まおうさまの勇者育成計画

okamiyu

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第三章:汚された純白に、恋は咲く――旧友と公爵家の囁き

第52話:宴のあとに/帰る場所と、仲間たちと

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私が本を読んでいるあいだに、不夜城の事件は無事に解決していました。

そして、皆そろって無事に――セルペンティナへ帰ってきたのです。

「ガルドーーーッ!!」

ずっと一人で泣いていたリリアンヌさんも、ガルドさんの顔を見てようやく笑顔を取り戻しました。

……よかったです、本当に。

 

* * *

その夜。

私たち二つの勇者パーティーは、合同で打ち上げを開きました。

「かんぱーいっ!!」

「から揚げ、いただきっ!」

「ちょ、それ俺の……!」

「今回の報酬ょ? から揚げ一個、安いくらいよ?」

「くぬぬ……っ」

マサキ様は悔しそうな顔をしながら、

「これもやるよ……」

と、ミートボールまでレンさんに差し出しました。

「なに? 気持ち悪……」

「うるせぇ! 俺の命がから揚げ一個かよ!? 勇者様だぞ俺は!!」

なんだかんだで……マサキ様、前より柔らかくなった気がします。

「ビンタ効果すげぇな……」と呟いたガルドさんの一言に、

「うわっ!」

マサキ様は反射的に顔を両手でガードしました。

な、なにがあったんでしょうか?

「ビンタって……なに?」

「マサキを素直にさせる呪文だ」

「えっ!? そんな魔法あるの!?

 プチトマトちょうだい、ビンタ!」

「バカ! その呪文は気安く使うなって! あー! なんでそんなに取るんだ! やめろ!」

みんな楽しそうです。やっぱり“仲間”って、いいですよね。

 

「ルキエル様、お料理はいかがでしたか? もしよろしければ、私が直々に――」

「いらない。今日はトマト味のフライドポテトとプリンって決めてるから。

 マスター、あ~で食べさせて~」

「はいはい。寝る前に歯みがき忘れんなよー」

「え~、めんどくさい。マスターがやってくれればいいのに」

「ルキエル様、私がお手伝いを――!」

「お前はいらない」

「ガーンーーーーーッ!!」

マオウさんは、天使さまたちのお世話で大忙しです。

でも……ちゃんと約束どおり、朝になったら戻ってきてくれました。

私は信じていましたけど、やはり嬉しかったです。

 

「今回は、舞台に立てなくて退屈だったんじゃなくて?

 せっかく天使化もできたのに、残念だったのでは?」

「いいえ。私が活躍するより、皆さんが無事に帰ってこられたことのほうが嬉しいです」

「欲のない娘……人間の“綺麗すぎる感情”は、私の好みじゃありませんわ。

 味が薄くて、水のように味気ない。

 ……でも、あなたはそれでいいかもしません。“勇者”としては、この上ない人選ですわ。

 この舞台を、さらに面白くするためにもね」

「えっと……なんだかよく分かりませんけど、褒めてくれてますよね?

 ありがとうございます」

モリアさんの言葉は、いつもちょっと難しいです。

でも――根っこは、きっと優しい人だと思います。

私もいつか、あんな知性の溢れる女性になれるでしょうか……。

「無理ですわね」

「え?」

……ときどき、本当に心を読まれているんじゃないかって思うくらい、鋭い人です。

 

こうして、にぎやかな宴は無事に終わりました。

皆さんは宿へ戻り、明日に向けてゆっくりと休む……

……はず、でした。

「女子の! パジャマパーティーやりますっ!!」

どうやら、本当の終わりは――まだ先のようです。
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