弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜

自来也

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第2話 淫乱千年狐、コヨミ・テンコウ

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「じゃ、じゃあな。頑張れよ」

 ――ウソでしょ?

 ジークはそそくさと自分の部屋へ戻り、カチャリと鍵をかけた。

 直後、ドタドタと軽快な足音が廊下に響く。走り寄ってくる和装姿の小柄な少女。
可愛らしい狐耳に、ふわふわの尻尾……いや、尻尾の数が多い。多すぎる。そして、大きく開いた胸元から見える決して大きくは無いが小さくも無い胸、はだけた着物から覗く色白の足。

 ――全体的に色気がうるさい。

 そして口から出る言葉は――

「さぁ! どこでするのじゃ? ここでも良いぞ!」

「いや、しないよ?初対面で急に何言い出すの?」

「初対面じゃと?もう出会っておるではないか。 そうか…ふむ……仕方ない。まずは自己紹介といこうかの。ここでは何じゃし、妾の部屋で――」

「下にリビングあったでしょ。そこで良いよ」

 ナチュラルに部屋に連れ込まれるわけにはいかない。何されるか分かったもんじゃない。

「……仕方ないのう」

 不満げに唇を尖らせながらも、少女はアルキの腕にぴたっと絡みついて階段を降りる。しっぽがふわふわと揺れ、時折ふにっと身体が当たる。

 柔らかい。が、ここで意識したら負けだ。平常心は美徳だぞ。

 やがてリビングにたどり着き、向かい合わせに椅子へと腰かける。

「それでは、改めて自己紹介じゃ! 妾の名はコヨミ・テンコウ。千年を生きた九尾の狐にして、力と欲望と好奇心の化身じゃ!」

 ポーズまでつけて名乗るコヨミ。しっぽがばふっ!と音を立てて一斉に広がった。まるで花が咲いたようだ。

「僕はアルキ。色々あって……まあ、管理人を押し付けられた人間だよ」

「ほう! 管理人とは素晴らしいのう! 妾の欲望の管理も仕事のうちじゃな?」

「そんなの管理対象に含まれてるわけないでしょ……というか、なんでここに来たの?コヨミは」

 コヨミはしっぽをくるりと前に巻き、どこか遠くを見るような目をした。

「――簡単に言えば、繁殖じゃ」

「……繁殖?」

「うむ。妾の種族、千年狐はの。数百年に一度、発情期がくるのじゃ。といっても……妾はちと、度が過ぎた」

 しれっと言うコヨミだが…少し寂しそうだな…。

「妾は性欲が強くてのう…発情期になると、もう、誰彼構わずちょっかいを出してしまうんじゃよ。年齢も性別も立場も関係ない。あれは……まことに業の深い時間であった……」

 遠い目で呟きながら、コヨミは尾をむぎゅっと抱きしめた。

「妾の里も流石に困り果ててのう…流石に他種族はやりすぎたのじゃ。討伐隊が組まれて妾を討伐又は封印するとまで言い出した」

「え、それってどんだけ…?」

「まぁ未遂じゃがな。種付けまでは行っておらん。種付けまでのお遊びで相手が失神してしまってのう。他種族含め未遂が2876件じゃな。そもそも妾は一度しか種付けの経験が無いからの、ほぼ処女じゃ」

 語尾を跳ねさせ、コヨミは悪びれもせず笑った。いや、笑えない。そんなの災害に近いじゃないか。そして処女ではねぇだろ…。

「……で、村の掟で“淫乱すぎる者は山を下れ”という項があってな?流石に里も妾を庇いきれないのもあって追放されたのじゃ。その後はどこに行っても受け入れて貰えなくてのう…気がついたらここにいたんじゃよ」

「それ、誰が想定して作った掟なんだよ……」

「古の狐じゃな。たぶん妾のひいひいばあ様あたり。血筋じゃのう」

 コヨミはけらけらと楽しそうに笑い、こちらをじっと見つめてくる。

「して、お主。妾のような淫らな狐が嫌いかえ?」

「…………」

 目が合うと、ふにゃっと笑うコヨミ。視線が胸元へ自然に吸い寄せられるのは、本能のせいだ。たぶん。

 でも、今ならわかる。

 ――この屋敷は、世間からはみ出した“最強たちの吹き溜まり”なんだ。

「……ま、嫌いじゃないかな。困るけど」

「ふふ、困らせるのは得意なのじゃ」

 あれ?ちょっと気になる事が…。

「あのさ、その発情期ってもう終わってるんじゃないの?」

「終わっておるぞ?妾は普段からこんな感じじゃ。いつでもウェルカムじゃぞ」

「まぁ宜しくなコヨミ、交尾はしないけどたまに話し相手くらいにはなるよ」

「残念じゃが…まぁ良いのじゃ!ここの住人は基本外に出ないからのう。妾もじゃがな。妾が欲しくなったらいつでも相手になるのじゃ」

「はいはい…とりあえずお茶でも淹れるか。なんか道具揃ってるし」

「そうじゃのう、たまには良かろう」

 コヨミは悪いヤツじゃない、さっきの話をする時少し寂しそうだったのは何か心残りがあったりするのかな?

 その後たわいもない話をして僕は千年狐との親睦を深めたのだった。
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