貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第2章 上級貴族の息子

2.7 料理人が来る

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 ようやくエリックとエリーが我が家にやって来た。レシピが書かれた木札や自作した調理器具も一緒に到着した。香辛料やジェルシートも運ばれてきたが、それらの大半は城へ運ばれた。
 上級貴族の家の布団は綿が沢山使われた敷布団になっていた。だが長年使っていたせいかも知れないがジェルシートの方が寝心地が良い。
 家族にもジェルシートの使い方を教えて試してもらったが、布団に下に敷いたり、上に敷いたり自分で硬さを調整して使っているようだ。やはり寝心地は向上するらしい。

 到着の翌日にエリックとエリーから挨拶があった。
「坊ちゃま。このたびの私を救済、そしてお雇い頂き大変感謝しております。これからのあなた様へ料理を作らせて頂けること、栄誉に思っております。これからも精一杯頑張らせていただきます」
 あの頃よりも上等の仕事着を着たエリックが余所行きの言葉で挨拶を言ってきた。すごい。こんな丁寧な言葉が使えるとは。かなり練習したのだろう。
「エリック、よろしくね。ここで働くために丁寧な挨拶も覚えて、ここでの生活は昔ほど自由は無いと思うけどそれ以上に得るものもあると思う。苦労もあると思うけれど頑張って働いて欲しい」
「はい。ここに来るために言葉使いも覚えました。お仕事頑張ります」
「頼むよ。エリーも、ここに来てくれたんだね」
「はい。父殿とは別れることになりましたが、坊ちゃまについて行った方がお菓子作りを出来そうだったので、誘っていただいてありがとうございます」
 その後で、エリックとエリーの腕を家の料理長が確認したが、香辛料を使った調理やその他も味は抜群だが、包丁の技術が伴っていないらしい。完全な下働きではなく料理人にレシピを教えるために幾つかの料理を担当しつつ、料理技術を学ぶ事になった。
 ようやく我が家で慣れた味のご飯が食べれる様になった。家族含め使用人達も急に味が変わりびっくりしていたが、全てがおいしくなったのでエリックとエリーは使用人達のあっという間に受け入れられた。やはり食は大事だ。
 慣れるとエリーがお菓子作りを始めたいとおかあさまに申請していた。お菓子作りには砂糖が必要で、砂糖の使用許可はおかあさまがもっている。
 ちょうどお茶会に向けて新作が欲しいと言う事だったので、エリーがお菓子作りに挑戦し始めた。天然酵母もまぜてケーキを作っていたがフワフワスポンジは無理のようだ。麦から精麦していれば、自分でもう少し白く出来たかもしれないが、小麦粉の質が思ったよりも悪いようだ。
 盗賊達の館では、麦を水につけて柔らかくしてからコツコツと手作業で丁寧に表皮を削り、最後に石臼で挽いて白い上小麦粉を作り出した。
 その後に、この失敗を反省し麦から上小麦粉を一生懸命作ったらしい。疲れたとエリーが言っていた。
 白い小麦粉から作り出したスポンジケーキはかなり良いできだ。オーブンは料理長でなければ自在に操れ無いらしく、必ず習得するといきまいていた。
 あまった小麦粉で、フワフワパンも焼いてくれた。
 アイリはフワフワパンとスポンジを使ったケーキを気に入っていたが、手間がかかりすぎるのでなかなか作れ無い。
 まあ、手作業では無理だよね。


 そして持ってきた自作の調理器具が他の人も使いたいと一式を専門の人に作ってもらう事になった。
 せっかく専門化が作るならと、自作では作れなかった調理器具も加えることにした。特にお菓子作りの調理器具がなかったので粉振るい、泡だて器、レモン絞り、おろしがね、マッシャーなど考えられる料理器具で家の中になかったものも頼む事にした。そして肝心の材料。もっと白い小麦粉が欲しかったので、商人が来た時に上小麦粉があるか聞いて見ることにした。なければ精麦機を買うことにした。お金は魔石を売ったので懐に余裕があるのだ。

「この貴族街の近くで商会を開かせていただいているバッカスと申します。本日は御用がおありだと、急ぎはせ参じました」
「急な呼び出しでごめんなさいね。息子が欲しいものがあるらしいので話しを聞いてあげて欲しいのよ」
「はじめましてバッカス。クレストリアと言います。わざわざ呼びつけて悪いね」
「いいえ、坊ちゃま。商品の扱いが無いものだとお聞きしております。こちらの用意が悪いのです。われらに説明の時間まで取っていただきありがとうございます。それでさっそくですがどの様な商品が御望みでしょうか」

「今日頼みたいのはおいしいお菓子を作るのに必要な器具です。料理に使うので細かい点はこちらの二人から説明してもらいます」
 エリックが自分達で作った調理器具を一通り並べ、エリックと料理長が商人の傍仕えに説明をしていた。
幾つかの器具は下町で使われている似た物があるらしいが、量を統一したので全て作る事になった。
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