運命の番は姉の婚約者

riiko

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第四章 揺れる心

46 確信 ※

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 初めての発情期での性交。
 まさかここまで記憶に残らないものだとは爽は思わなかった。だが体の心地よさは覚えている。体中が痛いから、ちゃんといつも以上に激しい行為をしたということだと感じた。
 自分の体が病気のようにあざだらけ、これは暴力ではなく所有の証だった。
 隆二はやはりアルファだ。
 一週間のオメガの発情に付き合える体力を持ち合わせている。隆二は、もしかしたらラットを起こしたのかもしれない。うなじを覆う部分のネックガードの損傷が激しいが、そこは守られていた。
 首周りのキスマークの多さは、もう仕方ない。オメガとアルファが交わればそうなる。
 ネックガードは外そうと思えば外せる。なぜなら、同棲を始めた時に、隆二が爽の為に作った特注品だと言っていたから。隆二と爽の指紋ではずせる仕様になっていた。
 おもえばこんな重いプレゼントを受け取って、首に着けている時点で爽は隆二を認めていた気がする。あたりまえの日常の中で着けられていたから、その存在をすっかり忘れていたぐらい、自然に受け入れていたものだった。
 寝室で一人寝ていたところを目が覚めた爽からは、隆二が見えなかった。でも、この部屋は隆二の香りで満たされていたので、不安はない。
 ふいに寝室のドアが開くと、バスローブ姿の隆二がそこに入ってきた。
「爽?」
「りゅ、うじ……」
 なんで自宅にいるのに、バスローブ姿なんだよ、と心の中で思ったが、それだけ服を着る余裕もないくらい、ずっと爽は隆二を求めていた気がするので、そんな悪態はつけなかった。
 男前のバスローブ姿に、トキメイタなどと知られたくなくて爽は布団の中に隠れた。
「ごめんね、一人にして。お風呂の掃除していたんだ。お待たせ」
「え、んん、な、あっ」
 隆二はお待たせと言ってキスをする。
 いきなり会話もなくキスをする隆二に驚く爽だが、体の全てが隆二に従順だった。唇は好きな男にキスをされたら、勝手に開き始め自ら舌を隆二の舌に絡ませる。条件反射のように隆二の口内を追いかけた。
「ん、もうそろそろヒート終わりそうだね。ちょっとだけ味が薄まってきた気が、んん、うん、するね」
「りゅ、じ、俺もう、おわって、ちゅっ、ん」
 言葉を話そうとすると、隆二の巧みな技でしゃべる余裕がない。薄まってきたとか、キスで確認できるのだろうか。隆二は爽がまだヒートの最中だと思っているのか、断りもなく尻の中に手を入れてきた。すかさず感じてしまう。
「あうっ!」
「さっきまでお風呂でしていたから、やらかいね。すぐに満たしてあげるから」
 風呂の掃除って、そういうこと? 爽には直前の記憶が全くなかった。全
 尻に入った指がすぽっと抜けていき、バスローブを開いた隆二のものはすでに戦闘態勢だ。爽は裸で寝ていたので、隆二の受け入れ態勢は万全だった。そして隆二の息子が一直線にくる!
「え? あ、ああああ! あん、あっ、あんん」
「爽、爽、爽、何度しても、何回でも、これもう際限ないね」
「あ、あ、隆二、りゅ、おれ、もっ、おわってる、から」
 隆二ってこんなに激しかっただろうか、というくらいに抽挿を繰り返し、ベッドも爽の体も激しく揺れる。そして結合部からは水音が卑猥に響いてくる。
「う、あ、ああ」
「そんな締め付けないでよ、もっと楽しみたいのに」
 爽を一週間抱き続けていた。それなのに隆二の子種は尽きないらしい。オメガのヒートはアルファでなくては体力が持たないと聞いたことがある。隆二というアルファ、ついに、爽は全てを心から受け入れていた。以前よりもずっと、ずっと、すごく気持ちいい。
「隆二、キス、して」
「爽、あああ、もう、なんて可愛いんだろう」
 隆二の唇と、香りと、隆二の熱が体の中に入ってくる。さんざん抱かれ過ぎていたのに、爽も大概だった。全然飽きないし、もっともっとって求めてしまう。
 激しい交わりが終わると、そんな隆二との乱れた一週間が終わった。

 ***
 完全にヒートが抜けてた爽は、改めて隆二に聞いた。
「でも、隆二、どうして春の家がわかったの?」
「え、それは、爽の護衛に後をつけさせているから」
「はぁ? マジかよ」
 それじゃぁ、爽たちが加賀美の会社の前で待機していたのも知っていたのだろうか。爽は恐る恐る聞く。
「それって……、ずっと?」
「そうだよ、でもレンタカー借りてまで何してたの? ドライブ? 春君の家に着いた途端、爽が礼君に運ばれているのを護衛が確認して、慌てて僕に電話がきたんだよ。異常事態っぽい気がするって言うから、来てみたら家の前からフェロモンが漏れてて、焦ったよ」
 ということは、爽たちが何をしていたかまではわかっていないのだろうか。ただ隆二は人を使って爽のストーカーをしていただけだと信じていいのか、爽にはわからなかった。爽が無言で聞いていると、隆二は言った。
「礼君と春君が焦って爽を運んだことから、そのフェロモンは爽のだってすぐわかったし、とてもいい香りで、たまらなくなって、爽を渡してくれって礼君に頼んだのに、外で待ちぼうけさせられた」
「それは、困っていたんだろう。いきなりオメガの家にアルファが来たから。それに俺も突然ヒートになったし」
 あの二人には悪いことをしたと思った。かなり迷惑をかけたが、またあの二人のおかげで爽は無事だった。
「春君を怖がらせたのは申し訳なかった。でもおかげで爽は無事だったし、二人には感謝してもしきれないね。いきなりオメガの機能が戻って、爽も不安だったでしょ?」
 隆二には気づかれていないらしい。ヒートが来た理由。それは運命に会ったことだと。
「う、うん。でも、もうヒートも戻ったし、これからはきっといつも通り定期的に来ると思うから、隆二にも迷惑かけてごめん。仕事、休ませちゃったよね?」
 隆二は爽の頬を触って、優しく微笑む。
「婚約者のヒートなんだから、休暇申請はすんなり通ったし問題ないよ」
「婚約者……」
「そうだよ、爽は僕を受け入れた。アルファとしての僕のことも」
「……うん、そうだね。でも、よくうなじ噛まなかったね?」
 隆二はきょとんとした。
「噛んでよかったの?」
「いや、ちょっと、まだ心の準備ができていなかった、かも?」
「そうだと思った。一応、噛んでいい? って聞いたんだよ、でも爽はグダグダできっとわかっていないだろうと思って、ネックガードは外せなかった」
「そっか。俺の気持ち考えてくれてありがとう」
 爽自身、まだつがいになるまでは覚悟が決まっていなかったのかもしれない。だからこそ、隆二の優しさに感謝した。
 そうして、いつもの穏やかな二人の日常に戻っていった。
 ――俺はもう、大丈夫。
 隆二と未来を見ていくと、ヒートを過ごして確信を持てた。

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