貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

文字の大きさ
18 / 83
第2章 上級貴族の息子

2.2 城へ

しおりを挟む
 家に来て数日ゆっくりと過ごたが、その後は礼儀作法の練習をさせられた。妹弟とも食事時以外で少しづつ会話して交流した。
 そして1週間ほどが過ぎた時に城へと出発した。出発といっても隣の建物にいくだけ。ただ隣は城。馬鹿でかい。城壁を回りこみ、とことこと馬車で移動する。歩いても行けるぐらいだが、正式な用事で城に行く時は馬車で移動するそうだ。
 おとうさまは普段の通勤は使役獣で直接執務エリアに行くらしい。使役獣は貴族が通う学園でしか手に入らない。使役獣をもたない未成年の子供が城に行くのはこうした正式な訪問だけで、必ず馬車で移動する。
 城は、中世ヨーロッパタイプの大きな城だ。城壁の中は城だけではなく、幾つかの建物がある。貴族全員が集まれる大きな講堂や兵士の訓練場などいろいろな施設が併設されているのでかなり大きい。この領地の貴族は全部で500人ぐらい。一番多い時で800人ぐらいだった。今は少し減っているそうだ。
 今日は中央のお城部分に行く。建物にはいり中央部の大きなロビーを抜けて正面階段を上り、広い部屋に入る。正面に大きくていかにも王様の椅子と言う感じの椅子があった。
 暫く待っていると、領主夫妻と思われる男女が入ってきた。男はおとうさまに良く似た男性だった。
「領主様、私の息子クレストリアを連れ戻しましたのでご報告に来ました。もう1名はウルレアール。2人ともダーヴィッドに連れ去れた被害者です。さあクレストリア、挨拶をしなさい」
「クレストリア・フルトヴィストです。アンゼルム様のおかげでようやく外に出ることが叶いました。ありがとうございます」
「ウルレアール・クスケットです。シルドリックとは離別したことになっているようですので旧姓を使わせていただきます。このたびは討伐隊を派遣していただきありがとうございました。また、この領地に暫く間滞在する事をお許し頂き、感謝しております」
「うむ、クレストリアにウルレアール。我がアンゼルムだ。ダーヴィッドに暗殺された貴族は多いのだが、その中でおぬしら二人良く生き残ってくれた。クレストリアも小さいながらに懸命に生き残る道を探して努力したそうだな。魔力枯渇も乗り越えたと聞いた。我も一度だけ経験があるがその年で良く生き残ったものだ。さすが私の甥だ」
「お褒め頂きありがとうございます」
「では、2人の今後の待遇であるが、ウルレアールについては来週から始まる秋の領主会議でエルレドルア領と個別に話合い最終決定をするつもりだ」
「私事でお手を煩わせ申し訳ありません」
「状況は聞いておる通りだ。被害者であるそなたの利益を最大限に確保する形にしたいと思う。実際の交渉を行う文官を後で派遣するから良く話し合うが良い。それと我が領地の独身男性とはきちんと見合いをするようにな。そうでなければ守りきれぬ。よいな」
「御心使い感謝いたします」
「クレストリア。お主にこれを渡そう。これは領内に夫婦に子供が産まれた場合に配布する魔道具だ。貴族の多かった時代は自分達で購入していたのだが、我が領地では貴族が減り産まれた子供全てに魔道具を配る事になっている。お主は手元に魔道具が無いはずなのでこれを使いなさい」
 そう言って、魔石をいれる魔道具と大きな魔石を3つに薬を10個ほど貰った。
「これは、腰に付けておくのだ。あふれた魔力を魔石に溜め込んでいく。10歳になると学園に通う様になる。その時に魔石3つ分の魔力がなければ学園での実技が終わらぬ。中級以下ではかなり小さいうちから魔力を溜めておくのだ。学園に行くまでに残り3年しかない。もしも魔力を溜めるのが間に合わないようならば回復薬を飲んで強制的に魔力回復させながら溜めなさい」
 魔道具を使えば他人の魔力の影響の無い魔力が溜まった魔石を作る事ができるらしい。でも魔石3つは数日で溜まる気がする。ちょっと疑問に思いつつ受け取った。
「ありがとうございます。これより魔力を溜め、学園での勉学に使えるよう努力したいとおもいます」
「うむ、あとは聖礼式で魔力登録をすれば無事にこの領地の貴族見習いとなれる。おぬしの聖礼式を心待ちにしておるぞ」
 そうして、僕らは城を出て家に戻った。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@
ファンタジー
【第一章完結】映画の撮影中に死んだのか、開始五分で処刑されるキャラに転生してしまったけど死にたくなんてないし、原作主人公のメインヒロインになる幼馴染みも可愛いから渡したくないと冤罪を着せられる前に死亡フラグをへし折ることにします。 そこで転生特典スキルの『超越者』のお陰で色んなトラブルと悪名の原因となっていた問題を解決していくことになります。 【第二章】 原作の開始である学園への入学式当日、原作主人公との出会いから始まります。 原作とは違う流れに戸惑いながらも、大切な仲間たち(増えます)と共に沢山の困難に立ち向かい、解決していきます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...