運命を知らないアルファ

riiko

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本編

50、ピロートーク

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「お前はバカだ」
「そうだね、俺は正樹相手だとバカになるらしい」

 またバカって言われた。嬉しいなぁ。

「せっかく、運命から解放してあげられたのに」
「うん、でも見捨てないでくれてありがとう。櫻井のことは正直驚いたし、裏切られた感は半端なかったけど」

 そこは和樹さんも心配していたし、今度きちんとあまり人に流されるなと教育をしなければ。

「あっ!! 櫻井はどうした? あいつを拉致しただろ!」
つがいになったばかりの男の前で、前の男の話?」

 俺は正樹の横に寝転がり、後ろから抱きかかえて耳もとで話した。もうずっとくっついていたいんだもん!

「前のって、櫻井とは何もない。司が運命を知ったら、俺は他のアルファにあてがわれるって思っていたから。だから運命に気づかれる前に、せめて知っているアルファのつがいにしてもらおうと思って協力してもらっていただけだから」
「それについては、本当に俺がバカだった。今更謝っても遅いけど、今まで正樹を沢山傷つけて本当にごめん。まさか正樹が運命だなんて思っていなくて、だから正樹が運命を羨ましいって言った時、俺焦ったんだ。まだ出会ってもない運命のアルファに正樹を取られるって」

 正樹がゴロンとこっちを向いてきた。

「なんだよ、それ? どうしてそうなるんだよ!」
「正樹は運命に憧れていたんだろ? 入江達の出会いが素敵だなんて言ったじゃないか、俺との出会いだって奇跡的なものだったのに!」
「お前、子供か!? そんな理由で」
「俺にとっては、人生最大の問題だよ。正樹以外もう考えられなかったんだ! たとえ俺の前に運命のつがいが現れても正樹以外をつがいにしない、そんなオメガには他のアルファのつがいを見つければ、俺は運命に惑わされず正樹だけを愛することを信じてもらえると思って、あの時正樹にそう言ったんだ」

 正樹が呆然としている。

 俺も正樹に負けず劣らずマイナス思考なところがあったようだ、お互いに好きすぎて自信がないところは似た者同士みたい、今回やっぱりつがいになっておいて良かった。本当は次の発情期でもいいと思っていたんだけど、和樹さんも言った通り、今回のことで正樹を野放しにしとくのは恐ろしいとも感じたぞ。

「お前、世の中のオメガをバカにしすぎだろ」
「うん。それは否定しない、俺は正樹さえいればアルファだろうがオメガだろうが、他は正直どうでもいいから」
「はぁ――、ほんとお前バカ」
「うん、ほんとごめん」
「でもさ、正樹も罪な男だよね? 櫻井の気持ち知っていて利用したんでしょ?」

 そこは正樹の悪いところだと思う、こいつは無垢で魔性だ。櫻井は哀れだともちょっとだけ同情した。

「うっ、でもつがいになっても友達みたいに楽しくやっていける相手だと思ったから。俺は司に愛されないなら、これから誰かを好きになるとは思えなかったし、櫻井いい奴だったし」
「まさか、そんな斜め上をいった考えだったとは。百合子さんから連絡もらった時、いったい誰といるのか全く予想つかなかった。あの時の俺の調査能力を褒めて欲しい」
「ごめんなさい」

 素直に謝るところも可愛い。あまり虐めすぎるのも良くないか、俺も大概だ、正樹には甘くなってしまう。

「それにしても熱烈な愛の言葉だよね。そんなに俺のこと好きだったのに、我慢させていてごめんね、俺も正樹が好きだよ」

 櫻井のことは、もう気に留めて欲しくなかったから、もう大丈夫だよという気持ちを込めて言った。でも心配ないな、正樹は俺の声に反応して、うなじからはまたいい香りがしてきた。つがいってこういうこともわかるんだな、嬉しくてたまらない。

「ふふっ感じている? 可愛い。櫻井なら大丈夫。俺が殴ったから手当の為に連れ出しただけだ、部下がきちんと謝罪しているはず。それに二度と正樹に近づくなってお願いしていると思う」
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