スプラヴァン!

文字の大きさ
14 / 154
1章 関東編

第9話  マイペースからの出発

しおりを挟む
スイリュウ家

「みこみはかなり低いですと?」
「うん、あまり前向きにやろうという気のない子ばかりで
 ウオバト以前にスポーツをする下地したじすらなってない」

 スイリュウは清々小学校での感想を食事しながら
2人きりの中で爺に打ち明ける。
人数、やる気、その他が重なって全国に通用できる
みこみはかなり小さかった。
転校してすぐキャプテンの立場についてから
部活の様も観てなおさらそう思うようになる。
正直に言って規格や作戦内容がまざりがちで、
とくしゅな形におされがちで活路かつろに迷う。

(いつの間にか種類も増えたウォーターガンばかりで、
 関東はほとんど新しいタイプが出てこない。
 こんなじょうきょうでどうやってチームを?)

東北はスナイパーライフル式、中部はガトリング式、
近畿はショットガン式、中つ国はカラーハンドガン式、
四国と九州は試合場の形式変化といった変化が
これでもかと増えてどうしようもない。
今のところ知るだけでも他地方はそういった性能の
ウォーターガンやコートが作られている。
対する関東だけはこれといって何も変わってなく、
アサルトライフル式だけのスタイルだけが続く。
こんなじょうきょうでどうすれば良いのか分からずに、
ナイフの位置もズレかける。

「関東は何かサポートする予定とかないの?」
「新しい様式の話は今のところ出ておりませぬ。
 コウシ大臣もとくに何も知らせがないそうで」
「やっぱりアサルトライフル式だけなの?
 今、イバラギでも色々やってるみたいだけど」
「んん、九州からもまた新たな物が登録されています。
 水の輪っかとはまた別格でありますな」
「形がちがうと、また戦略や立ち回りもちがってくる。
 見えてこないんだ、勝機が」


不思議なことに、ここ最近だけでとつぜん新しい物が
作られ始めてどうすれば良いか分からなかった。
おいてけぼりと言うばかりに、関東だけはパッとせずに
とくちょうがあらわれなくて気がちぢむ。
かんじんの国の中心はスポーツ事業じぎょうに力を入れる
動きばかりで、たんたんとした進み方だ。

父さんは今、トウキョウドームで全国大会観戦のため
近くのホテルにとまっている。
少年の部から大人の部まですべて観る仕事だから、
しばらくは帰ってこない。
立場が総理大臣だけあるから話すチャンスもそこそこ。
こういった時、よくそうだん相手になってくれるのは爺。
しつじはそういう仕事としてあるわけだけど。
もう何度か聞いていたことをもう一度うかがってみた。

「関東って、どうして標準ひょうじゅんタイプしかないの?」
「ふむ、前に大人の権利について語りましたな。
 著作権ちょさくけん、物を作るにも許可なくできないことを」
「それは分かるけど、どうして地方ごとに分けたのか
 もっとくわしく教えて」

ここで再び伝えてくれた。
そこで大きなもめごとが起こり、形の権利が地方ごとに
バラけてしまって続いてしまった。
色々な出来事が重なったというけど、理由が不明で
元から形を地方ごとに区別するのはおかしい。
でも、著作権は同じ物を勝手に作ってはいけない。
そこを国という大きなところから制限をかけられて、
おさえられている。

「ことの始まりはSOとPOの間で起きたこじれ、
 そして国会の争議そうぎで権利が散開されてしまいました。
 2096年から始まって様々な問題も起きていました。
 その件でどうなされましたかな?」
「「ぼくは・・・自分のアイデアで物を作れない。
  これからどうすれば良いか分からないんだ。
  だから、チームを底上げする方法が」」
「ふむ、さっそく問題のかべに当たっておるようで。
 まずは世間に冷涼をもたらせること。
 弱小とされる学校でスポーツの再起さいきを図れと、
 お父上からもそうおっしゃられていますな」
「でも、何かをしていかないと世界が――!」
「あせることはありません、形とはあくまでも変化。
 冷涼を世界にもたらすことと形はわずかな差で、
 水も同様に場を広げるものにすぎません」

新しい物が全部強そうな要素ようそとは限らない。
それほどあわてずにチームのまとめを先にしろと言う。
ウオバトの中でおくれているわけでもないという意味。
思わず口に本音を言ったことを受け止めてくれる。
思いこむぼくのすき間を返してもらった。

「「ごめん、父さんの前でこんなこと言えないから」」
「なやんでおりますな、関東たるここでの役目を
 どうすべきか形式さにとらわれすぎていると。
 そうですな、私の口からはこれだけ述べておきましょう」
「一体、何を?」


「マイペースであれ、私はこれだけもうしておきます」
「まいぺーす?」
「人は何か新しい物ができたらそちらに目がうつりやすく、
 “のりおくれる”とお思いになられるでしょう?
 若い子ほどえいきょうされがちです」
「・・・・・・」
「あくまでも最終的に決まるのはご自身の体。
 物にたよらぬ個性やとくぎをもつ人はまだ関東に
 多くおられると思いますよ。君に不足といえば出会い、
 同年代との経験はまだ足りぬのでしょうな。
 地球温暖化防止は大人がどうにかいたすので、
 スイリュウ坊ちゃまは引き続きウォータースポーツに
 専念していただきたい」

両手でつえをついたいつものしせいと目の見えない顔。
ぼくは爺の言葉に何かを一考いっこうさせる。
あせるのはまだ早い、形によらない方法もあると
他の可能性を教えてもらった。
ウオバトは国がそうじて上げているスポーツ。
ただ、変わった水の形を出すことが全てじゃない。
もっと関東の、人口が多いならではのとくちょうが
どこかにあるのではと教えられた。

(それぞれの個性、とくぎか・・・。
 同じ可能性がある同年代がどこかにいる。
 まだ、ぼくの知らない関東が他にもあるかもしれない)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

『続・聖パラダイス病院』

菊池昭仁
現代文学
『聖パラダイス病院』の続編です。こんな病院なら入院生活も悪くはありません。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

処理中です...