弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜

自来也

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第29話 もふもふスピリットとコヨミとの時間

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「アルキ!見てこれ!じゃじゃーん!」

 珍しくハイテンションなアリエルが僕の部屋を訪れる。部屋に来ること自体かなり珍しいのだが、その手には白くてモコモコのぬいぐるみが抱かれていた。

「お?新作?良いじゃん、ちょっと抱かせてよ」

 アリエルから手渡されたぬいぐるみを抱きしめると柔らかく手が吸い込まれるような感覚。肌ざわりも最高で…

――これ…なんか少しあれっぽいな。

「あのね……肌ざわりとかもね……こだわってみたの」

「うん、すごい良いねこれ!えーっと……あれっぽい、その……」

 僕が言葉を濁していると急に後ろから快活なエロ狐が口を挟んできた。

「おっぱいじゃの!」

 どこから沸きやがったこの淫乱狐……言いにくい事をサラッと言いやがって……。

 コヨミはいつの間にか僕の手からぬいぐるみを取り上げてモフモフと抱きしめていた。

「お、おっぱい!?そ、そんなはずは……」

 動揺したアリエルは自分の服に手を入れてモソモソと胸をまさぐり……。

「そ、遜色がない…たしかにこの子はおっぱいです…」

「いやいや、違うよアリエル!手触りはそうかもしれないけど、それはぬいぐるみ!」

 自分の胸をまさぐるアリエルから全力で目を逸らしながら突っ込むが…くそう、どうしても視線がコントロールできない。

「なんじゃ?精霊王のおっぱいの感触が気になるのか?妾のなら直に触っても良いのじゃぞ?確かめてみるかえ?ほれ、好きにするとよいのじゃ」

 コヨミはここぞとばかりに胸元を開き煽り散らかしてくる。なんでこの狐が来るといつも空間がピンクに染まり始めるんだ。

「落ち着け!みんな一回深呼吸だ!」


……………………。


「あ、あの……お見苦しいものを……」

「アルキは喜んでおったぞ?むっつりじゃからの」

「コヨミ君、一旦口を閉じたまえ。君の悪い癖だぞ」

「はーいなのじゃ」

 まさかぬいぐるみの感触一つでこんなに気まずくなるとは。とりあえず仕切り直しだ。

「アリエルが作るぬいぐるみってかなり人気高いんだよね。それで名前とかあった方が良いって言われてさ、何かいい案あったりする?」

「お名前……?それは買ってくれた人が付けるものでは……?」

「確かにそうなんだけど、商品名っていうか、そういうのがあってもいいかなって」

「精霊王のぬいぐるみの名前はポコ丸じゃったか。それならシンプルに乳丸でどうじゃ?」

「どうじゃ?じゃないよ。ぬいぐるみだっつってんだろ。子供が遊ぶの!」

「私は……うーん、モッチーとか…」

「んー、製作者が言うのだからそれで良いんだろうけど。少しおっぱいに引っ張られてない?大丈夫?」

「文句ばっかりじゃのう、お主も案を出してみるのじゃ」

「僕?僕は……も、もふもふスピリット君、とか?」

 少し口に出すのは気恥ずかしいけど結構ぴったりな気もする。もふスピシリーズとかもいけそうだし。

「いいですね!もふもふスピリット!それにします!」

 おや?結構好印象?

「悪くないのじゃ、下手に名前を付けるより商品名として売った方が購入者の名付けの自由があるじゃろ」

「はい!この子達は今日から”もふもふスピリット”です!決まりです!」

 アリエルも嬉しそうだ、後でパン屋に教えに行かなきゃな。

「この子達……どんなお名前もらうのかな……。買われていった子達もいっぱい遊んで貰ってるといいなぁ……」

 ふとアリエルがそんな事を口にする。ゼファルドのファンレターみたいな感想があったらきっと喜ぶだろうけど……。

「アンケートとかどうかな?あとはぬいぐるみのお医者さんとか」

「ほう、いい案じゃのう」

「アンケート……ですか?」

「うん、ここをもっとこうして欲しいとかあったら次に生かせるし、ポコ丸みたいにケガしたぬいぐるみを直してあげたら喜ぶんじゃないかな?」

「そ、そうですね……うん。良いと思います」

 アリエルも何かしらのアクションがあった方がやりがいがあるだろう。きっと購入者も喜んでくれるはずだ。

「じゃ、じゃあ私はもふもふスピリットをもっと作るので!」

 アリエルはニコニコと笑いながらふわふわと部屋に戻っていった。僕も宣伝頑張らないとな。

「それでアルキよ、妾の柔らかさを確認する話はどうなったのじゃ?精霊王より少し柔らかいと思うのじゃが」

 コヨミはニヤニヤとぬいぐるみを抱きながら肩を寄せてくる。

「知らないよ…」

「頑なじゃのう……。妾の乳丸はいつでも触り放題じゃぞ」

 胸を寄せて迫ってくるエロ狐、実際嫌いではないし正直言えば触ってみたい。でもダメだ。

「前にも言ったろ?一時の感情で大きく変わる事もあるんだよ。僕はそういうのちゃんとしたいの!」

「またそれか……妾は何千年待てば良いのじゃ……」

 珍しく少し落ち込んだ様子のコヨミ。なんだよ、らしくないな。

 僕は仕方ないないなと落ち込むコヨミの頭をそっと撫でる。

「なんじゃ、今日は優しいのう……心はぽかぽかするのじゃ……」

 ふにゃっと顔がほころんだコヨミは僕の胸に顔をうずめて幸せそうにつぶやく。

「柄にもなく落ち込んだ感じだされると僕も気になるんだよ」

「そうか……たまには落ち込んでみるもんじゃな、アルキは優しいからのう、このままずっとこうしていたいのう……」

 しばらくコヨミの体温を感じながら頭をなでる。たまにピクリと動く狐の耳がとても愛くるしいと思ってしまっう、たまにはこんなのも……

――ん?

「コヨミ!どこに触ろうとしてんだ!?」

「な、なんじゃ!そういう雰囲気じゃったじゃろ!」

 ゆっくりと自分の下半身に伸びる手を僕は見逃さなかった。

「いや!このまま綺麗に終わる感じだったよ!」

「生殺しじゃあ!先っぽだけでも良いんじゃぞ!?」

「女のセリフじゃないからそれ!」

 結局綺麗には終わらない。しかしこんなやりとりも実は楽しかったりするんだ。

 最初来た時よりは確実に活気がある”弱者の庭”、これからどう変わっていくのか…少しだけ分かるような気がする。
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