50 / 67
本編
50、ピロートーク
しおりを挟む「お前はバカだ」
「そうだね、俺は正樹相手だとバカになるらしい」
またバカって言われた。嬉しいなぁ。
「せっかく、運命から解放してあげられたのに」
「うん、でも見捨てないでくれてありがとう。櫻井のことは正直驚いたし、裏切られた感は半端なかったけど」
そこは和樹さんも心配していたし、今度きちんとあまり人に流されるなと教育をしなければ。
「あっ!! 櫻井はどうした? あいつを拉致しただろ!」
「番になったばかりの男の前で、前の男の話?」
俺は正樹の横に寝転がり、後ろから抱きかかえて耳もとで話した。もうずっとくっついていたいんだもん!
「前のって、櫻井とは何もない。司が運命を知ったら、俺は他のアルファにあてがわれるって思っていたから。だから運命に気づかれる前に、せめて知っているアルファの番にしてもらおうと思って協力してもらっていただけだから」
「それについては、本当に俺がバカだった。今更謝っても遅いけど、今まで正樹を沢山傷つけて本当にごめん。まさか正樹が運命だなんて思っていなくて、だから正樹が運命を羨ましいって言った時、俺焦ったんだ。まだ出会ってもない運命のアルファに正樹を取られるって」
正樹がゴロンとこっちを向いてきた。
「なんだよ、それ? どうしてそうなるんだよ!」
「正樹は運命に憧れていたんだろ? 入江達の出会いが素敵だなんて言ったじゃないか、俺との出会いだって奇跡的なものだったのに!」
「お前、子供か!? そんな理由で」
「俺にとっては、人生最大の問題だよ。正樹以外もう考えられなかったんだ! たとえ俺の前に運命の番が現れても正樹以外を番にしない、そんなオメガには他のアルファの番を見つければ、俺は運命に惑わされず正樹だけを愛することを信じてもらえると思って、あの時正樹にそう言ったんだ」
正樹が呆然としている。
俺も正樹に負けず劣らずマイナス思考なところがあったようだ、お互いに好きすぎて自信がないところは似た者同士みたい、今回やっぱり番になっておいて良かった。本当は次の発情期でもいいと思っていたんだけど、和樹さんも言った通り、今回のことで正樹を野放しにしとくのは恐ろしいとも感じたぞ。
「お前、世の中のオメガをバカにしすぎだろ」
「うん。それは否定しない、俺は正樹さえいればアルファだろうがオメガだろうが、他は正直どうでもいいから」
「はぁ――、ほんとお前バカ」
「うん、ほんとごめん」
「でもさ、正樹も罪な男だよね? 櫻井の気持ち知っていて利用したんでしょ?」
そこは正樹の悪いところだと思う、こいつは無垢で魔性だ。櫻井は哀れだともちょっとだけ同情した。
「うっ、でも番になっても友達みたいに楽しくやっていける相手だと思ったから。俺は司に愛されないなら、これから誰かを好きになるとは思えなかったし、櫻井いい奴だったし」
「まさか、そんな斜め上をいった考えだったとは。百合子さんから連絡もらった時、いったい誰といるのか全く予想つかなかった。あの時の俺の調査能力を褒めて欲しい」
「ごめんなさい」
素直に謝るところも可愛い。あまり虐めすぎるのも良くないか、俺も大概だ、正樹には甘くなってしまう。
「それにしても熱烈な愛の言葉だよね。そんなに俺のこと好きだったのに、我慢させていてごめんね、俺も正樹が好きだよ」
櫻井のことは、もう気に留めて欲しくなかったから、もう大丈夫だよという気持ちを込めて言った。でも心配ないな、正樹は俺の声に反応して、うなじからはまたいい香りがしてきた。番ってこういうこともわかるんだな、嬉しくてたまらない。
「ふふっ感じている? 可愛い。櫻井なら大丈夫。俺が殴ったから手当の為に連れ出しただけだ、部下がきちんと謝罪しているはず。それに二度と正樹に近づくなってお願いしていると思う」
157
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【本編完結済】巣作り出来ないΩくん
こうらい ゆあ
BL
発情期事故で初恋の人とは番になれた。番になったはずなのに、彼は僕を愛してはくれない。
悲しくて寂しい日々もある日終わりを告げる。
心も体も壊れた僕を助けてくれたのは、『運命の番』だと言う彼で…
うそつきΩのとりかえ話譚
沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。
舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。
【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜
みやの
BL
ーー……俺は、本能に殺されたかった。
自分で選び、番になった恋人を事故で亡くしたオメガ・要。
残されたのは、抜け殻みたいな体と、二度と戻らない日々への悔いだけだった。
この世界には、生涯に一度だけ「本当の番」がいる――
そう信じられていても、要はもう「運命」なんて言葉を信じることができない。
亡くした番の記憶と、本能が求める現在のあいだで引き裂かれながら、
それでも生きてしまうΩの物語。
痛くて、残酷なラブストーリー。
36.8℃
月波結
BL
高校2年生、音寧は繊細なΩ。幼馴染の秀一郎は文武両道のα。
ふたりは「番候補」として婚約を控えながら、音寧のフェロモンの影響で距離を保たなければならない。
近づけば香りが溢れ、ふたりの感情が揺れる。音寧のフェロモンは、バニラビーンズの甘い香りに例えられ、『運命の番』と言われる秀一郎の身体はそれに強く反応してしまう。
制度、家族、将来——すべてがふたりを結びつけようとする一方で、薬で抑えた想いは、触れられない手の間をすり抜けていく。
転校生の肇くんとの友情、婚約者候補としての葛藤、そして「待ってる」の一言が、ふたりの未来を静かに照らす。
36.8℃の微熱が続く日々の中で、ふたりは“運命”を選び取ることができるのか。
香りと距離、運命、そして選択の物語。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる