スプラヴァン!

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1章 九州編

第8話  陸を歩きだしたイルカ

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「「今年の優勝者はナカンダカリ・ユイさん。
  50m、28,6秒を記録しました」」
「2連ぱあああああああああああああああああお!!」
「ユイちゃあああぁぁぁん!」
「おれと付き合ってくれええええええええええ!」

 8月10日、水泳で私はまた優勝を勝ち取った。
全国大会、小学生の部において総合1位となって
こちらの部門での頂点を手に入れた。
ただ泳ぐだけのことだけど、指導にそってやっていて
練習や才能のおかげもあって結果が素直に表れる。
いや、オキテみたいな使命みたいな役割ごとが
たまたまこなせただけかもしれなかった。

――――――――――――――――――――――――――
「彼女の成果に、ワタスも満足しとります。
 同じ地域出身ながら光栄でありますねぇ!」
――――――――――――――――――――――――――

ミナミジマ・タイゾウもインタビューでほめたたえる。
カゴシマにいても、みんなから注目を浴びて
私は顔をどうにか平然とすまさせてゆく。
でも、心とは裏腹にもう1つのスポーツに
関心をもってしまっている。
ウォーターバトルフィールド、いつから夢中になったのか
別の水世界への興味やあこがれが消えずに、
もう気持ちがそちらに向いていた。


 その足で私はまたブルーガイアへ向かう。
2日くらいは休みをとってゆっくりしていて、
体と心を取り直してきた。
母には一応友だちと遊びにいくとか、勉強会とか言って
ここに来ることはないしょにふせている。
水泳大会が終われば、ある程度ていどの自由は与えられて
好きなことや時間をもてた。
だけど、いつもこんな所に通っているなんて言えない。
ただでさえ入場料が高くて毎回行ってるのが知られたら
すぐに禁止させられるから。
パスポートも無料でもらっている良いあつかいの中で、
あまりの身分におこられるだろう。
水の表面からコッソリと顔を出して外をうかがっていた。
私はどこにいてもまだイルカ。
本当はそうじゃないのに、別の動物に例えて気持ちを
おさめている。
でも、今まで水中にいたことから自分の足で
ちがう水の世界へ歩き始めてゆく。


「では、今日は間取りについて練習しよう!
 試合場は場所によって形や広さがちがうので、
 まずはどこから動けば良いか――」

コーチの説明を聞きながら今日の内容を知る。
間取りとは、水玉の飛距離ひきょりを適切に当てるための方法。
スポーツはだいたい広さが世界中どこも同じで、
ウオバトだけ例外っていうのがまた不思議だ。
そういえば、試合場は場所によって色々らしい。
他の地方でグラウンドなど水辺がないコートの場合だと、
私はまったく活やくできない。
そんな立場でも、やっていけるのか不安さもあったけど。

「だあっ、ここでバックアタックかよ!?」
「アハハハ、あんたもう3回もビートされたでしょ!?」

ミキ、ケンジの顔もとても楽しそうに観える。
余計よけいな心配か、新しいことをする時ってこんな感じだと
小学4年生の若さなのに思い返された。
グリップをにぎって、相手をエイムしてショット。
ウォーターガンの名称もほとんどおぼえて、
スポーツに差しつかえないようにしていた。
対して、どこかで全て心許こころもとないところもある。

(場所とかじゃない、水辺に関係なく私は・・・)

もう止まれなかった。
陸上とはちがって上がってはまた水中に入る。
いつの間にかこちらの方に関心をもち始めていた。
ウソをつき続けて、別世界にひたる。
楽しい、面白い、これが今の私の素直な気持ちだから。
水泳育ちの水つながりなのはそのままだけど、
ほんの少し形が変わって足を地面に着けた所。
また前と同じことを考えてしまって、何度も頭をよぎる。
人工海をながめていたらスマホの着信音がる。

「「ユーイ、動画観たぜ! 優勝おめっとさん!」」
「ありがとう、セリオ。
 とちゅうで足つりかけたけど、なんとか上手くいけた」
「「ま、なんとなく同じ結果になると思ってたぜ!
  水泳でおれらに勝てる地方なんてねえもんな!
  今、休み中か?」」
「今ちょっと部活でブルーガイアにいて――」
「「え? あんなスゲーとこにいたのかよ!?
  水泳の部活、そんなとこでやるのか!?」」
「実は今年の水泳はもう終わって、ウオバト部にも
 顔を出すようにしたの。面白そうだから」
「「ほえ~、水物好きは相変わらずだな。
  お前の母ちゃん、よくOK出したな!?」」
「い、いや、なんでもないよ・・・別にいいって。
 ところで、オキナワの方はどう?」
「「そこなんだけど、こっちでまたみんなと集まってんだ。
  14日にオキナワ来れるか?」」
「またウオバト?」
「「それもあるけど、後にまだイベントあるんだ。
  水族館でイルカショーを新しくするってから、
  観に行かねーか!?」」
「あそこの水族館で?」

オキナワにある水族館で新しいもよおしがあるみたいだ。
実は友だちの1人が経営していて、
その日は学校もブルーガイアの日程もなく、
ふつうにもどることができる。
本当に水と縁がありすぎだ。
父の家で洗たくもできて出番も増えてゆく。
自分にとってもはやスクール水着が万能に思えてきた。
少しつかれた感じもあるけど、私はどこかへ出かけたい
気持ちが勝っていて、また地元の空気を吸いたくなる。

(2つの家でくらしてるみたい・・・)

でも、向こうの方が暑いのに快適かいてきな感じ。
これは役目じゃなく、自分の気持ちがもてていて
確かな居場所や立場を実感できているから。
少なくともカゴシマ側の家にいる時間は無くせる。
だから、明日はオキナワに行くことにした。
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