まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第一章:覚醒せよ、灰かぶりの勇者――ゴーストタウンに隠された声

第27話:幻影のホップタウン、もう一つの私の家

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私は――どこにいるのでしょうか。



夜が訪れ、私は意識を失いました。

目を覚ますと、そこには――

ちいさな光が、ふわりと浮かんでいました。



「これが……マオウさんたちが探していた幽霊さん、でしょうか?

全然怖くなんかありません。むしろ、かわいらしいです」



その光の玉は、まるで私を案内するように、

静かに揺れながら先へ進んでいきます。



私はそれに導かれるまま、

長いトンネルを歩き――

その先に、たどり着いたのは。



かつて"ホップタウン"と呼ばれていた場所――

……けれどそこは、

私の知っている"ゴーストタウン"ではありませんでした。



村人たちが、そこには"生きて"いました。



芝刈りに向かう青年と、

それを見送る若い奥さん。

駆け回る子どもたちに小言を言うおじいさんと、

それをなだめるおばあさん。



どこにでもある、平穏な日常――

ここには、死の気配など一切ないのです。



「……これは、どういうことなのでしょう。

マオウさんやレンくんたちは……どこに?」



そんなふうに戸惑っていた時――

「ユキナ!」

突然、誰かが私を呼びました。



「あの、すみません……私、セリナです」



「なにを言ってるんだ。

名前まで間違えるなんて、ぼーっとしてないで、

早く母さんの手伝いをしなさい」



「は……はい。すみません、今行きます……」



そのときは知らなかったけれど、

後から知る――

あの人が"お父さん"だったと。



「あなた、またへそくり隠したでしょ。

今回は没収よ、没収!」



「す、すまんって母さん!

隣のケンさんに酒に誘われて……

ちょっとだけ、男らしく見せたかったんだよ」



「ダメ。お酒はやめるって言ったでしょ!

ユキナも、お父さんみたいな人と結婚しちゃダメよ?

苦労するから、お母さんのように」



「そんなことありません。

……お父さん、素敵な人です」



「いい子ね、ユキナ。

今日は久しぶりに、パパとお風呂入ろうか?」



「あなた、ユキナはもう14よ?

もう一緒に入る年じゃないでしょ!

……ユキナ、お母さんと入ろうね?」



「……うん」



――なんだか、あたたかい。



本当の私は、父の顔を知らない。

母は奴隷制度が廃止される前、病で亡くなりました。

だから――



こんな普通の家庭に生まれていたら、

私はこうして、

小さな幸せに包まれていたのかもしれない。



「……セリナ君、逃げることは悪じゃない。

勝てない相手には、積極的に逃げるべきだ。

……でも、"どう勝つか"を考えない限り、

いつか、逃げる場所がなくなる」



――誰かの声が、遠くから聞こえた気がしました。

でも……



「ユキナ、ご飯の準備、手伝ってくれる?

今手が離せないの」



「……うん。今、行くね」



……お母さんの手伝いが終わってから、

ゆっくり、考えてもいいですよね。
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