運命を知らないアルファ

riiko

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本編

8、オメガの正体 

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 問題の彼は、真山正樹まやままさきという情報を入手した。ついに気になりすぎて調べてしまった。

 そしてそのオメガは、俺を全く感知してないように思えた。

 だとしたら、運命云々というあの忌々しいアルファとオメガの都市伝説ではなさそうだ。ホッとした反面、なぜか寂しさを覚えた。

 そもそも運命だったらあの時、俺は自分を抑えられずに彼を犯していただろう。そんな動物的な人権を無視した行動をしていたら、自分を許せないだろうし、自分勝手な意見だが、そうなった時フェロモンで誘った相手を憎んだと思う。

 だから、それはそれで良かった。

 だがなんだ、この気持ちは。彼のヒートを見て一目惚れでもしたか? とんだ変態じゃないか、しかもオメガの男。

 彼はオメガ性をひけらかしたり、それで男を誘うことをしない人種に見えた。目の前にアルファがいたのに耐えていた姿は、今思えば凄い精神力だ。

 オメガ達はアルファの俺が目の前にいると、縋るように体の関係を強要してくる。それがオメガの特徴なのだと思っていた、それにヒート中は何も考えずに目の前の相手を誘う生き物だ。たとえベータ相手だろうとも同じだろう、自分から発情にあらがって遠ざけようとするオメガに初めて会った。

 珍しいから?

 自分に性欲を求めなかったから、だから気になるのか? 恋とかそんなんじゃなくて友人にでもなりたいと思っているのか、俺は。たしかに強靭な精神力を持つ男は嫌いじゃない、快楽にあらがえないのがアルファとオメガなのだ、それに従わないなんて俺以外で初めてみた。しかも俺とは違い、薬無しで本能を抑えた。

 アルファの友人達は、オメガと見たら性欲を抑えず楽しんでいる。俺はどちらかと言うとそんな人種が嫌だった、アルファは優秀だが唯一の欠点は性欲に弱いとこ。

 それでも肉欲に支配されようとも結果は出せるからいいのだが、オメガは違う。肉欲に支配されればそれまでだ。可愛そうといえばそうだが、自分の性別のせいにして何もやらない奴らは虫唾が走るから、やはり好きにはなれない。

 あれからしばらくオメガの彼……正樹を観察していたが、やはり普通のオメガとは違うようだった。

 性別に支配されず自分を持っている。アルファに物怖じせず、友人として過ごしている。いつも一緒にいるアルファは正樹を恋愛対象として見ていたみたいだったが、正樹はアルファもベータも分け隔てなくただの男友達として接していた、堂々としていて男らしい。

 だが、こうも俺を意識されないのも辛い。

 支配したい、そんなアルファみたいな一面が自分にもあったことに驚いた。
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