スプラヴァン!

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2章 東日本県大会編

第12話  立体化

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アイチ 永栄小学校 グラウンド

 数少ないとはたから見える学校の校庭で、
人数とは対比に細かな水玉が飛んでいる。
内の2人、ノアとメルもいつもと同じく
放課後に再び部活動を再開。
重い黄緑色のプラスチックを支えて放っていた。

バルルルルルルル  ビチョチョチョ

「おっ、うっ、ふぬっ、うふふん!?」

練習相手のモブメンバーの子に多段ヒット、
ずいぶんと気持ちよさげに声を小出しで、
熱された地上に飛ぶ冷たさを味わわせる。
トリガーを引くとともによろこびもワンセットにそろう。
相変わらずBWも重い、少し軽量化するとはいえ
10kgを両手に維持し続けるのも大変だ。
これも去年の仕様でいずれは古いタイプになる、
中部のために改良するのはボクの役目だ。
他を除けばやっていることは同じ、大会への攻略も
去年の試合から色々とり直していた。
そこへジュウゾウ校長がやってきた。

「練習中のところすまない、
 ちょっと君たちに伝えたいことがある」
「はい」

ピタリと行動を止めて顔を向く。
学校の最高責任者が来て無視なんてできない、
ある意味ではイリーナ先生より意識するべき相手。
そう思うところに不可思議なことを述べ始める。

「今年もウォーターバトルフィールドが開始される。
 参加校も去年よりずっと増加して、より試合を行う。
 練習時間のために授業も少々けずる必要もある」
「ええ」
「その中で変更された内容もいくつかあるのだが、
 不定形自由形というルールをご存知かね?」
「ええと、確かコート設備に関することですよね?」
「うむ、試合場も全国各地で次第に整え始めて
 今年に備えておる。
 だがな、そこで新たな心配ごとが生じているのだ」

不定形自由形はウォーターガンの性質や環境事情によって
設定された足場が独特な試合場のことで、
行動にメリハリが出るかとボクも前もって目にしていた。
校長が気にしているのもめずらしいと思うけど。

「校長先生にとって大きなデメリットが?」
「地の利の点で君の産物にえいきょうをおよぼすと思う。
 それがどうしたと言いたいところだが、
 そういった地形に凹凸おうとつのある所でBWのような
 重い物はやすやすと移動ができん。
 健全な子どもに言うのもなんだが、
 時にはギックリごしのえいきょうもでるだろう」

とうとつに耳に入った不定形自由形システム。
試合場がプールだったり川だったり地形的にとくしゅな
ところで行うものだけあって、確かに注意点もある。
ギックリごしもそうだが、足場のメリハリにわずかな
差も生まれてすきが出たりするだろう。
十分に意識しつつ場所を選べばこなせる問題だけど。

「そうですね・・・ですが、無理しなければOKです。
 別に校長先生が不安になさる点はないかと」
「もちろん、BWが出回った今においておふれもよく
 伝えているので危険はないと思う」
「こんな重い物を段差のある所にまで持っていけません」
「なら良いのだが・・・私としても当然のこと。
 現在、試合場の形についても反対意見がある。
 何しろ、国を挙げての行事などいつでもこうだからな」
「ええ」

大人目線で言うケガや事故の点だ。
無茶さえしなければ特に心配することもない。
校長先生は校舎にもどっていった。
ボクもあまり無理しないよう多く動き回るなんてしない。
こしから上に持ち上げられない分隊支援用で、
プールなんか下に落ちた時点でまともにあつかえないから、
どのように立ち回るか考える必要性もある。
そんな事情にメルの一言。

「ウオバトって自由度高いよな」
「今さら、余地があるからボクらも面白いと思うし」
「ハハハ、だから部屋から外出した回数も増したみたいだ。
 思えば、去年からここも少しふんいきが変わったと思う」
「新しいものやことってふんいきも変える可能性があるね。
 確かにスポーツって内容や場所をしっかりと固めて
 形式を整えて始めるものだけど、少しでも基本から
 バリエーションが増したとたんにおっくうさがやる気に
 変わって、縁のなかった頭脳校すら動かした。
 現に国がそこにOKを出しているんだ。
 人体と環境をおり交ぜた理由を上に水打ちして、
 そんな時代の中にいるんだから」

場所によっては不利でもやめない気持ちは十分。
自由度が高いからこそとても楽しい側面がある。
水中と同等なまでに上下左右に動けるような展開が
運動以外にも技術面で通用できる。
手をほどこす立体感が頭のおくに流れるのが良い。
まあ、お約束としてボクたちが他地方に行くのが
ほとんどだろうけど、地理もふくめて異なるエリアを
視野に入れるのも重要だ。
去年のナガノ、シズオカ以外の所もどんな様子か
興味もある。イリーナ先生が来てボクたちをまとめた。

「じゃあ、今日の練習はこれまで。
 体温調節と脈をきちんと計り忘れないでね」
「はい!」

血圧を測る器材も用意してあって、
練習後にきちんと健康状態を調べておく。
ムダな運動は決して行わずに最低限の消費に留める。
何の意図か、小さな青い鳥も交ざるようにケアをしている。
この場面とはまっっったく関係ないが、
作業のしすぎでおしりにすり傷ができてしまっていた。
適度に休むことも大事だと本当に身にみている。
みんなも本当にほどほどを意識するようにしよう!
それはともかくとして、先生がさらに報告。

「後、告知を1件。
 ご存知のところ、今年から試合回数も多くなって
 学校から出計らう機会も増えていきます」
「・・・・・・」
「まずは県大会で、私たちが同じ地方へ出向いて
 総当たり戦を開始。
 さっそく再来週に試合する所が決まったわ。
 イシカワの渓流小学校よ」

中部北に位置する学校への対戦が決まる。
庭園をイメージさせる所でも有名らしく、
メルにとってもゆかりあるエリア。
機械的なアイチとはまた異なるゆったりとした感じに、
等しい地方でのお手の物からうかがうことにした。
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