弱者の庭〜引きこもり最強種専用施設の管理人始めました〜

自来也

文字の大きさ
13 / 69

第12話 ゼファルドの人間愛と風呂に入らぬ勇者

しおりを挟む
「ゼファルドー、パン配り終わったよー」

「お疲れ様、美味しいパンだったね。みんなも喜んだだろう。そろそろかと思ってお茶淹れておいたよ」

「思ったよりね、やっぱり食事に関しては不満があるみたい。じゃあお邪魔するよ」

 この弱者の庭に来た時以来のゼファルドの部屋、改めて見ると本棚には人間の絵本が並んでおり木彫りの人形などが窓際に飾られている。

 そしてガラスケースの中には布製の片目が取れかけたボロボロのぬいぐるみ、穴の開いたナベ、謎の布切れなどが飾られていた。

「おや?気になるかい?それは人間の物なのさ、ここに来る前に集めていてね、魔王城を出る時に持ってきたんだ。全部は持って来られなかったけどね」

 なんだろう…人間と友好関係を築きたい優しい魔王というか、人間マニアなんじゃないか?

「ゼファルはなんでそんなに人間が好きなの?」

「前にも話した通りだけどさ、僕は人間の不完全さに憧れているんだよ」

「なんかイメージできないんだよね、その不完全さって言うのが、僕が人間ってのもあるけど」

「僕はね、人間の奇跡のような輝きを何度も見たんだよ。どれだけ力の差があっても立ち向かう勇気とか、絶望的な状況でも仲間を信じる心とか、自分を犠牲にして誰かを守る行動とかをね」

「魔族にはないの?そういうの」

「まぁ魔族と人間の死生観は違うからね、弱肉強食が基本さ。それに人間はたった数十年の生涯の中で素晴らしい音楽を作ったり芸術的な絵を描いたり、恋をして…子孫を作って愛されながら死んでいく。そんな一生が僕からすれば永遠よりも美しい一瞬なのさ」

「なるほどねぇ……なんとなくわかったけど…それなら人間の町に出て仲良くすれば…」

 ここまで言って気付く、きっとゼファルドは魔族から追放された後、憧れの人間に会いに行っているはずだ。しかしここにいるって事は……。

「そう上手くはいかないよ、魔族は人間の敵だしね、急に僕なんかが目の前に現れたら驚いて……拒絶されると思う……」

 会いに行ったわけではないのか、最初から諦めて……しかしそれは正解なのかも知れない。無駄に傷付くことなんてもうないんだ。

「それよりここの生活はどうだい?特に仕事もないだろうけど」

「まぁ無いね、みんな本当に部屋から出てこないし…でも最近ラヴィとはよく遊ぶんだよね」

「あのラヴィと……? アルキは人間の男なのにすごいね!」

「まぁ色々あってね、起きてる時は大体僕の部屋にいるよ」

「あの真竜がねぇ…変われば変わるものだね」

「他の住人とは全くだけどね」

「みんな長い間ここにいるからね、自分のペースが染み付いているのさ。僕も含めてね」

 まぁ否定はしないけど…。

「そういえばゼファルドって風呂は入るの?」

「急だね、まぁ入るよ。結構好きだからね。どうして?」

「いや……ミレーユが全く風呂に入ってないらしくてさ。大きなお世話だと思うんだけど」

「そうなんだ、女の子なんだし何かキッカケでもあれば入るんじゃないかな」

「キッカケねぇ…」

 別に臭いから入れというだけじゃない、不潔な環境で病気にでもなったら目も当てられない。

 これもまた大きなお世話なのだろうか。

「じゃあそろそろ戻るよ。あ、そういえば銀貨五枚ってどのくらいの価値なの?」

「銀貨かい?確か銅貨が十枚で銀貨一枚だったハズだけど…どのくらいの価値かと言われると分からないなぁ」

「なるほど、それを聞けただけで十分だよ。お茶ご馳走様」

「うん、また来てね。次はアルキの話も聞かせてくれたら嬉しいな」

「僕の?大した話はないけど…まあわかったよ」

 ゼファルに見送られ部屋を出る。

 しかし風呂に入るキッカケか…何かあったら良いんだけど。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極限効率の掃除屋 ――レベル15、物理だけで理を解体する――

銀雪 華音
ファンタジー
「レベル15か? ゴミだな」 世界は男を笑い、男は世界を「解体」した。 魔力も才能も持たず、万年レベル15で停滞する掃除屋、トワ。 彼が十年の歳月を費やして辿り着いたのは、魔法という神秘を物理現象へと引きずり下ろす、狂気的なまでの**『極限効率』**だった。 一万回の反復が生み出す、予備動作ゼロの打撃。 構造の隙間を分子レベルで突く、不可視の解体。 彼にとって、レベル100超えの魔物も、神の加護を受けた聖騎士も、ただの「非効率な肉の塊」に過ぎない。 「レベルは恩恵じゃない……。人類を飼い慣らすための『制限(リミッター)』だ」 暴かれる世界の嘘。動き出すシステムの簒奪者。 管理者が定めた数値(レベル)という鎖を、たった一振りのナイフで叩き切る。 これは、最弱の掃除屋が「論理」という名の剣で、世界の理(バグ)を修正する物語。気になる方は読んでみてください。 ※アルファポリスで先行で公開されます。

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平
ファンタジー
新米動物看護師の飯野あかりは、車にひかれそうになった猫を助けて死んでしまう。異世界に転生したあかりは、動物とお話ができる力を授かった。動物とお話ができる力で霊獣やドラゴンを助けてお友達になり、冒険の旅に出た。ハンサムだけど弱虫な勇者アスランと、カッコいいけどうさん臭い魔法使いグリフも仲間に加わり旅を続ける。小説家になろうさまにもあげています。

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

処理中です...