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最終章 本当の幸せ
60 修羅場 1
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加賀美は、麗香の声を煩そうに彼女を振り返った。
麗香はその顔を見て「ひぃっ」と声を出す。恋人、婚約者でいた間に見たことない顔を見たようだった。
加賀美がアルファ特有の圧を出したのが爽にはわかった。
オメガを発情させる他に、ベータを屈服させる圧がアルファには備わっている。たとえアルファ同士でもアルファのフェロモンの違いにより相手を屈服させることができるらしい。
アルファにはそれなりに力の上下関係があるのだが、それは爽の知らない話であり、噂でしか聞いたことがない。しかし初めて目の当たりにした。
すると麗香がそこで気を失い目を閉じてしまった。
「あ、姉に何をした⁉」
「ああ、自分の弟が婚約者に抱かれる姿はさすがに見せられないから、アルファの圧をかけて意識を失わせた」
加賀美が自分のワイシャツのボタンをひとつひとつ外しながら、爽の前に来た。
「そ、そんな、くるな、来るな! お願い、こ、来ないで」
「少し、黙れっ」
あっという間に二人の距離は縮まり、爽は加賀美に唇を奪われた。
「は、ん、んんん」
運命の二人の初めてのキスは、最初から濃厚だった。爽は勢いよく唇を塞がれると、快楽が一気にやってきた。運命とのキスはとてつもない快楽。隆二とのキスしか知らない爽としては、比べるのも嫌だったけが、テクニックとかではなくて、本能に突き刺さる感じが違った。
隆二とのキスは、ただただ気持ちよくて心も体もふわふわして幸せなのに、運命とのキスは、細胞に響き渡るくらい強烈であり、心地よさを超えて爽には刺激が強すぎた。
このまま運命に抱かれてしまうのだろうか。このままの勢いならば、最悪鏡に番にされてしまうかもしれない。抱かれるだけならまだしも、絶対にこのアルファとだけは番にはなりたくなかった。
いや、どのアルファでもだめだった。爽は隆二に裏切られたとわかっていても、心はもう隆二しか求めていない。体は仕方なく発情しているが、キスだって隆二とだけ一生していきたいと、運命との口づけをしてでもそう思えてしまう。
爽の付けていたネックガードは、ヒート時にボロボロになってしまった。新しいネックガードを発注していて少し時間がかかるということだったので、それまでの代用品は一応家で着けていたが、それは隆二の指紋なしでも外れるものだった。
爽は妊娠していると思い込んでいたので、家を出るときに外してしまった。だから、今爽のうなじは相手にもしっかりと見えていた。
バカな考えで運命を避けたから、こうなった。
全ては、最初から運命と対峙しない対処法を間違えたからだ。麗香を傷つけないようにした結果、最悪な方法で今から最愛の姉を傷つける。
――そして、俺はもう一生隆二に会えない。
隆二は、爽を愛しているのかはもうわからない。嘘でもいいから隆二を信じて、番にしてもらえばよかったと、爽は今さらながら後悔をしていた。愛した瞬間、隆二のものになっていれば、こんな状況にはならかった。
――嘘でもいいから……
爽の心が嘘でなければそれでいい。たとえ全てが嘘だと聞いても、もうそんなのどうでもいい。爽が求める番は隆二しかいない。そう確信を持って言える。
しかし真実はただの親友からの頼みで、オメガを騙しただけだった。そして爽の胎にはきっと、隆二の子供はいない。発情期のとき、知らない間に避妊薬を飲まされたのだろう。アルファを相手にこんなにも妊娠しないなら、それは一つしかない。相手が望んでいないから。
加賀美のフェロモンにやられた爽は、もう体の自由が利きそうにない。キスをされて、彼の体液が口内から入り込んで、ますます体はヒートアップしていく。求めていたフェロモン、もう逆らう必要はない。
全てが最初から決まっていた。運命に出会ったオメガの宿命。
――俺は、この宿命から逃れられない。
麗香はその顔を見て「ひぃっ」と声を出す。恋人、婚約者でいた間に見たことない顔を見たようだった。
加賀美がアルファ特有の圧を出したのが爽にはわかった。
オメガを発情させる他に、ベータを屈服させる圧がアルファには備わっている。たとえアルファ同士でもアルファのフェロモンの違いにより相手を屈服させることができるらしい。
アルファにはそれなりに力の上下関係があるのだが、それは爽の知らない話であり、噂でしか聞いたことがない。しかし初めて目の当たりにした。
すると麗香がそこで気を失い目を閉じてしまった。
「あ、姉に何をした⁉」
「ああ、自分の弟が婚約者に抱かれる姿はさすがに見せられないから、アルファの圧をかけて意識を失わせた」
加賀美が自分のワイシャツのボタンをひとつひとつ外しながら、爽の前に来た。
「そ、そんな、くるな、来るな! お願い、こ、来ないで」
「少し、黙れっ」
あっという間に二人の距離は縮まり、爽は加賀美に唇を奪われた。
「は、ん、んんん」
運命の二人の初めてのキスは、最初から濃厚だった。爽は勢いよく唇を塞がれると、快楽が一気にやってきた。運命とのキスはとてつもない快楽。隆二とのキスしか知らない爽としては、比べるのも嫌だったけが、テクニックとかではなくて、本能に突き刺さる感じが違った。
隆二とのキスは、ただただ気持ちよくて心も体もふわふわして幸せなのに、運命とのキスは、細胞に響き渡るくらい強烈であり、心地よさを超えて爽には刺激が強すぎた。
このまま運命に抱かれてしまうのだろうか。このままの勢いならば、最悪鏡に番にされてしまうかもしれない。抱かれるだけならまだしも、絶対にこのアルファとだけは番にはなりたくなかった。
いや、どのアルファでもだめだった。爽は隆二に裏切られたとわかっていても、心はもう隆二しか求めていない。体は仕方なく発情しているが、キスだって隆二とだけ一生していきたいと、運命との口づけをしてでもそう思えてしまう。
爽の付けていたネックガードは、ヒート時にボロボロになってしまった。新しいネックガードを発注していて少し時間がかかるということだったので、それまでの代用品は一応家で着けていたが、それは隆二の指紋なしでも外れるものだった。
爽は妊娠していると思い込んでいたので、家を出るときに外してしまった。だから、今爽のうなじは相手にもしっかりと見えていた。
バカな考えで運命を避けたから、こうなった。
全ては、最初から運命と対峙しない対処法を間違えたからだ。麗香を傷つけないようにした結果、最悪な方法で今から最愛の姉を傷つける。
――そして、俺はもう一生隆二に会えない。
隆二は、爽を愛しているのかはもうわからない。嘘でもいいから隆二を信じて、番にしてもらえばよかったと、爽は今さらながら後悔をしていた。愛した瞬間、隆二のものになっていれば、こんな状況にはならかった。
――嘘でもいいから……
爽の心が嘘でなければそれでいい。たとえ全てが嘘だと聞いても、もうそんなのどうでもいい。爽が求める番は隆二しかいない。そう確信を持って言える。
しかし真実はただの親友からの頼みで、オメガを騙しただけだった。そして爽の胎にはきっと、隆二の子供はいない。発情期のとき、知らない間に避妊薬を飲まされたのだろう。アルファを相手にこんなにも妊娠しないなら、それは一つしかない。相手が望んでいないから。
加賀美のフェロモンにやられた爽は、もう体の自由が利きそうにない。キスをされて、彼の体液が口内から入り込んで、ますます体はヒートアップしていく。求めていたフェロモン、もう逆らう必要はない。
全てが最初から決まっていた。運命に出会ったオメガの宿命。
――俺は、この宿命から逃れられない。
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