スプラヴァン!

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1章 四国編

第6話  ジャパニーズポロロッカ

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8月20日 コウチ 五万十エリアキャンプ場

「おれ・・・夢を見ているのか?」
「なわけないだろ・・・これは現実だ。
 でも、なんかそう言いたくなるくらいだよな」

 時はいきなり8月となり、あるキャンプ場から始まる。
そばには川があって、数十人もの集まり。
住民たちは目に入る光景をすぐ理解できる者は
この時1人もいなかった。
バタバタとしたボードの連続は透明の何かをあおぎ、
外側に出るはずのモノを再び内側によりもどし、
人の住む場所に再び帰る。
様子を言葉で表すなら流れるはずのものが
まったくちがう方向へ向いているので、
確かに夢に出てきそうな光景といえる。

そんなちょっとした設備ができたのは理由がある。
話は1か月前、奇怪きかいな機械の登場は
1人の少女によって変えられていった。


7月20日 WCPH 五万十支部

「海から川へ逆流させるゥ!?」
「そう、あたしが思いついたものを描いてみた。
 この図面をこっちで作ってちょうだい!」

 ミズキはWCPH職員に書類を見せる。
複数の板を川と海の間の中に入れ、
川水を海に流す前に人のいる場所まで運ぶ仕組み。
もちろん、1人で全て考えたわけじゃない。
橙照の頭脳であるコノエ協力の元、
大人の道具に子どもの入れぢえを足したのだ。

「浄水場の水とカバディを見てて思いついたの。
 反復というゆらぎの連続を引き起こして、
 海に流す寸前にちょうだいするって方法」
「ゆらぎですか?」

というのは元からあった技術を少しだけちがう形に変えて
近くの人工プールにもってこさせる。
ふりこ式受圧板[波の圧力でゆれる]を人が利用できる
エリアへ水をよせる方法を提案した。
この時代では波発電が各地で設けられていて、
海岸ぞいで電気を取り出している技術があり、
一部の部品を水よせに使えるように工夫。
でも、WCPHは機器の製造にはたずさわっていない。
あたしだけで相談しにいっても門前払もんぜんばらいされるだけだから、
五万十でえいきょうあるWCPHを伝わらせて
説得にかけあった。

「し、しかし、おじょうさんからやれとおっしゃられても
 本部にもOKが通るよう連絡しないと――」
「お金がかかるのは分かる。
 だから、お母さん名義で動力機を注文してほしいの。
 ツルゾノよりって、というわけでよ」
「は・・・はい」

母はここのナンバー4だから、したがわなくてはならない。
つまり、海へ流さないように打ち上げた水で
亜空間バブルや試合場に適用しようという。
今、ここに母がいない。
すぐにお願いしてもダメだと言われるから、
不在中の時をねらってあえて来た。
しかし、問題が残っている。
海水が亜空間バブルに使用できないから、
まざらないか心配。
そのまま用いるとウォーターガンも故障しやすく、
すぐに評判が悪くなるから場所も選ばないといけない。
場は学校に変わり、友だちからも続きの話をする。


橙照小学校 教室

「でも海水を亜空間バブルに入れると
 壊れるとかじゃなかった?
 塩がたまってきちゃってつまるとかなんとか」
水は、でしょ?
 淡水にするのよ、汽水域なら使用しない場所で
 水をはいしゃくできて少しくらい遊びの領域として
 使えるんじゃないかって」

 あたしは工作のことをみんなと話す。
とちゅうの水域の水は利用してはいけない。
悪く言えばおこぼれをもらうようなものだけど、
海へ放たれる分ならもう使用しないはず。
女は“有り合わせ感覚”が男より勝っているだけあって、
こういった発想にたどり着けたわけだ。

「あんたらしい考えだけど、これで上手くいくの?
 海水がまじったりして壊れたりしない?」
「やっぱり、みんな同じこと聞く!
 仮に入り江じゃなくても、
 少しでも土地が高い所なら海水はまざらないし」
「・・・・・・う、う~ん」

四国ですら、海でのウオバトが許されていないなら
どうあがこうと川からとってくるのみ。
どれだけ水が少なくてもちょっとはあるわけだから、
横からすくっても悪くないはず。
あたしの説明にみんなは無口となる。
人工的に造られたコートなら生物もそこにいないので、
自然危害にもならない。
だれもが聞いてくるだろうと思う点をシッカリと話して
大人がしいた部分をどうにかして穴を開けた。

「するてーと、川と海の境目さかいめにある水を
 ビート板で横から集めて波打ちぎわ
 ウオバトができるってのか」
「これならイチイチ運ぶ必要もなくて手間も省けるでしょ。
 生活用の水はそこでとらないから、本当ギリギリの
 場所からとるのはOKのはず」
「海までとどく水ならほぼ無限に水分がある。
 塩分も少なく亜空間バブルに入れれば、
 ウオバト水に変えられるからか」

父が読んで台所に置いてあった科学雑誌でも
きっかけを得た。
POの長官であるコウシも空間の+-のゆらぎをヒントに
重力を発見して反重力を製造した。
目に見えない空間ができるのだから、
ふつうの水くらい逆流させることくらいなんのその。
だから、この事はもうWCPHに話を通してあった。
最後のきっかけは身近にいる母より、
水通しを起こして結果を生み出してゆく。
そんな時、オノ先生から話があるとよばれた。

「校長先生からですか?」
「何やら新しい物を作っているそうだが、
 とにかく、あまりそそうのないように」

クラウディオ校長先生の方らしい。
理由はあたしの工作に関心をもってくれたみたいで、
どんな内容が聞きたいという。
まさか、学校のえらい人まで興味をもってくれたとは意外。
もしかしたら手伝ってくれるかもしれないと、
細かく説明しに校長室へ向かっていった。


1日前

「お母さんッッ、ふりこ板数枚と油圧ポンプを
 WCPHから注文するね!!」
「は!?」

 例の計画をここで母に伝える。
もう、部下の人たちが動いてるから止めても、もうおそい!
もはや、ここでの細かなやりとりは言わずもがな。
あまりにも先手を打ったあたしの策に、
母は止めるすべもなく組織の裏側から
スルスルと計画を流れていった。
ここで時はしばらくの間をてゆく。
果たして結果はというと・・・。










8月10日 橙照小学校 教室

「「みみみみなさんにお知らせがあります。
  ウオウオウォーターバトルフィールド・・・
  今月より再開するとのこと」」
「やったあああああああああおああああああああ!!」

 児童たちの声が大きくわき上がる。
登校日のお知らせ第一報は校内で大きくうねる。
1人の大人の発言は確実に子どもたちの中へしみこみ、
教室は満面のみへと変わった。

「何があった!?」
「水かれてるからダメだったんじゃないの!?」

もちろん、突然の出来事で飲めないだろう。
余りの逆転劇ぎゃくてんげきで、様子が読めない子もいる。
あれほど無理だと大人たちから言われていたものが
イキナリ復活したのだから当然。
どこから持ってきたのか、ヒロが世間の出来事を
本で書かれていることを話した。

「科学雑誌でも、POの人が取り上げてるぞ!
 “子どものアイデアで四国を救う”、水のさかい
 新たなるオベントが誕生したって」
「イベントな」
「ミズキのことだったのか!?」
「えへへ~」

あっという間に注目されたあたしはみんなのおどろく顔に
ついつい観たくなってしまう。
でも、ドヤ顔するつもりなんてみじんもない。
単純に前のよりをもどしたいだけ。

(良かった・・・本当に良かった)

大人の言う生活優先も十分理解している。
ならば、子どもらしくよせ集めでどれだけ小さな物で
何かを作るくらい良いと思う。
昔、アメリカで生徒が薬品をデタラメにまぜたら
食べられるプラスチックを開発できたとか、
そんな話もあったから。
場合は全然ちがうけど、世の中も分からないところが
いっぱいあるんだなと今回実感した。
これにより、四国は救われて一夏のイベント、
ウォーターバトルフィールドは再び始まる。



 そして、場面は8月20日にもどるポロロッカ
見物人たちもいっしゅん何が起きているのか
理解できないと最初に書いたものの、
WCPHの職員すらまともに理解する人はいない。

「「これ・・・本当にミズキおじょうが考えたのか?」」
「「ハイスペックすぎる・・・」」

水の管理者たちですら、ツルゾノ家の生み出した
目前の原理を完全に飲みこめていなかった。
海に流れる寸前に人口くぼ地のプールに向かう。
川にひたしたボードが往復や回転して水の行き先を
人の示す場所へ流れてゆく。
同じく様子を観ていたあたしとコノエも、
ここまで段取りが好調と予想できていなかった。

「でも、ちょっとおそかったかな。
 もっと早く造れば良かったかも」
「そうね、夏もそろそろ終わりになる。
 まだ暑い日は続くけど、今年はこれで精いっぱい」
「また来年からがんばれば良いって。
 ミズキはよくやったよ」

ただ、県大会と全国大会は全中止となった。
もう8月の後半で本格的なスポーツは無理。
皮肉にも、水の出もどりはおそすぎてしまう。
6年生たちにとっては無念だけど仕方がない。
できないよりはマシだけど、本ごしを入れるチャンスは
どうにもならずに今年は限界をむかえた。
出来立てのプールをながめて内心に再起動を願う。
あたしたちのかつやくは来年から。

(やっぱり、ここの水はきれい)

おこぼれの水を右手ですくう。
もう水を入れてウオバトを始める子どもたちもいて、
あさいプールの中で思いっきり遊ぶ。
今さらながら、四国の川はとても透明で泳ぎたくなるけど
とても楽しそうにしている光景を観るだけでも十分。
やっぱり、美しい景色の中で過ごすのは良い。
そこまでしたかった理由はWCPHの立場とかじゃなく、
子どもと自然とのふれあいを大切にしたかったから。
その1つである水は夏の苦しさから解放されて、
どんな動物にも必要で、工夫次第で変えられることは
単純ながらも、ちょっとしたキセキ。
四国でウオバトは二度と中止にならない。
新スポーツはこれから始まるのだと
言葉に出さずに心の中で願う。
来年も、再来年もずっと。
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