運命を知らないアルファ

riiko

文字の大きさ
14 / 67
本編

14、埋まるピース

しおりを挟む

 流石に正樹の初めてが保健室なんて可愛そうだ。

 そう思い、理性を総動員して迎えの車を寄越し、誰にも見られないように正樹を車に乗せて家に向かった。

 正樹は俺の香りに当てられて、意識を上手く保てないようだった。可哀想に、フェロモンにのまれないようにと必死にあらがう姿を見ていたけど、でも今は流されて欲しい。抱き抱えられている正樹は、呼吸を苦しそうにして、何かにずっと耐えているようだった。

 体は正直で、可愛い香りをずっと俺に向けているし、シャツの下の乳首は立ち上がり、ズボンは本当にキツそうだった。でも車の中では、俺は正樹を抱えるだけで決定的な何かを与えなかった。

 今少しでも始めてしまったら、抑えられない。

 家に着くとまっさきに俺の部屋へと向かった。ちょうど両親は海外出張中で家にいないので煩わしいこともなかったが、使用人には俺のつがいのヒートだと伝えた。皆驚いている、それはそうだろう、両親すらも俺がオメガと付き合うことはもう無理だろうと諦めていたのだから。

 使用人たちは、驚いていても嬉しそうだった。

「正樹、大丈夫か? よく耐えたな、もう無理に我慢する必要はない」
「西条、西条っ」
「どうした?」
「辛い、からだ、あついっ」

 先ほどまでは必死に耐えていて、まだ少し理性を感じたが、二人きりになった途端、正樹のフェロモンの香りに包まれた。色っぽく誘う目に、俺の欲望もはち切れんばかりに限界を迎えていた。

 すぐにでもれたい

「そんな目で見られたらたまらないな。ほら服を脱がすから、そのまま全てを俺に委ねればいい。そうすれば体の熱さも……」
「西条に全て任せるっ!! お願いっ早くっ」

 正樹は自分の意思では会話が成り立たなくなっているオメガと化した。ただひたすらに俺を求め、俺にすがりつく。そんなオメガを煩わしいと今まで思っていたのが嘘のように、俺を求める目の前のオメガが可愛くて仕方なかった。

 正樹から俺に触ってくる、オメガ性を感じても嫌悪など微塵も感じない。むしろ俺の心も体も喜びしかない。こいつは俺のつがいだ!!

「あっ、あついっ、西条っ、ふあっ」
「ふふっ、正樹っ。そんなにくっついたら服が脱がせられないぞ、ほら、離して?」
「あっ、ごめっ、」
「キス、していいか?」
「えっ、きす?」

 俺は正樹の顔を手で包み込み、目をまっすぐ見た。欲望に濡れた瞳は少し潤んでいたので、そのまま顔を近づけて唇に触れるところで、正樹が不意に、顔をそらした、そして涙を流した。

「それ、は……だめ」
「どうして?」
「はあっ、はあっ、キスは好きな人とじゃなきゃ……」

 ヒートに入っているのにそこだけは、必死に抵抗をしている。

 俺のこと好きじゃないのは、まぁわかる。

 正樹にとっては今日いきなり初対面を果たして、しかもヒート中だ。いきなり俺を好きになれという方がおかしい。でも、これはおかしくない。だって、どう考えても正樹は俺のつがいになるべきオメガだ。

 どうしよう……ここで俺が正樹を好きと告白して、このまま引かれでもしたら。今から他のアルファとヒートを収めるとでも言われたら俺は辛い。それに正樹の了承を取れなくなった場合、無理やりにでも関係を結んだらあの櫻井と一緒になってしまう。

 告白して正樹と付き合って、順番を踏んできちんと初夜を迎えたかったけど、今はそれどころじゃない。正樹がヒートの相手としてだけでも俺を選んでくれた、このチャンスを逃すわけにはいかない!!

 今はただの性欲処理の為のアルファ、正樹にとって俺はその場にいた、ただの都合のいいアルファ。

 悔しいけど、それでも正樹と接点が持てただけでも満足しないとだめだ。俺、今はこれ以上望むな! 正樹が体だけでも俺を受け入れてくれたならそれでいい! 俺の思いは正樹には関係ない。俺は棒、俺は棒、正樹に都合のいい肉棒。呪文のように言い聞かせて冷静さを保った。

「正樹は俺が嫌い?」
「すき」

 そこは驚きの即答だった。

 好き、なのか? 

 言われた瞬間自分の顔が絶対不自然なくらいにやけたと思う。単純に嬉しかった。これはオメガのヒートが言わせている? それでもいい、あんなに嫌だと思った本能からの欲望、それすらももうどうでもいい。正樹が俺を好きだというのがオメガからくる言葉だろうと、今はそれでいい。

「じゃあ、キスしていいよね?」
「だめ」
「どうして、好きならキスしたい」
「ダメ、しないで。そんなことより、西条っ、お願いはやく俺にそれをれて」

 キスはダメだと言いながらも、ズボンの中で窮屈そうにしている俺の愚息を撫でてくる。な、な、なんてエロ可愛い行動をするんだ!?

 肉欲に支配された頭ではコレをれられることしか考えられないのだろう、キスはまた発情が明けてから了承をとればいいか!

「正樹、煽るな、じゃあ遠慮なく抱くから」

 いいよね? いいんだよね? やっちゃうぞ!
しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【本編完結済】巣作り出来ないΩくん

こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。 悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。 心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。 自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。 残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。 この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる―― そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。 亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、 それでも生きてしまうΩの物語。 痛くて、残酷なラブストーリー。

アルファな彼とオメガな僕。

スメラギ
BL
  ヒエラルキー最上位である特別なアルファの運命であるオメガとそのアルファのお話。  

36.8℃

月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。 ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。 近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。 制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。 転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。 36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。 香りと距離、運命、そして選択の物語。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

処理中です...