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恋しい人
恋しい人 第81話
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「家に帰ってからでいいの?」
「うん。……僕だけの虎君を他の人に見せたくないもん」
虎君に身を任せるようにもたれかかれば、ぎゅっと抱きしめられる。
「その言い方は狡いなぁ。これ以上キスできなくなるだろ?」
「だから、我慢してよ。僕だって我慢してるんだから」
キスしたいと我儘を零す虎君はカッコいいけど可愛い。
僕はくすくすと笑いながらくるりと腕の中で半回転すると、ぎゅっと抱き着き返して一緒に我慢してよとお願いする。
「分かったよ。我慢します。……でも、家に帰ったら滅茶苦茶甘やかすからな?」
「それ、交換条件になってないよ」
覚悟しとけよ。って凄む虎君だけど、僕は望むところだと思ってしまう。だって、いっぱいいっぱい甘やかして欲しいから。
(いっぱいキスして欲しいし、いっぱい触って欲しいんだからね?)
できることなら虎君とずっと引っ付いていたい僕からすれば、虎君の言葉は願ったり叶ったりなこと。帰ったら一杯甘やかしてね? と念を押してしまうのは仕方ない。
僕は虎君の胸に頬を摺り寄せ、数時間後の幸せに満ちた時間を思い描いて笑う。
「あぁもう。失敗した」
「何が?」
「真っ直ぐ家に帰ればよかったってちょっと後悔してる」
苦笑いを零す虎君に僕は今からでも帰る? と尋ねてしまう。パンケーキは食べたいけど、それよりも虎君とくっついていたいと思ったから。
虎君は「でもなぁ……」と物凄く悩んで見せる。美味しいものを食べて幸せそうな葵も見たいし……。と。
(確かに美味しいものを食べてる時って幸せだけど、でも美味しいものを食べるよりも虎君とくっついてる方が幸せなんだけどなぁ)
付き合い始めてまだ3カ月。今まで以上にくっついていたいって思うのは普通のことだよね?
時間が許す限り一緒にいたいと思ってるのは、僕だけじゃないはず。だってこうやって抱き合っていれば虎君の少し早い鼓動が伝わってくるから。
「虎君、あのね、パンケーキはまた今度でもいいよ……?」
「――っ、頼む。誘惑しないでくれ……」
葵が可愛すぎてクラクラしてきた……。
ぎゅって抱きしめてくる虎君は何に困っているんだろう? 僕も家に帰って甘い時間を過ごしたいって思ってるのに。
家に帰ることに難色を示す虎君に、僕は素直に疑問をぶつける。どうして帰らないの? と。
「葵はイライラしてる茂斗と喧嘩したい?」
「! ……したくない」
「だろ? ……会えなくて辛い思いしてるアイツの傍で葵を甘やかすのは流石に気が引ける」
虎君が『家に帰ろう』って言わない理由に納得。
今朝の茂斗の機嫌は昨日よりもずっとずっと悪かった。凪ちゃんに逢いたくて堪らなくてイライラしてるところに、すぐ傍で僕達が仲良くしていたから腹が立ったのだろう。
正直完全な八つ当たりだと思うけど、僕にはその気持ちがよくわかった。
(虎君と付き合う前、僕も同じように感じてたし……)
虎君に想いが届かないと勘違いして暴走した自分の被害妄想を思い出し、流石双子と内心苦笑い。
僕は凪ちゃんが傍にいない暮らしに茂斗が慣れるまでは門限ギリギリまで家の外で虎君と過ごそうかなと双子の片割れを想った。
「……凪ちゃん、なんでマリアに行っちゃったんだろ……」
「芹那ちゃんが通ってるし、前々から決まってたことだから仕方ないよ。……茂斗のことを考えると、ゼウスに通い続けて欲しかったけどな」
凪ちゃんのお姉さんの芹那ちゃんも初等部はゼウスに通っていたけど、中等部への進学時にマリアに編入した。それは凪ちゃんのお母さんがマリアの出身で、娘にはマリアに通って欲しいと言う願いによるものだった。
だから凪ちゃんがマリアに編入するのは昔から決まっていた。本当は幼稚舎の頃からマリアに入学する予定だったけど、海音君が妹と離れたくないとごねたから初等部卒業までゼウスに通っていたのだ。
「……海音君は落ち込んでない?」
「あいつは落ち込んでるぐらいが静かでいいよ」
「もう。虎君ってば! 流石にそれは酷いよ?」
あんなに仲良しなのに。って笑えば、「ヤキモチ?」って笑顔が返ってきた。なんでもお見通しってこういう時居た堪れないや。
「そうだよ。海音君は僕の知らない虎君をいっぱい知ってるし、ヤキモチ妬くに決まってるでしょ?」
「葵の知らない俺はできればずっと知らないままでいて欲しいかなぁ……」
「! どうして?」
「愛してるからに決まってるだろ? ……愛してる人の前でカッコつけたいって思うのは当然の男心だろ?」
これからは沢山見せてね! ってお願いしようと思ったのに、お願いする前にそんな狡い事を言ってくる虎君。
でも、僕の前ではカッコよくいたいって言うけど、虎君がカッコ良くないなんてことあるわけがない。どんな虎君でも僕にとっては最高にカッコイイ恋人なんだから。
「カッコつけたい気持ちは分かるけど、僕は我儘だから虎君の全部を独り占めしたいの!」
僕が伝えたいのは、ただ一つ。どんな虎君でも大好きだからね! っていう僕のゆるぎない想いだ。
「うん。……僕だけの虎君を他の人に見せたくないもん」
虎君に身を任せるようにもたれかかれば、ぎゅっと抱きしめられる。
「その言い方は狡いなぁ。これ以上キスできなくなるだろ?」
「だから、我慢してよ。僕だって我慢してるんだから」
キスしたいと我儘を零す虎君はカッコいいけど可愛い。
僕はくすくすと笑いながらくるりと腕の中で半回転すると、ぎゅっと抱き着き返して一緒に我慢してよとお願いする。
「分かったよ。我慢します。……でも、家に帰ったら滅茶苦茶甘やかすからな?」
「それ、交換条件になってないよ」
覚悟しとけよ。って凄む虎君だけど、僕は望むところだと思ってしまう。だって、いっぱいいっぱい甘やかして欲しいから。
(いっぱいキスして欲しいし、いっぱい触って欲しいんだからね?)
できることなら虎君とずっと引っ付いていたい僕からすれば、虎君の言葉は願ったり叶ったりなこと。帰ったら一杯甘やかしてね? と念を押してしまうのは仕方ない。
僕は虎君の胸に頬を摺り寄せ、数時間後の幸せに満ちた時間を思い描いて笑う。
「あぁもう。失敗した」
「何が?」
「真っ直ぐ家に帰ればよかったってちょっと後悔してる」
苦笑いを零す虎君に僕は今からでも帰る? と尋ねてしまう。パンケーキは食べたいけど、それよりも虎君とくっついていたいと思ったから。
虎君は「でもなぁ……」と物凄く悩んで見せる。美味しいものを食べて幸せそうな葵も見たいし……。と。
(確かに美味しいものを食べてる時って幸せだけど、でも美味しいものを食べるよりも虎君とくっついてる方が幸せなんだけどなぁ)
付き合い始めてまだ3カ月。今まで以上にくっついていたいって思うのは普通のことだよね?
時間が許す限り一緒にいたいと思ってるのは、僕だけじゃないはず。だってこうやって抱き合っていれば虎君の少し早い鼓動が伝わってくるから。
「虎君、あのね、パンケーキはまた今度でもいいよ……?」
「――っ、頼む。誘惑しないでくれ……」
葵が可愛すぎてクラクラしてきた……。
ぎゅって抱きしめてくる虎君は何に困っているんだろう? 僕も家に帰って甘い時間を過ごしたいって思ってるのに。
家に帰ることに難色を示す虎君に、僕は素直に疑問をぶつける。どうして帰らないの? と。
「葵はイライラしてる茂斗と喧嘩したい?」
「! ……したくない」
「だろ? ……会えなくて辛い思いしてるアイツの傍で葵を甘やかすのは流石に気が引ける」
虎君が『家に帰ろう』って言わない理由に納得。
今朝の茂斗の機嫌は昨日よりもずっとずっと悪かった。凪ちゃんに逢いたくて堪らなくてイライラしてるところに、すぐ傍で僕達が仲良くしていたから腹が立ったのだろう。
正直完全な八つ当たりだと思うけど、僕にはその気持ちがよくわかった。
(虎君と付き合う前、僕も同じように感じてたし……)
虎君に想いが届かないと勘違いして暴走した自分の被害妄想を思い出し、流石双子と内心苦笑い。
僕は凪ちゃんが傍にいない暮らしに茂斗が慣れるまでは門限ギリギリまで家の外で虎君と過ごそうかなと双子の片割れを想った。
「……凪ちゃん、なんでマリアに行っちゃったんだろ……」
「芹那ちゃんが通ってるし、前々から決まってたことだから仕方ないよ。……茂斗のことを考えると、ゼウスに通い続けて欲しかったけどな」
凪ちゃんのお姉さんの芹那ちゃんも初等部はゼウスに通っていたけど、中等部への進学時にマリアに編入した。それは凪ちゃんのお母さんがマリアの出身で、娘にはマリアに通って欲しいと言う願いによるものだった。
だから凪ちゃんがマリアに編入するのは昔から決まっていた。本当は幼稚舎の頃からマリアに入学する予定だったけど、海音君が妹と離れたくないとごねたから初等部卒業までゼウスに通っていたのだ。
「……海音君は落ち込んでない?」
「あいつは落ち込んでるぐらいが静かでいいよ」
「もう。虎君ってば! 流石にそれは酷いよ?」
あんなに仲良しなのに。って笑えば、「ヤキモチ?」って笑顔が返ってきた。なんでもお見通しってこういう時居た堪れないや。
「そうだよ。海音君は僕の知らない虎君をいっぱい知ってるし、ヤキモチ妬くに決まってるでしょ?」
「葵の知らない俺はできればずっと知らないままでいて欲しいかなぁ……」
「! どうして?」
「愛してるからに決まってるだろ? ……愛してる人の前でカッコつけたいって思うのは当然の男心だろ?」
これからは沢山見せてね! ってお願いしようと思ったのに、お願いする前にそんな狡い事を言ってくる虎君。
でも、僕の前ではカッコよくいたいって言うけど、虎君がカッコ良くないなんてことあるわけがない。どんな虎君でも僕にとっては最高にカッコイイ恋人なんだから。
「カッコつけたい気持ちは分かるけど、僕は我儘だから虎君の全部を独り占めしたいの!」
僕が伝えたいのは、ただ一つ。どんな虎君でも大好きだからね! っていう僕のゆるぎない想いだ。
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