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1章 囚われた生活
1.12 世界が変わる準備2
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「おとうさま、移動するのは僕とかあさまだけですか?」
「他の者達は罪人とそれ以外にわけ、罪人は城に連行する。だが他の者達はこの地に残すつもりだ。どうやらここの畑は香辛料を作っていると言っていた。それは高く売れる作物らしい。そのまま維持させることになるはずだ。城からもここを維持するための貴族を派遣することになるだろう。ここは当面は領主の管理下に置かれるはずだ」
「おとうさま、エリックを一緒に連れて行けませんか」
「エリックとは?」
「料理人をしている者ですが、幼いときからずっと僕に親切にしてくれた平民です」
「フルトヴィスト様、エリックはクレストリア様が喜ぶからと、いつもこの子が興味を持つ植物を取ってきてくれたいたのです。ここで育てる様になった植物もエリックが探してきてクレストリアが遊びながら料理に使えることを発見したのです。それに先日魔獣が攻めてきたときもこの子を守ろうとしてくれました。クレストリアの事を慕ってくれる平民なのです」
「そうか。だがまずはお主の処遇を決めねばならん。今は、平民達全ての事情聴取も終わっておらぬ。そなたとの接触も禁じておる。だが、エリックの事は私がなんとかしよう」
「はい、お願いします。あとは移動する時の荷物はどうすれば良いのですか」
「この部屋の物だろう。それほど多くの荷物は無いように見える。服などは馬車で移動する日数分あれば良い。貴族街に入るときに全て交換するから多くの荷物は必要ない」
「実は、厨房に沢山の木札があります。これまで研究したレシピが書かれているのです。それに、ここで調理ができるように作り出した調理器具も必要になるはずです」
「レシピだと。おぬしは料理をしておったのか」
「生きるためです。おいしい料理を作って存在価値をあげるように努力してました。カプラ、サブァ、クレフ、ワップルの香辛料を料理に生かせるように研究したレシピです」
「お主がか」
「そうです。クリストじゃなかったクレストリア様とエリックが一緒に試行錯誤していました。もちろん作業の大半はエリックがやります。ですが新しい料理の時は料理方法を指示したのはクリストです。エリックは文字は読めるようになりましたが書けません。クリストは私から文字を習ってレシピを作り料理方法をまとめたのです。他にこの寝具もクリストが発見したのですよ」
「興奮すると名前を間違うようだ。クレストリアだ。気をつけなさい」
「申し訳ありません。フルトヴィスト様」
「しかしこれは柔らかいな。なにで出来ているんだ」
「これはハルシャークが吐き出した液体を使って作ったジェルシートです」
「いろいろなことをやっていたのだな。そうやって生きる価値を見せ生きてきたのか。監禁されていたわりに体の成長も悪く無いとは思っていたが。生かす価値があると認められていたからだろうな。わかった。とりあえずエリックには今日の食事を作らせよう。価値があるなら私が責任を持って身元を引き受ける」
オルトヴィアー様は部屋を出て行った。僕はまだ体が上手く動かないようだ。もう少し寝ていなくてはならないようだ。
「クリスト、もう少し寝ていなさい。あなたが貴族になれるか心配したけれど良かったわ。それも領主一族の子供として。よかったわ。あ、クレストリアだったわね。ごめんなさい」
僕はやさしく声をかけるウルレアールの声を聞きながら眠った。
一眠りすると昼を少し過ぎた時間だったようだ。
僕が起きたことを聞いたらしくすぐにオルトヴィアー様とエリックがやって来た。エリックはスープを持っている。
「クリスト。じゃなかったクレストリア様。スープを持ってきました。食べてください」
「エリック、ありがとう」
「いえ、クレストリア様のおかげで料理を作る許可をいただけました」
「オルトヴィアー様、どうでしたか。エリックの料理は」
「うむ、エリックの作るスープも料理もおいしかった。それと父と呼ぶように言った筈だが」
「あ、そうでした。おとうさま」
そういうと、おとうさまの目に涙が溜まっているように見えた。おとうさまは軽く目をぬぐってから話を続けた。
「うむ、しっかり食べて元気になりなさい。早く元気になるのだぞ。私は残る兵士に指示を出し先に城へ向かわなければならない。さっきも言ったが2日後に移動だ。道中3日はかかるだろう。だが沢山の大人が面倒を見てくれるはずだ。言う事を聞くのだよクレストリア」
「はい。ありがとうございます」
「では、城に入る前に会えるようにするつもりだ。道中体調を崩さぬようにな」
「いってらっしゃいませ、おとうさま」
オルトヴィアー様はニコニコと笑い、「ではいってくる」と言って部屋から出て行った。
「他の者達は罪人とそれ以外にわけ、罪人は城に連行する。だが他の者達はこの地に残すつもりだ。どうやらここの畑は香辛料を作っていると言っていた。それは高く売れる作物らしい。そのまま維持させることになるはずだ。城からもここを維持するための貴族を派遣することになるだろう。ここは当面は領主の管理下に置かれるはずだ」
「おとうさま、エリックを一緒に連れて行けませんか」
「エリックとは?」
「料理人をしている者ですが、幼いときからずっと僕に親切にしてくれた平民です」
「フルトヴィスト様、エリックはクレストリア様が喜ぶからと、いつもこの子が興味を持つ植物を取ってきてくれたいたのです。ここで育てる様になった植物もエリックが探してきてクレストリアが遊びながら料理に使えることを発見したのです。それに先日魔獣が攻めてきたときもこの子を守ろうとしてくれました。クレストリアの事を慕ってくれる平民なのです」
「そうか。だがまずはお主の処遇を決めねばならん。今は、平民達全ての事情聴取も終わっておらぬ。そなたとの接触も禁じておる。だが、エリックの事は私がなんとかしよう」
「はい、お願いします。あとは移動する時の荷物はどうすれば良いのですか」
「この部屋の物だろう。それほど多くの荷物は無いように見える。服などは馬車で移動する日数分あれば良い。貴族街に入るときに全て交換するから多くの荷物は必要ない」
「実は、厨房に沢山の木札があります。これまで研究したレシピが書かれているのです。それに、ここで調理ができるように作り出した調理器具も必要になるはずです」
「レシピだと。おぬしは料理をしておったのか」
「生きるためです。おいしい料理を作って存在価値をあげるように努力してました。カプラ、サブァ、クレフ、ワップルの香辛料を料理に生かせるように研究したレシピです」
「お主がか」
「そうです。クリストじゃなかったクレストリア様とエリックが一緒に試行錯誤していました。もちろん作業の大半はエリックがやります。ですが新しい料理の時は料理方法を指示したのはクリストです。エリックは文字は読めるようになりましたが書けません。クリストは私から文字を習ってレシピを作り料理方法をまとめたのです。他にこの寝具もクリストが発見したのですよ」
「興奮すると名前を間違うようだ。クレストリアだ。気をつけなさい」
「申し訳ありません。フルトヴィスト様」
「しかしこれは柔らかいな。なにで出来ているんだ」
「これはハルシャークが吐き出した液体を使って作ったジェルシートです」
「いろいろなことをやっていたのだな。そうやって生きる価値を見せ生きてきたのか。監禁されていたわりに体の成長も悪く無いとは思っていたが。生かす価値があると認められていたからだろうな。わかった。とりあえずエリックには今日の食事を作らせよう。価値があるなら私が責任を持って身元を引き受ける」
オルトヴィアー様は部屋を出て行った。僕はまだ体が上手く動かないようだ。もう少し寝ていなくてはならないようだ。
「クリスト、もう少し寝ていなさい。あなたが貴族になれるか心配したけれど良かったわ。それも領主一族の子供として。よかったわ。あ、クレストリアだったわね。ごめんなさい」
僕はやさしく声をかけるウルレアールの声を聞きながら眠った。
一眠りすると昼を少し過ぎた時間だったようだ。
僕が起きたことを聞いたらしくすぐにオルトヴィアー様とエリックがやって来た。エリックはスープを持っている。
「クリスト。じゃなかったクレストリア様。スープを持ってきました。食べてください」
「エリック、ありがとう」
「いえ、クレストリア様のおかげで料理を作る許可をいただけました」
「オルトヴィアー様、どうでしたか。エリックの料理は」
「うむ、エリックの作るスープも料理もおいしかった。それと父と呼ぶように言った筈だが」
「あ、そうでした。おとうさま」
そういうと、おとうさまの目に涙が溜まっているように見えた。おとうさまは軽く目をぬぐってから話を続けた。
「うむ、しっかり食べて元気になりなさい。早く元気になるのだぞ。私は残る兵士に指示を出し先に城へ向かわなければならない。さっきも言ったが2日後に移動だ。道中3日はかかるだろう。だが沢山の大人が面倒を見てくれるはずだ。言う事を聞くのだよクレストリア」
「はい。ありがとうございます」
「では、城に入る前に会えるようにするつもりだ。道中体調を崩さぬようにな」
「いってらっしゃいませ、おとうさま」
オルトヴィアー様はニコニコと笑い、「ではいってくる」と言って部屋から出て行った。
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