まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第二章:壊せ、偽りの楽園――不夜城に咲く嫉妬と誘惑の花

第35話:好きって言ったら負けな気がした

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童話の中では、王子様は悪い魔法使いを倒して、お姫様と永遠に結ばれる。

「王子様ね?」

俺は溜息を漏らした。

「あいつが王子様? ないわ、あいつが王子様とかないわ」



どっちにしろ、悪い魔法使いの方がお似合いよ。

「きっと俺に悪い魔法をかけたに違いない」

……でも、「嫌な感じはしなかった」

ほんと、悪い魔法使いだ。



あの件以来、あいつは俺に何もしてこなかった。

「あの男は!」あれほど「俺が欲しい」と言いながら、もっと積極的にアタックしてきてもいいじゃないか。

いきなり大人の関係は無理だけど、キスくらい……

「いやいや、今のはなし」

初キスは重要イベントだ。もっとちゃんとした時に、思い出に残る形でしないと。



「セリナ君、そこ、字が間違っている」

「えー! ほんとだ!」

今日もセリナは、俺とのトレーニングの後、あの男と教養の勉強をしている。

あの二人、最初から一緒にいたよね。まさか……

「上出来だ。ご褒美に新しい本をあげよう。この『聖女の悲劇』は歴史的に貴重なものだ。手に入れるのに少し苦労したものだ。」

「ありがとうございます、マオウさん!」

……いや、あれは親子ね。



それにしても……あの天使はどこにいったのかしら。

毎日のようにソファーで漫画を読みながら、フライドポテトをむしゃむしゃ食べていたのに。

「自由すぎるのよ、あの子」

……まあ、俺が言えた義理じゃないけど。



「あのバカ天使なら、大事な使命があると言って朝から出かけましたわ。お腹が空けば戻ってくるでしょう」

「げっ!」



そして、一番警戒すべき相手――俺があの時出会った悪魔が、にやりと笑う。

「あらあら、女の子の顔を見て『げっ』とは。恋敵同士とはいえ、さすがに酷いではありませんか」

……読まれている。



「べ、別に! あんなやつ、誰が好きになるもんか!」

「はい♪ 言質、頂きました。一名様脱落。これであのバカ天使との一騎打ちになりますわ」

「ちょっと待って!」



悪魔だ。俺のことを全部見透かして、からかっているに決まってる。

「では、待ってあげます♪ でも次はありませんわ♪」



心がちょっとほっとした。でも……待てよ?

「あの天使、男の子じゃなかったの?」

さっき悪魔が天使の話を出した時、少し気になった。



「あら、男の子だから男に恋しちゃいけないのですか? あの天使は女性の『概念』が生まれる前から存在した熾天使セラフィムですわ。むしろ異性との恋の方が、彼にとっては異端かもしれません」

「……嘘でしょ」



「幸い、その本人はまだそれを恋と自覚していません。でも、あなたのように素直じゃない娘より、彼の方が勝ち目はありますわ」

「くぬぬ……」



「まあ、敵に塩を送るのが私の性分ではありませんが。公平を期すため、あなたに私の友人を紹介しましょう。なにせ恋の専門家ですわ」

そう言って、彼女は一枚の名刺を差し出した。

そこには、「アスモデウス」――この世界の色欲を司る悪魔の名前が記されていた。
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