バシュバシュバシュ ドゴゴゴゴゴ
「脚部がミサイルポッドの機械だと!?
これは関東の兵装じゃな・・・ゴフッ!?」
ドスッ
翼をもったトリ型の機械が滑空、白金の槍でトウキョウ兵の
カーポを突き刺して着地。
拡翼しながら滑り降りてきたそれらは見回すと1体ではなく、
複数で閉所に侵入していた。
「コンタクトォ、今までにはない未確認の骨格。新型と判定!」
「ライオットギア・・・じゃない? 動物の発動機か何かか?」
関東のタイプでも規格ともいえない摩訶不思議の外装に、
人々達は戦慄する。クリフも一歩下がって攻撃されないよう壁に背を着ける、
辺りにいるトウキョウ兵10人は対処しようとして射撃。
応戦でパトリオット109を撃ったが、なけなしの反応しか返ってこない。
ズドン キィン
「弾かれた、109ではダメージありません!」
「なんなんだ・・・なんなんだよおおお!?」
戦意を失った1人のトウキョウ兵が狭い路地に逃げ込む。
壁に背をつけてカバーしながら横ばかり見回していると、
上部から細長い白金の顔が壁を這いながら降りてきた。
ゴポポポ ブシュウウウ
「ミャオオゥ」
人の頭を模したヘビ型の機械が口を開けて黄緑色の酸を吐き出す。
辺り一面が溶解、鼻も焼ける様な臭いが散漫した。
様子からまったく歯が立たない、最強クラスと言われたトウキョウ兵ですら
こんな様で、クリフも只事じゃない様子だと次第に気付く。
また先の飛行型が1機こっちに迫ってくる。
槍先をしっかり見定めてすり抜けさせたタイミングで顔を殴る。
「フンッ!」
ゴスッ ブウゥゥン
ナックルフックを入れていつもの音が響く。
数m吹き飛んでダウンさせた。だが、効いている様には見えない。
ウゴメキは人とまったく違って痛がる様も何もなく思えた。
グンッ ボシュウウウ
背中の羽らしきところから青白い噴射が出て飛び上がり復帰。
トウキョウ幹部連中に道を塞ぐよう言った。
「おい、ドアを閉めろ! 外の奴らに出るなって言っとけ!」
「通達、全隊員は地下に避難!」
実際、上から来たというなら避難できそうなのは地下だけで
ここには大きな設備があるのを知っていた。
外周からどんどん閉めて塞いでいく、すでに入られた機体も目にして
攻撃してもやはり効かない。
破壊行動ばかり繰り出しているのかと思いきや、
辺りを物色するタイプもいる。資源を漁っている機械もいた。
「資源強奪されているぞ!?」
「ライオットギアが素材を・・・どこに持っていく気だ!?」
ワイヤーの様な触手を伸ばして技術者をまるごと飲み込む機械、
AUROが貯蔵する配電盤を捻りちぎる機械もいる。
どちらにしても、抵抗力も及ばない人達の取るべき行動は退避以外にない。
側にいるのはロスト者か怪我人、どちらも被害を受けた者ばかりだ。
「くっ、すぐに医務室へ連れていってやる」
「施設が破壊されている・・・近場にある医療機関は壊滅したらしい」
「どこでも良いから避難所を設けるよう指示しろ!
親父は俺が連れて行く、お前らは防衛しろ!」
唯一相手になれるのは無人型ライオットギアくらいだろう。
ドミニオン数機で今を盾に、人兵は総掛かりで撤退を取り始める。
大多数の機械を相手に、こちらでは怪我人を1人担ぎ
今の面子で勝てる相手ではないと早急に勘づいた
クリフは父を運び、安全圏を確保するために地下へ移動した。
トウキョウCN 甘谷エリア
近隣にもトウキョウと関東の混戦は一斉に対局が分かれていた。
中央論理機関のタワー近隣のエリアにいたトウキョウと関東兵の
戦闘行為はいつの間にか白金の生物へと対象が切り替わり、
襲来位置からして天主殻の仕業だと誰もが予想してはいたが、
何故今になってやって来たのかは分からない。
見えるのは白金の装甲、生物の姿を模した機械が所かまわずに
攻撃しかけている。頭上の数値の出現も同様に鵜呑みにできず、
兵達はどうしようもなく前線から遠ざかるしかなかった。
ワタルとトオルもこの光景を目の当たりにして、
原因特定がどこなのか各地の様子を無線で聞き出す。
「レッドさん、応答して下さい、レッドさんッ!」
「総司令、ホッカイドウ美人さーん!
・・・駄目か」
トオルはレッドの安否を確認しようと連絡したが、返事がない。
ワタルが指令部へ連絡しても、レイチェル司令から応答がなく、
一部のメンバーから返事がなく肝心な頼りがない中、
現場はあくまでも現場から判断する。
ワタルはナミキ司令に交代してトウキョウ攻略は無理だと催促、
メンバー達に撤退命令をだした。
「司令、現場がもちそうにない!
すんごく強い新型が降ってきたから帰還するわ!」
「「そうしてくれ、どういうつもりか攻撃してきたのは天主殻。
トウキョウ目的地へレッド君が端末操作してから発生したようだ」」
「やっぱ、あいつは到着できて何かやってたのか。
ん? 何かおかしいぞ」
トウキョウ中心部で何をすれば良いのか俺達は何も知らされていない、
CN法の根源を見つけるとだけ分かっていたが、実際そこに行って
どういった事をするのか指示されていなかった。
ならば、現場指示していたのはレイチェルだけ。
ナミキのおっさんも詳しく知らないと言って肝心なところは丸投げだ。
もしかしてレッドも記憶喪失をしたとウソついたグルだったのか?
もしくは彼女に誘導されて騙されたのか?
そう懸念していた時、別部隊から通信。
「一帯にいる関東兵、聞こえていたら拠点に戻れ! 地元だぞ!!」
「「イバラギCNに異常発生、爬虫類の様な機械が襲来!」」
「「こちら第29部隊、トチギも巨大な虫型が奇襲!
至急応援を・・・ぶじゅるぉ!?」」
「なに!?」
指示をだした矢先、地元から連絡を聞いた2人はもはや
安全な場所など無いという事実をすぐさま知る事になる。
攻撃の手はトウキョウのみに限らなかったのだ。
トウキョウCN 最上階
「副司令、応答して下さい! アメリア司令!」
ベルティナは上層階で副司令に連絡するも、無音状態のままだった。
上層階の異変を察知して駆け付けたがすでに誰もおらず、
床にはNo1のイヌカイだけが倒れていたので、奇襲を受けたと
上層部へ通信、アメリアへ連絡するも同じ反応だった。
(まさか、あの方も!?)
関東軍にアブダクト、ロストされたのか?
しかし、敵の侵入経路であの方が滞在していた工房まで及んだ
報告はとどいていない。ただ、統制論理機関で待機していたPD500体が
どういうわけか数十分前にほとんど外に出てしまって、奇襲された直後に
全機停止してしまってもぬけの殻になっていた。
誤作動でそんな行動をとった事など一度もなく、
ハッキングやジャミングされた形跡すらない。
ただ、最上階で端末を操作した履歴だけはあってトウキョウCNと
関係のないコード入力をしてどこかとやりとりしていたようだ。
他の幹部もほとんど倒されてしまったらしく、
エドウィンやグラハムなど次々と消えていくNo達に
最悪な事態を想定してしまう内、仕切り直しをとるべく
下階へ戻ろうとすると片耳から通知の音がした。
ピピッ
(副司令!?)
アメリアから返事がきたのかと思い、すぐに無線にでるも
連絡先は意外な人物からだ。
「「No9、お久しぶりです!」」
「お前・・・トーマスか!?」
声を聴いた彼女はすぐに中層階の部署の者だと気付く。
行方不明だったはずのトーマスから連絡がきた。
連れ去られたはずの彼からの突然の無線に、詳細を聞き出す寸前
耳を疑う言葉を聞いたのだ。
「無事だったか!? 今回のトウキョウ侵攻に何があった!?
アブダクトされたと聞いたが、今までどこに――?」
「「CN法の基本ソースコードが見つかりました」」
「!?」
身の上話の一片もせず、真っ先に本題を打ち明けた。
イヨとよばれる機体を調べ続けてから、彼は次々と製作者らしき
プログラムコードを解除、クリアランスしていったのだ。
状況が状況だけに、一刻も早く事態を進めて無駄話を避けようと
一部の解析が済んだ箇所を送信、ドロイドと同様な規格を見せる。
創立者らしき名前が連なり、内1人のまざまざと表示された者は
私にとって大きな衝撃を与えた。突然の知らせに一瞬、何の事か
すぐに分からずに聞き返した。
「ソースコード・・・一体どこのプログラムベースだ?
CN法の基など、どうして外側にいたお前が?」
「「ここに書かれている名前・・・見て下さい」」
「4人の名前も確認・・・アメリア副司令の名も。
まさか・・・あの方が・・・」
「「それと、あと1人だけデータが入っているみたいで、
閲覧不可になってまだ観られません。
僕の見解で全5名がCN法を施行した可能性が浮かんでいたと」」
彼女の名前を見た私の顔が下に向く。
いつも身近にいた彼女が、世界の創立者達の1人であったのだ。
CNは約101年続いてきたはずで、あの方の存在が常人ではなかった
事実を知らされて今になって常識から外れた者と関わってきたと気付く。
普段から厳しい顔ばかりしていたのが緩くなりかける。
外では仲間達が戦っている、ここで止まるわけにはいかない。
トウキョウの根幹に食い込んだ彼の行動を咎めようとも思わず、
彼女に迷いはなくプログラム解析を続けるよう協力に応じた。
「泣き言などいう暇もない・・・私はどこまでもトウキョウを守る者。
これを解析すれば世界を解放できるんだな?
ならば、我々がするべく事は1つ。
人の歪みを終わらせるためにクリアランスを続けるぞ。
お前はどうする?」
「「僕はそちらに向かいます。
もう、トウキョウ圏内にいるので待機して下さい」」
「分かった!」
トウキョウCN 中央論理機関タワー付近
シュパン
ベルティナと連絡しながらトーマスはすでに近場まで来ていた。
無人ヘリに襲われる寸前、上空から飛来したトカゲ型の
エネルギー波が貫通。とっさに離れた彼女は危害は受けなかった。
異変に気付いた彼は得意とするマルウェアのコード解除法が
トウキョウで使用していたPCの方が効率良いと判断して
再びここへ戻ろうとする。
詳細を知らないマリサは彼を背負いながらソリッドワイヤーで
不明の機体からかいくぐりながら中央タワーへ登っていた。
「あんた、まだトウキョウに用事があるの?」
「悪いけど、基本コードで開けないところがあったんだ。
規格が違うから仕方ないけど、ここでならできるはず」
ベルティナと合流するべくエレベーターも止められたから、
こうして空中移動でロストしそうな状態で向かわるざるをえない。
空から降ってきた謎の機体から狙われないよう迂回してばかりで
行こうとするが、トンズラする疑念もある。
「クドいけど、あんたはもうグンマの人なんだからねっ!
終わったら、またグンマに戻ってよ!」
「これはもうCN間の問題どころじゃない。
人間の自由を賭けた問題さ」
「そ、そう?」
「あの灰色の長方形の窓がある、あそこにあるテラスへ行って!」
シュパン
小柄の彼をしっかり腰ごとつかんでベルト固定、
侵入できそうな窓を見つける。
マリサは装備品のピッキングでどうにか少しこじ開けた。
だが、開いたのはわずか30cm程度の隙間のみで
小型の僕ですら満足に入れない幅だった。
不可と思ったが、彼女は気合いを入れ直して続行する。
トーマスだけ窓で離して全身を左右に動かす。
「ふんっ!」
ゴキッ
「マリサ、君の肩が!?」
「気にしないで、あたしは関節外せるのよ!」
彼女の柔らかな体勢に今更ながら驚く。
以前もアイチの営倉の窓からヌルっと入ってメンバー達を助けた
経験もあったという。
マリサは内側から全て解除して彼を迎え入れた。
しかし、上へのルートがどこなのか彼女には分からない。
代わってナビゲートする。
「トウキョウって、森とはまた違ったゴチャゴチャ感があるわね。
で、鍵はどうやって? どこから入れば良い?」
「あそこからなら近い、頼むよ」
オオイタCN
一方、離れた西側の地方にも天の波及がとどいていた。
爬虫類の姿を模した、主に飛行型ライオットギアが襲来。
金色フレームで白金の筒状のポッドで浮遊する輸送船らしき
物体の中から生物の機械が降下している。
ガシャン
ゴリラ型「ギギギギググ」
四足歩行する白金の装甲が中から飛び出してきた。
中つ国地方で碧の星団と抗争が勃発し、援軍として応援で呼ばれた
マサキは1人だけでオオイタCNへ滞在及び監視をしていたが、
確認したのはさらに高い上空からの白く光る物体であった。
突如現れた無数の飛行型の何かから奇襲を受けて
リョウコ司令から撤退命令が通達が来た後、
ミキと合流しようと無線連絡した。
「ミキ、今どこにいる!?」
「「今、ミヤザキにいるわ! 上空の様子見た!?
天主殻から来たという機械もこっちで確認した!」」
「そいつららしき連中がどんどん地上に降りてきてるんだ!
目的は分からない、でも、人を襲っている!
リョウコ司令の指示で帰らなきゃいけないんだけど、
ここの人達をどうすれば良いのか――!?」
「「まず、あんたが帰ってきなさい!
どんな状況でも所属CN準拠でしょ!?」」
「そ、そうだった・・・とりあえずそうする」
「「本部はあんなの相手じゃ犬兵でも無理だと判断して待機なの。
最低限の防衛にと市民の防衛に専念するって。
そうそう、ケンジもいる!
やっと、まともに話ができるようになったわ!」」
「面会謝絶でずっと会う事もできなかったけど、やっとか!
ちょっと代わってくれ!」
ずっと入院していたケンジがようやく回復して戻れるらしい。
東CNに勝手に侵攻したらしく、返り討ちも説教してやりたいけど
今はそれどころじゃない。無線の向こうで人が入れ替わった音がして、
ミヤザキの皆と再びまとめる相談をした。
「市民街の防衛を先に共同作戦を取り直すらしい。
ケンジ、お前達も来い!」
「「俺の事はもういい・・・放っておけ」」
「いいわけないだろ! 自分だけ不遇だと思うな!
また一緒に戦うんだ!」
「「無理だ、俺はもう戦えない・・・」」
「・・・・・・え?」
協力できないという返事はマサキそのものを拒否するのではなく、
会いたくないという意味ではなかったのだ。
ケンジは先の戦闘で両腕を失ってしまっていた。
「「え・・・それって」」
ガシャンッ
両腕という単語に思わず動揺する、一瞬何の事か分からない時に
数百m離れた上空に白金の飛空艇が接近。
開いた中から中腰姿勢の生物型が飛び出してきた。
ライオットギアの類だと思うものの、あまりにも滑らかな挙動。
凄まじい跳躍力で間合いを詰めて手前まで移動し、
辺りの兵士達に襲いかかってくる。
バキッ ゴスッ ドゴッ ガスッ
「だコラ、がふっ、ぐしゅっ、すっぞ、おえぇ!?」
幅1mある盤部で殴りつけてきた。
一打ちでビークルが5m吹き飛び、ヤマグチ兵のカーポが捻じれ、
暴君者の如く人も機械もかまわず殴りつけていた。
負けじとヤマグチ兵達が応戦するも、白金のボディパーツの
硬さは比類なきものである程に通用しないようだ。
マサキはケンジへ気を回す猶予もなく、数体やってくるそれらに
勝ち目がないと身近の兵に逃げるよう警告する。
「撤退指示がでてる、退避しよう!」
「邪魔すんな、今やらねえでいつやんだ――!?」
「こいつらは今までとは何かが違う。
対策ができるまで逃げるんだ!」
拒否する彼らを肩ごと抑えて退去させようと躍起になる。
マサキの言う通り、勝てる見込みもあるはずがない。
渋々理解する中、まったく言葉を理解しない者が1人いた。
キトウ「おぎゃーっ!」
置き去りにされかけた大きな赤ん坊(?)がいる。
元ヤマグチCN第6部隊長、キトウがいつの間にか離れていて
ライオットギアの視界が広くなり、一部に映り捉えられた。
狙われている、誰もがそう思いかけるも金属体へ踏み出せず
硬直していた瞬間だ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおぬおおおおおおおおおおおおお!!」
ドゴッ ギュルルルルル
「ゴルルルル」
ドリルがゴリラ型に直撃した。
鈍い音で白い金属を貫こうと突撃してもまったく壊れる様子もない。
馬力が予想以上に強く、両者動かない均衡をとる。
「死なせねえ、ぜってえ死なせねええええええ!!」
ビークルから窓の外が浮いた感じがした、つかまれてすごい力で
持ち上げられているようで、タイヤが真っ直ぐ進んでいない。
隙を見たヤマグチ兵が第6部隊長を確保。
ぐるっと回り込んで襲われそうになった危機から救助しようとした。
ガッシリ
「離さないで下さいよ!」
仲間が腕をつかんでこれ以上にない力を奮い、
かつてのOBを背中に背負ってビークルに乗せていく。
らしい格好なんて関係なく、見捨てずに助けようと担いでいった。
「例えガキに成っても、俺らの隊長には変わりありませんッ!」
「俺はいい、サッサと行けや!」
「もう限界だ、脱出するッ!」
マサキはレバーを引いてビークルを前進。
間一髪で白い巨体の追撃から逃れてホットゾーンから回避。
その場から離脱、クマモトCNへ向かう。
覚悟を決めたヤマグチ兵は仲間達を行かせたのを確認し、
残りのやるべき事だけ集中する。
「「部隊長を・・・よろしく頼んます」」
ブオオオ ガラガラガラ
崖先の地面が崩れて2機の重心が共に斜めになる。
走力により馬力が勝ったわけでもなく、重力作用に対応してない
足場を踏み外した陸上の天主機は空を飛べない型のようで、
ヤマグチ兵共々に谷底へ落下していった。
トウキョウCN最下層 簡易医務室
クリフ、及び政治局のトウキョウ兵数人一行は地下施設へ向かっていた。
巨人プロジェクトで使用していた倉庫を避難所代わりとして扱い、
隣り合わせに近くあった二度と出られないといわれていた地下牢獄も
一部開放されて医務室などに変装している最中だ。
俺もここに来たのは初めてで、辛気臭さやカビ臭さはある意味上よりも
増して繁栄とは大きく離れた感じをもっている気がした。
親父もそこで寝かせて医療班に看護を任せる。
どうにもならない精神異常者以外の収監者は外に出されて
救助の手伝いをさせられている。
「トウキョウはこんな深く下まで造ってんのか」
「このCNは面積が狭い。万が一、敵が上空まで侵攻した時に備えて
広大な地下施設に力を入れていた。こんな状況とかもな・・・」
多重層エリアで構築された理由は襲来のみではない。
多くの人とフロアばかりの世界で父が目指そうとした
多い人から巨大なるトウキョウを改めて見直そうとする。
多数を統制、グラハムが行ってきた政治活動も楽ではないと
重い体を直に担いでいるので、本人ながらに思ってしまう。
そんな巨大な父親を背負いながら歩いていると、
なにか小さくて太い苦しむ声が聴こえてきた。
「あんた、どうしたんだ!?」
「「ううっ、ぐうううううっ」」
逃げてきた妊婦が通路隅で倒れている。
身なりからして出産寸前にあったのだ。
無事に逃げてこられたのは幸運だったが、後の動向に何もできず。
衛生兵も駆け付けたが、手当支給品も満足にない状況だ。
「とりあえず、そこのベッドまで連れて行く。
羊水を拭くガーゼが少し足りない」
「誰か、拭くもの持ってねーか、誰か!?」
クリフは見慣れない周囲の者達にも大きな声で呼びかける。
しかし、早々な事態に都合よく装備品もなく、からがら退避
した誰もが精一杯で人助けをする余裕もない中、
歩いてきた1人の男が差し出してきた。
「タオル、持ってきたよ」
「あなたはNo8、連行されたはずでは!?」
「その話は後だ、早く彼女を」
ヴェインの立場をよそに衛生兵はタオルを受け取り看護を続けた。
妊婦の体を抑えて固定、反動で頭が出てくる。
「おぎゃーっ!」
「元気な男の子です」
「「ありがとうございます、ありがとうございました」」
出産は無事に成功、異常もなく大きな産声をあげて
胎内から取り出された赤子の体を拭いて母親は抱いた。
滅多に動じないクリフの目に少し動揺が見られる。
こんな場所、こんな状況でも何ものにも変えられないものは
ルールも立場もなく起きるものだと内心思っていたからだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なんなんだアイツらはぁ!?」
「突然、上から降ってきやがったぞ! 関東のタイプか!?」
「奴らも襲われている、とにかく増援を出せェ!」
グイイイン ガシャン ガシャン
待機していたトウキョウの増員が駆け足で外部に出ていく。
格納庫からライオットギアも複数出撃開始していくのは、
天からの空襲による未知なる攻撃を受け続けていたからだ。
関東軍の新型と思いきや、急襲されているのは双方も同様で
敵味方の区別もつかない状況にみまわれていく。
一斉に陣形が崩されて部隊長もまともに指揮できない混乱にまみれる中、
1人のトウキョウ兵が仲間の頭部の上を見て何かに気が付いた。
いつも表示されていたMの字が消えていて真っ暗の枠だけになっている。
それどころか、アナウンスが先程からまったく聴こえなくなって
上層部からの指示が下りてこなかったのだ。
「No、状況を説明して下さい! あれはどこからの介入ですか!?」
「統制論理機関、応答ありません・・・数分前にPDが一斉に外出して
それ以来まったく誰も出てこなかった模様」
どういうわけか奇襲と同時に上層からの指示もパタッと消えてしまい、
応援や兵器要請ができなくなって次の行動に迷う。
謎の勢力による乱入と同時に起きたのは偶然か定かではない。
指揮系統もあっという間に失ってしまい、中層の部隊はどうにか
上部に目を向け、彼処に数値を意識しすぎている時、
衝撃音が聴こえてきた。
ドゴォン
トウキョウを囲う大きくて強靭な外壁が破壊されていく。
現れたのは異様な骨格をした白金の装甲だ。
兵達は発生源を特定した位置は空、天主殻からやってきた軌道は
判明できたものの、何故ここに来たのかまでは不明。
ただ、目撃したのは天からの脅威だけではなかった。
「・・・・・・」
「PD、どうした?」
フュウウウウン ゴトン
「動かなくなった!?」
自動人形が次々と停止、従者は全て駆動しなくなったのだ。
故障にしても、一斉に壊れるなんて有り得ない。
上層部であるNoもほとんど連絡がとれない状況で
管理者に異変が起きたのか、途切れた通信で確かめる猶予もなく、
フロアに横たわる疑似的な人へ見入る次に、再び穴が空いた壁へ向けると
トウキョウ兵達は予想外の代物に注目させられる。
「ゴギギギ、カカカカカカコ」
「これは・・・生物なのか?」
翼の付いた爬虫類が施設に侵入。
灰色の壁を容易く崩れてきたと思えば、隙間から白い物が目に入る。
かつて、見た事もない白金の生物が亀裂から頭部を突き出していた。
数分前 軍事執行局内部
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ゴスッ ブウゥゥン ガスッ ゴスッ ブウゥゥン ガスッ バスッ
「むうっ、ふんぬっ、もふっ、ぐふぅっ!?」
ズスッ
クリフはありったけの気力でグラハムの胴を殴打し続け、
ついにはNo2が上半身から床に倒れる。
片腕に装着した東北兵から譲られたナックルで内蔵に負荷を
与えていた効果に気付いていない俺は、今までどんなに
殴ってもビクともしなかった父の様を見て愕然とする。
「な・・・どうなってやがる?」
「グラハム司令!?」
内蔵にダメージを負ったようだ。
一応の決着はついたのか、少しやりすぎた感もよぎったが相手が
こんなだけについ夢中になってありったけ連打してしまった。
(東北のナックルはこんな性能をもってたのか、
やっぱ、関東と手を組んでいたのはマジだった)
俺がここにアブダクトされてから同盟をしたのは本当のようだ。
助け舟とばかり思わず手にしたこれで親父を倒せたなんて、
まだ信じられなかったがトウキョウに通用できる手段があった。
レッドの言うように他と協力すればできない事もできるんだと
やっとこんな石頭で分かるようになれた。
そして、今になって一気に攻撃しにきたらしい。
ここもそうだが、外側の様子もさっきよりやたらと音が大きい。
中庭から上を見上げると何か白い物体が飛来している。
トウキョウ兵諸共に安否確認しようと駆け付けようとした時だ。
ドゴォン
壁を破壊する音が同じ場にいた者達の耳にもとどいた。
トウキョウ兵にとって異常事態、俺にとっては援軍が来たと
思って期待がもち上がるがどうやら違っているようだ。
「あいつらがやって来たのか?
・・・いや、違う。あんな物まで造ってたなんて聞いてねえぞ」
「こちらニトベ、どうした?
なに、正体不明の機体だと!?」
「!?」
その期待はどちらもとどかぬ方となる。
亀裂から入ってきた脚部の太いクモ型の機械が無数のミサイルを
辺り構わず発射した。
バシュバシュバシュ ドゴゴゴゴゴ
「脚部がミサイルポッドの機械だと!?
これは関東の兵装じゃな・・・ゴフッ!?」
ドスッ
翼をもったトリ型の機械が滑空、白金の槍でトウキョウ兵の
カーポを突き刺して着地。
拡翼しながら滑り降りてきたそれらは見回すと1体ではなく、
複数で閉所に侵入していた。
「コンタクトォ、今までにはない未確認の骨格。新型と判定!」
「ライオットギア・・・じゃない? 動物の発動機か何かか?」
関東のタイプでも規格ともいえない摩訶不思議の外装に、
人々達は戦慄する。クリフも一歩下がって攻撃されないよう壁に背を着ける、
辺りにいるトウキョウ兵10人は対処しようとして射撃。
応戦でパトリオット109を撃ったが、なけなしの反応しか返ってこない。
ズドン キィン
「弾かれた、109ではダメージありません!」
「なんなんだ・・・なんなんだよおおお!?」
戦意を失った1人のトウキョウ兵が狭い路地に逃げ込む。
壁に背をつけてカバーしながら横ばかり見回していると、
上部から細長い白金の顔が壁を這いながら降りてきた。
ゴポポポ ブシュウウウ
「ミャオオゥ」
人の頭を模したヘビ型の機械が口を開けて黄緑色の酸を吐き出す。
辺り一面が溶解、鼻も焼ける様な臭いが散漫した。
様子からまったく歯が立たない、最強クラスと言われたトウキョウ兵ですら
こんな様で、クリフも只事じゃない様子だと次第に気付く。
また先の飛行型が1機こっちに迫ってくる。
槍先をしっかり見定めてすり抜けさせたタイミングで顔を殴る。
「フンッ!」
ゴスッ ブウゥゥン
ナックルフックを入れていつもの音が響く。
数m吹き飛んでダウンさせた。だが、効いている様には見えない。
ウゴメキは人とまったく違って痛がる様も何もなく思えた。
グンッ ボシュウウウ
背中の羽らしきところから青白い噴射が出て飛び上がり復帰。
トウキョウ幹部連中に道を塞ぐよう言った。
「おい、ドアを閉めろ! 外の奴らに出るなって言っとけ!」
「通達、全隊員は地下に避難!」
実際、上から来たというなら避難できそうなのは地下だけで
ここには大きな設備があるのを知っていた。
外周からどんどん閉めて塞いでいく、すでに入られた機体も目にして
攻撃してもやはり効かない。
破壊行動ばかり繰り出しているのかと思いきや、
辺りを物色するタイプもいる。資源を漁っている機械もいた。
「資源強奪されているぞ!?」
「ライオットギアが素材を・・・どこに持っていく気だ!?」
ワイヤーの様な触手を伸ばして技術者をまるごと飲み込む機械、
AUROが貯蔵する配電盤を捻りちぎる機械もいる。
どちらにしても、抵抗力も及ばない人達の取るべき行動は退避以外にない。
側にいるのはロスト者か怪我人、どちらも被害を受けた者ばかりだ。
「くっ、すぐに医務室へ連れていってやる」
「施設が破壊されている・・・近場にある医療機関は壊滅したらしい」
「どこでも良いから避難所を設けるよう指示しろ!
親父は俺が連れて行く、お前らは防衛しろ!」
唯一相手になれるのは無人型ライオットギアくらいだろう。
ドミニオン数機で今を盾に、人兵は総掛かりで撤退を取り始める。
大多数の機械を相手に、こちらでは怪我人を1人担ぎ
今の面子で勝てる相手ではないと早急に勘づいた
クリフは父を運び、安全圏を確保するために地下へ移動した。
トウキョウCN 甘谷エリア
近隣にもトウキョウと関東の混戦は一斉に対局が分かれていた。
中央論理機関のタワー近隣のエリアにいたトウキョウと関東兵の
戦闘行為はいつの間にか白金の生物へと対象が切り替わり、
襲来位置からして天主殻の仕業だと誰もが予想してはいたが、
何故今になってやって来たのかは分からない。
見えるのは白金の装甲、生物の姿を模した機械が所かまわずに
攻撃しかけている。頭上の数値の出現も同様に鵜呑みにできず、
兵達はどうしようもなく前線から遠ざかるしかなかった。
ワタルとトオルもこの光景を目の当たりにして、
原因特定がどこなのか各地の様子を無線で聞き出す。
「レッドさん、応答して下さい、レッドさんッ!」
「総司令、ホッカイドウ美人さーん!
・・・駄目か」
トオルはレッドの安否を確認しようと連絡したが、返事がない。
ワタルが指令部へ連絡しても、レイチェル司令から応答がなく、
一部のメンバーから返事がなく肝心な頼りがない中、
現場はあくまでも現場から判断する。
ワタルはナミキ司令に交代してトウキョウ攻略は無理だと催促、
メンバー達に撤退命令をだした。
「司令、現場がもちそうにない!
すんごく強い新型が降ってきたから帰還するわ!」
「「そうしてくれ、どういうつもりか攻撃してきたのは天主殻。
トウキョウ目的地へレッド君が端末操作してから発生したようだ」」
「やっぱ、あいつは到着できて何かやってたのか。
ん? 何かおかしいぞ」
トウキョウ中心部で何をすれば良いのか俺達は何も知らされていない、
CN法の根源を見つけるとだけ分かっていたが、実際そこに行って
どういった事をするのか指示されていなかった。
ならば、現場指示していたのはレイチェルだけ。
ナミキのおっさんも詳しく知らないと言って肝心なところは丸投げだ。
もしかしてレッドも記憶喪失をしたとウソついたグルだったのか?
もしくは彼女に誘導されて騙されたのか?
そう懸念していた時、別部隊から通信。
「一帯にいる関東兵、聞こえていたら拠点に戻れ! 地元だぞ!!」
「「イバラギCNに異常発生、爬虫類の様な機械が襲来!」」
「「こちら第29部隊、トチギも巨大な虫型が奇襲!
至急応援を・・・ぶじゅるぉ!?」」
「なに!?」
指示をだした矢先、地元から連絡を聞いた2人はもはや
安全な場所など無いという事実をすぐさま知る事になる。
攻撃の手はトウキョウのみに限らなかったのだ。
トウキョウCN 最上階
「副司令、応答して下さい! アメリア司令!」
ベルティナは上層階で副司令に連絡するも、無音状態のままだった。
上層階の異変を察知して駆け付けたがすでに誰もおらず、
床にはNo1のイヌカイだけが倒れていたので、奇襲を受けたと
上層部へ通信、アメリアへ連絡するも同じ反応だった。
(まさか、あの方も!?)
関東軍にアブダクト、ロストされたのか?
しかし、敵の侵入経路であの方が滞在していた工房まで及んだ
報告はとどいていない。ただ、統制論理機関で待機していたPD500体が
どういうわけか数十分前にほとんど外に出てしまって、奇襲された直後に
全機停止してしまってもぬけの殻になっていた。
誤作動でそんな行動をとった事など一度もなく、
ハッキングやジャミングされた形跡すらない。
ただ、最上階で端末を操作した履歴だけはあってトウキョウCNと
関係のないコード入力をしてどこかとやりとりしていたようだ。
他の幹部もほとんど倒されてしまったらしく、
エドウィンやグラハムなど次々と消えていくNo達に
最悪な事態を想定してしまう内、仕切り直しをとるべく
下階へ戻ろうとすると片耳から通知の音がした。
ピピッ
(副司令!?)
アメリアから返事がきたのかと思い、すぐに無線にでるも
連絡先は意外な人物からだ。
「「No9、お久しぶりです!」」
「お前・・・トーマスか!?」
声を聴いた彼女はすぐに中層階の部署の者だと気付く。
行方不明だったはずのトーマスから連絡がきた。
連れ去られたはずの彼からの突然の無線に、詳細を聞き出す寸前
耳を疑う言葉を聞いたのだ。
「無事だったか!? 今回のトウキョウ侵攻に何があった!?
アブダクトされたと聞いたが、今までどこに――?」
「「CN法の基本ソースコードが見つかりました」」
「!?」
身の上話の一片もせず、真っ先に本題を打ち明けた。
イヨとよばれる機体を調べ続けてから、彼は次々と製作者らしき
プログラムコードを解除、クリアランスしていったのだ。
状況が状況だけに、一刻も早く事態を進めて無駄話を避けようと
一部の解析が済んだ箇所を送信、ドロイドと同様な規格を見せる。
創立者らしき名前が連なり、内1人のまざまざと表示された者は
私にとって大きな衝撃を与えた。突然の知らせに一瞬、何の事か
すぐに分からずに聞き返した。
「ソースコード・・・一体どこのプログラムベースだ?
CN法の基など、どうして外側にいたお前が?」
「「ここに書かれている名前・・・見て下さい」」
「4人の名前も確認・・・アメリア副司令の名も。
まさか・・・あの方が・・・」
「「それと、あと1人だけデータが入っているみたいで、
閲覧不可になってまだ観られません。
僕の見解で全5名がCN法を施行した可能性が浮かんでいたと」」
彼女の名前を見た私の顔が下に向く。
いつも身近にいた彼女が、世界の創立者達の1人であったのだ。
CNは約101年続いてきたはずで、あの方の存在が常人ではなかった
事実を知らされて今になって常識から外れた者と関わってきたと気付く。
普段から厳しい顔ばかりしていたのが緩くなりかける。
外では仲間達が戦っている、ここで止まるわけにはいかない。
トウキョウの根幹に食い込んだ彼の行動を咎めようとも思わず、
彼女に迷いはなくプログラム解析を続けるよう協力に応じた。
「泣き言などいう暇もない・・・私はどこまでもトウキョウを守る者。
これを解析すれば世界を解放できるんだな?
ならば、我々がするべく事は1つ。
人の歪みを終わらせるためにクリアランスを続けるぞ。
お前はどうする?」
「「僕はそちらに向かいます。
もう、トウキョウ圏内にいるので待機して下さい」」
「分かった!」
トウキョウCN 中央論理機関タワー付近
シュパン
ベルティナと連絡しながらトーマスはすでに近場まで来ていた。
無人ヘリに襲われる寸前、上空から飛来したトカゲ型の
エネルギー波が貫通。とっさに離れた彼女は危害は受けなかった。
異変に気付いた彼は得意とするマルウェアのコード解除法が
トウキョウで使用していたPCの方が効率良いと判断して
再びここへ戻ろうとする。
詳細を知らないマリサは彼を背負いながらソリッドワイヤーで
不明の機体からかいくぐりながら中央タワーへ登っていた。
「あんた、まだトウキョウに用事があるの?」
「悪いけど、基本コードで開けないところがあったんだ。
規格が違うから仕方ないけど、ここでならできるはず」
ベルティナと合流するべくエレベーターも止められたから、
こうして空中移動でロストしそうな状態で向かわるざるをえない。
空から降ってきた謎の機体から狙われないよう迂回してばかりで
行こうとするが、トンズラする疑念もある。
「クドいけど、あんたはもうグンマの人なんだからねっ!
終わったら、またグンマに戻ってよ!」
「これはもうCN間の問題どころじゃない。
人間の自由を賭けた問題さ」
「そ、そう?」
「あの灰色の長方形の窓がある、あそこにあるテラスへ行って!」
シュパン
小柄の彼をしっかり腰ごとつかんでベルト固定、
侵入できそうな窓を見つける。
マリサは装備品のピッキングでどうにか少しこじ開けた。
だが、開いたのはわずか30cm程度の隙間のみで
小型の僕ですら満足に入れない幅だった。
不可と思ったが、彼女は気合いを入れ直して続行する。
トーマスだけ窓で離して全身を左右に動かす。
「ふんっ!」
ゴキッ
「マリサ、君の肩が!?」
「気にしないで、あたしは関節外せるのよ!」
彼女の柔らかな体勢に今更ながら驚く。
以前もアイチの営倉の窓からヌルっと入ってメンバー達を助けた
経験もあったという。
マリサは内側から全て解除して彼を迎え入れた。
しかし、上へのルートがどこなのか彼女には分からない。
代わってナビゲートする。
「トウキョウって、森とはまた違ったゴチャゴチャ感があるわね。
で、鍵はどうやって? どこから入れば良い?」
「あそこからなら近い、頼むよ」
オオイタCN
一方、離れた西側の地方にも天の波及がとどいていた。
爬虫類の姿を模した、主に飛行型ライオットギアが襲来。
金色フレームで白金の筒状のポッドで浮遊する輸送船らしき
物体の中から生物の機械が降下している。
ガシャン
ゴリラ型「ギギギギググ」
四足歩行する白金の装甲が中から飛び出してきた。
中つ国地方で碧の星団と抗争が勃発し、援軍として応援で呼ばれた
マサキは1人だけでオオイタCNへ滞在及び監視をしていたが、
確認したのはさらに高い上空からの白く光る物体であった。
突如現れた無数の飛行型の何かから奇襲を受けて
リョウコ司令から撤退命令が通達が来た後、
ミキと合流しようと無線連絡した。
「ミキ、今どこにいる!?」
「「今、ミヤザキにいるわ! 上空の様子見た!?
天主殻から来たという機械もこっちで確認した!」」
「そいつららしき連中がどんどん地上に降りてきてるんだ!
目的は分からない、でも、人を襲っている!
リョウコ司令の指示で帰らなきゃいけないんだけど、
ここの人達をどうすれば良いのか――!?」
「「まず、あんたが帰ってきなさい!
どんな状況でも所属CN準拠でしょ!?」」
「そ、そうだった・・・とりあえずそうする」
「「本部はあんなの相手じゃ犬兵でも無理だと判断して待機なの。
最低限の防衛にと市民の防衛に専念するって。
そうそう、ケンジもいる!
やっと、まともに話ができるようになったわ!」」
「面会謝絶でずっと会う事もできなかったけど、やっとか!
ちょっと代わってくれ!」
ずっと入院していたケンジがようやく回復して戻れるらしい。
東CNに勝手に侵攻したらしく、返り討ちも説教してやりたいけど
今はそれどころじゃない。無線の向こうで人が入れ替わった音がして、
ミヤザキの皆と再びまとめる相談をした。
「市民街の防衛を先に共同作戦を取り直すらしい。
ケンジ、お前達も来い!」
「「俺の事はもういい・・・放っておけ」」
「いいわけないだろ! 自分だけ不遇だと思うな!
また一緒に戦うんだ!」
「「無理だ、俺はもう戦えない・・・」」
「・・・・・・え?」
協力できないという返事はマサキそのものを拒否するのではなく、
会いたくないという意味ではなかったのだ。
ケンジは先の戦闘で両腕を失ってしまっていた。
「「え・・・それって」」
ガシャンッ
両腕という単語に思わず動揺する、一瞬何の事か分からない時に
数百m離れた上空に白金の飛空艇が接近。
開いた中から中腰姿勢の生物型が飛び出してきた。
ライオットギアの類だと思うものの、あまりにも滑らかな挙動。
凄まじい跳躍力で間合いを詰めて手前まで移動し、
辺りの兵士達に襲いかかってくる。
バキッ ゴスッ ドゴッ ガスッ
「だコラ、がふっ、ぐしゅっ、すっぞ、おえぇ!?」
幅1mある盤部で殴りつけてきた。
一打ちでビークルが5m吹き飛び、ヤマグチ兵のカーポが捻じれ、
暴君者の如く人も機械もかまわず殴りつけていた。
負けじとヤマグチ兵達が応戦するも、白金のボディパーツの
硬さは比類なきものである程に通用しないようだ。
マサキはケンジへ気を回す猶予もなく、数体やってくるそれらに
勝ち目がないと身近の兵に逃げるよう警告する。
「撤退指示がでてる、退避しよう!」
「邪魔すんな、今やらねえでいつやんだ――!?」
「こいつらは今までとは何かが違う。
対策ができるまで逃げるんだ!」
拒否する彼らを肩ごと抑えて退去させようと躍起になる。
マサキの言う通り、勝てる見込みもあるはずがない。
渋々理解する中、まったく言葉を理解しない者が1人いた。
キトウ「おぎゃーっ!」
置き去りにされかけた大きな赤ん坊(?)がいる。
元ヤマグチCN第6部隊長、キトウがいつの間にか離れていて
ライオットギアの視界が広くなり、一部に映り捉えられた。
狙われている、誰もがそう思いかけるも金属体へ踏み出せず
硬直していた瞬間だ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおぬおおおおおおおおおおおおお!!」
ドゴッ ギュルルルルル
「ゴルルルル」
ドリルがゴリラ型に直撃した。
鈍い音で白い金属を貫こうと突撃してもまったく壊れる様子もない。
馬力が予想以上に強く、両者動かない均衡をとる。
「死なせねえ、ぜってえ死なせねええええええ!!」
ビークルから窓の外が浮いた感じがした、つかまれてすごい力で
持ち上げられているようで、タイヤが真っ直ぐ進んでいない。
隙を見たヤマグチ兵が第6部隊長を確保。
ぐるっと回り込んで襲われそうになった危機から救助しようとした。
ガッシリ
「離さないで下さいよ!」
仲間が腕をつかんでこれ以上にない力を奮い、
かつてのOBを背中に背負ってビークルに乗せていく。
らしい格好なんて関係なく、見捨てずに助けようと担いでいった。
「例えガキに成っても、俺らの隊長には変わりありませんッ!」
「俺はいい、サッサと行けや!」
「もう限界だ、脱出するッ!」
マサキはレバーを引いてビークルを前進。
間一髪で白い巨体の追撃から逃れてホットゾーンから回避。
その場から離脱、クマモトCNへ向かう。
覚悟を決めたヤマグチ兵は仲間達を行かせたのを確認し、
残りのやるべき事だけ集中する。
「「部隊長を・・・よろしく頼んます」」
ブオオオ ガラガラガラ
崖先の地面が崩れて2機の重心が共に斜めになる。
走力により馬力が勝ったわけでもなく、重力作用に対応してない
足場を踏み外した陸上の天主機は空を飛べない型のようで、
ヤマグチ兵共々に谷底へ落下していった。
トウキョウCN最下層 簡易医務室
クリフ、及び政治局のトウキョウ兵数人一行は地下施設へ向かっていた。
巨人プロジェクトで使用していた倉庫を避難所代わりとして扱い、
隣り合わせに近くあった二度と出られないといわれていた地下牢獄も
一部開放されて医務室などに変装している最中だ。
俺もここに来たのは初めてで、辛気臭さやカビ臭さはある意味上よりも
増して繁栄とは大きく離れた感じをもっている気がした。
親父もそこで寝かせて医療班に看護を任せる。
どうにもならない精神異常者以外の収監者は外に出されて
救助の手伝いをさせられている。
「トウキョウはこんな深く下まで造ってんのか」
「このCNは面積が狭い。万が一、敵が上空まで侵攻した時に備えて
広大な地下施設に力を入れていた。こんな状況とかもな・・・」
多重層エリアで構築された理由は襲来のみではない。
多くの人とフロアばかりの世界で父が目指そうとした
多い人から巨大なるトウキョウを改めて見直そうとする。
多数を統制、グラハムが行ってきた政治活動も楽ではないと
重い体を直に担いでいるので、本人ながらに思ってしまう。
そんな巨大な父親を背負いながら歩いていると、
なにか小さくて太い苦しむ声が聴こえてきた。
「あんた、どうしたんだ!?」
「「ううっ、ぐうううううっ」」
逃げてきた妊婦が通路隅で倒れている。
身なりからして出産寸前にあったのだ。
無事に逃げてこられたのは幸運だったが、後の動向に何もできず。
衛生兵も駆け付けたが、手当支給品も満足にない状況だ。
「とりあえず、そこのベッドまで連れて行く。
羊水を拭くガーゼが少し足りない」
「誰か、拭くもの持ってねーか、誰か!?」
クリフは見慣れない周囲の者達にも大きな声で呼びかける。
しかし、早々な事態に都合よく装備品もなく、からがら退避
した誰もが精一杯で人助けをする余裕もない中、
歩いてきた1人の男が差し出してきた。
「タオル、持ってきたよ」
「あなたはNo8、連行されたはずでは!?」
「その話は後だ、早く彼女を」
ヴェインの立場をよそに衛生兵はタオルを受け取り看護を続けた。
妊婦の体を抑えて固定、反動で頭が出てくる。
「おぎゃーっ!」
「元気な男の子です」
「「ありがとうございます、ありがとうございました」」
出産は無事に成功、異常もなく大きな産声をあげて
胎内から取り出された赤子の体を拭いて母親は抱いた。
滅多に動じないクリフの目に少し動揺が見られる。
こんな場所、こんな状況でも何ものにも変えられないものは
ルールも立場もなく起きるものだと内心思っていたからだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
スプラヴァン!
鳳
SF
西暦2100年。
日本の夏季は50℃付近に達し、超高温注意報が発令される。
異常な熱波で熱中症による外への行動制限が過剰にかかり、
日本各地であらゆるスポーツが中止されてゆく中、
政府はウォーターバトルフィールド開催を宣言。
水鉄砲で打ち合うスポーツを行う壮大な水打ち計画を実施した。
多くの人たちがイベントに乗じて打ち合い、冷涼に愉快する。
体力不足を補おうと、全国学校の科目としても登録。
あたかも、水のごとく国の中に浸透し続けていった。
一方、トウキョウ内で成績が上がらない学校があり、
エアコンに浸りきった気分でうだつが上がらずに向上心もなくなる
児童たちもふえてゆく。
どうにもならず無力にふぬけたところ、1人の転校生がやってきた。
同じく各地方で水にふれ合う者たちも様々な出来事に
巡り会い、少年、少女時代の一時を熱風にゆられて送る。
あの日、楽しかった夏へ。ありえたかもしれない水物語。
この作品は7月1日~8月31日の間のみ投稿します。
季節に合わせて是非お読み下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
おもしろい!
お気に入りに登録しました~