運命を知らないアルファ

riiko

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番外編

15、子供のいる日常

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 今日も我が家は運動会だ、いや普通のただの休日だが、慌ただしい。子供たちが走り回っていてやはり運動会のようだった。

「りん!! こっち」
「れん、まってよぉ。うおっ、パパ邪魔!!」
「お、おお。すまん」

 鬼ごっこをしているようだ、双子の一人、りんが俺に突進してきたくせに、邪魔扱いされた。切ない、それを見て笑う正樹。

「ぶはっ、お前ら、パパも遊びにいれてやれよな」
「正樹――ぃ、俺は正樹がかまってくれたらそれでいい」

 俺は正樹に抱き着く、でも慎重に、お腹には俺の三人目のジュニアが入っているからな。

 これは夢じゃない。

 俺たちは大学生の時に結婚して、卒業まじかに正樹は双子を出産してくれた。そして、その子供たちは生れた時からずっとワンパクでとにかく元気だった。二人仲良く遊んでくれるから、俺は嫁との時間も取れてありがたい。

 驚きだが、大学時代うたたねをしていた時に見た夢がそのまま叶った。

 アルファの能力を俺は最大限に発揮し、夢を現実にしてやったんだ。それを言ったら正樹は、呆れていた。都合のいいこと言うなって、でも夢を見て子供が三人できるってことまで、あの時教えてあげたのに、軽くあしらわれて忘れられていたみたいだった。切ない。

 俺やはり正樹のことになると、凄い能力を発揮してしまうらしい。自分の正樹に特化した、豊かな才能が怖い!!

「もう、そんな時間ないだろ。お前も手伝えよ、今日櫻井一家が来るんだからな」
「ああ、そうだったな、でも料理もできているし、あとは正樹を可愛がって待てばいいだろ?」
「バカか!! りん蓮 れんが歩くたびに落としていくおもちゃを拾っとけよ」

 そんなことをして、片付けても片付けても汚れていくリビングを何とか見栄えのいいようにしていると、家のチャイムが鳴った。

「あっ、きた!」
「ママ――僕たちがお迎えする」
「おお、ちゃんと画像見て外にいる人確認してからにしろよ」
「「は――い!!」」

 元気がいい双子だ。そして頭もいい、さすが俺の子供。

「そら―! こっちこっち」
「そらは、僕とこっちぃ!」
りん蓮 れん、みんなで遊ぼうね」
「「うん!!」」

 櫻井の息子のそら、うちの子より四歳年上の小学生の可愛いお兄ちゃんだ、双子はとにかくそらが好きでたまらないから、頻繁に遊びに連れてきてもらっている、櫻井申し訳ない。

「よぉ、櫻井、いつも悪いな」
そらも双子に会えるのを楽しみにしていたからな、これ土産」
「おお、さんきゅ」

 櫻井は高校時代の友人だ、いろいろあったが今では家族ぐるみで仲良くしている。俺たちと同じ二十五歳だが、奥さんは五歳年上の超絶美人。といってもそれは世間がそういうだけで、俺にとっては正樹が超絶チョロ美人で可愛いウブな嫁だがな!

 そらは櫻井が十八歳の時に生まれた子。そらもすでに美しい顔をしている、男の子だけど、嫁側の実家の顔立ちに似ていてこの子も綺麗だった。

「櫻井!! 暑い中ありがと、お前のとこも大変なのに悪いな」
「いや、妻も空にかまってあげられなくて、頻繁に空を楽しませてくれている西条家には頭上がらないって、正樹に感謝していたぞ」
「ああ、奥さん今日はどうしたの、大丈夫?」

 そうだ、なぜ櫻井と息子の二人だけなんだ? 正樹は櫻井の嫁と仲良しだから、会うのを楽しみにしていたのに。

「ちょっとお腹が大きくなり過ぎて、流石に子供三人走り回る中は危ないかなって、置いてきた。義理母が今度こそ出産は実家でって言うから、まぁ親孝行だと思って、しばらく実家暮らししているんだよ、寂しいけどな。お義母さんがずっとそばにいてくれる方が俺も安心だし、空と二人生活も悪くないわ」
「お前、大人になったな。片時も離れたくな――いって言っていたのが懐かしいわ」

 正樹がいっちょまえに櫻井をからかっている。

「ま、今でも離れないけどな。仕事終わったら、毎晩あっちの家に行っているし、毎日ディープなキスしまくりだ」
「ぶはっ、お前は王子顔のくせして、なんて破廉恥なことを言いやがる!!」

 あっ、正樹がノックアウトされた。バカだなぁ、お前いくつになっても純粋で可愛くて初心でたまらないわ。櫻井も俺の嫁をいじるな。

「櫻井、その辺にしとけ。俺の嫁をからかうな」
「いや、真実を話しただけだろ?」

 笑っていると子供たちが来た。

「ママ! そらに、ジュースあげたい!」
「ママぁ、僕はそらに、お菓子あげる」
「はいはい、ほら、みんなこっちおいで、おやつにしような」

 リビングの大きなソファに、空を真ん中に、りん蓮 れんが座る。

「はい、あ――ん」
「そらぁ、こっちもあ――、あーん」
「二人とも、ありがとうね。美味しいね!」

 空はできた子だ、二人の差し出すクッキーを一口ずつ交互に食べていた。

「なんか、櫻井、悪いな」
「いや、面白い光景だな、うちの子モテモテだ」

 俺が櫻井に申し訳なく謝った、うちの双子は櫻井の息子のそらが好きすぎて困る。

 しかも二人して毎回空を取り合いしている、というか空が大人で取り合いと言うより、平等に扱うから二人で取り合う前に諭される。そして空は一緒に愛でる生き物だと思っているらしい、三歳のくせにアルファの狩猟能力おそるべし、空は母型の顔に似て美しく育っている、きっと将来はスーパーモデルになるのだろうと周りから言われていたが、うちの双子がそれを許すかはどうだろうな。

「双子、司の遺伝子まるまる持っていったよな。あのそらに向ける目、司が俺を見る時の目に似ているもん、櫻井今から謝っとくわ、うちの子からそらをしっかり守れよ」
「ふはっ、親の言うセリフかよ。でもお前らの子供なら安心じゃね? ただ旦那は一人にして欲しいけどな」
「将来、兄弟の争いが怖いわ」
「大丈夫だろ、今はまだ子供だからだよ、もう少し大きくなったらまた変わるだろ。アルファとしてオメガを囲いたい本能が強いだけだ、色恋事じゃないから安心しろ」

 正樹は本気で双子の将来を気にしていた、櫻井はアルファの子供ならアルアルだって言ったが、アルアルか? あれは結構本気の目に見えるぞ。俺の子供やばくないか、心配だ。なんせ俺という前例があるからな、つがいにするためなら、どんなことでもしてしまいそうだ。親として今から教育しておくか。つがいは一人につき一人だけだとな!

 俺らもリビングで茶を飲もうと座ると、櫻井の膝にあたりまえにそらは乗ってきた。それを見て悔しそうにする俺の息子たち。

「ずるい!! ルイのくせに、そらを独り占めするなヨォ」
「ブーブー!!」

 可愛いな、ブーブー言っている。

「パパ、まさ君のクッキー美味しいの、ねっ、食べてみて。はい! あ――ん!」
「ありがとうそら。うん、美味しいな。正樹はすっかり腕を上げたな」

 双子の言うことなどまるで耳に入ってないかのように、空は父親に甘えている。櫻井はデロデロだ。いいなぁ、オメガの息子、しかも嫁似。やはりお腹の子は正樹似のオメガでお願いします!! 俺は櫻井親子を見て、天にお祈りを捧げた。

「まぁな、専業主夫 しゅふだから、そんぐらいしないと働いてくれている旦那に悪いからな」
「まさきぃ!! 好き」
「はいはい、知っているよ。来客中は控えろ、バカ」

 軽くあしらわれても、正樹が照れている顔をするのを見られるので問題ない。

「僕も、僕もママにあ――んしたい!」
「僕もする!」
「はいはい、俺もうあまり太れないんだけどな、せっかくだからパパにやってやれよ」
「「はーい」」

 出産を控えた正樹はこれ以上太るなと医者から言われている、仕方なさそうに双子が俺の膝に登ってきた。うん、相変わらず正樹の作るクッキーはうまい、そして双子もなんだかんだいっても可愛い。

 ああ、俺は幸せだな。ただ将来双子のどちらがそらつがいになれるのかは、不安しかない。

 櫻井、お前本気でそらを守れよ、それと櫻井家の腹の子からオメガの子が生まれると良いな。そしたら双子があふれることないよな、まぁ子供時代のことだから先はわからないけど、今はみんなバース関係なく楽しく過ごしているからいいか!

 そんなくだらないことを考えて、穏やかないつもの休日を過ごしていた。

 ―― fin ――
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