貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第2章 上級貴族の息子

2.10 子供教室

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 秋の3の月になった、この冬を含めて7歳以上になる子供達が集められ集団で勉強が始まる。基本はこの1ヶ月だけが子供教室だ。
 僕は今年からの新入生だ。
 まずは同級生で集まって自己紹介から始まった。
 同級生は僕を含めて6人。
「クレストリア・フルトヴィストです。もしかしたら皆さんとあっている人もいるのですが、実は盗賊に連れ去れた時に魔力枯渇になり、それ以来際に記憶が消えてしまいました。申し訳ありませんが自己紹介をしてもらっても良いでしょうか」
「クレストリアとは一月前に会っているが、ヒルベルト・バリシオだ。父親は騎士団長だ。よろしく頼む」
「私はオリアーヌ・ジャアシャンよ。中級貴族の子供ね」
「私はフェスティア・カルストラです。中級貴族の子供です」
「僕は、ドナルティアン・ルシアナ。中級貴族の子供です」
最後の子供はけっこうかわいいのだが、恥ずかしそうに小声で話した。
「あの、アンネモーネ・ベルトンです。下級貴族、男爵家の子供です。皆様よろしくお願いします」

「男女3人づつなんだね。ではこの冬の間、仲良く勉強しましょう」

 僕らの学年は下級が1人。中級3人、上級2人。7歳から16歳までで全体80人ぐらい。大半が中級貴族の子供だ。そして上級貴族の子供は12人しかいない。下級貴族と上級貴族は同じぐらいの人数だ。だが親の割合は1割が上級、4割が中級、残り5割が下級貴族だ。どうやら下級貴族は子供ができる割合が極端に低いようだ。
 実は下級貴族は子供ができない割合が高いらしい。魔力が少ないと子供ができ無いとか、属性が少ないからとか言われているが減る傾向にあるそうだ。
 どうやら魔力が必要な世界では、魔力による淘汰があるようだ。
 子供達の中で魔力の多い子供が後継ぎとなりそれ以外の子供は一つ爵位を落とす。ただ長子でなくても回りに比べて明らかに魔力が多い子供は新たに同じ階級の爵位を貰えるそうだ。
 聖礼式を受けた直後の子供は親の爵位で分けられるが、学園に行き成人を向かえる前に自分の階級が大体決まる。正式には学園を卒業した時に階級がしっかりと決まるそうだ。
 ちなみに中級の伯爵家以上では妻を2人娶ることができる。上級になると必要らしい。奥さんの年齢が上がると2人目を取るそうだ。ヒルベルトのおとうさんは既に2人目の妻がいて産まれたばかりの子供がいるそうだ。1人の妻が2人から3人産むのが普通らしい。特にこの領地は領地の広さの割に貴族が少ない。数代前に病気が蔓延し貴族の子供がかなり死んだ時期がありその影響で人数が足りていないそうだ。
 現状は特に上級貴族をもっと増やさないと行けないらしい。現在は領主一族と僅か数家だけが上級で、産めよ増やせよを推進していたが、領主の第1夫人が子供を産んでいなくて第2夫人をなかなか娶らなかったので部下にだけ押し付けてよく無いと言われているそうだ。家はおかあさまが3人産んでいるのでそこまで非難されていない。

 子供教室が始まったが、午前中は実力を把握するためといきなり試験だった。そして午後から全学年が揃って自己紹介がされる。

 まずは階級ごとに集まって自己紹介をするそうだ。僕はヒルベルトと一緒に上級貴族の子供の集まりに行った。
 上級貴族は12人なので、比較的簡単に挨拶が終わり、名前と自分の属性などを紹介して終わりだ。ほぼ全員が何らかの血の繋がりをもつ親戚だ。僕の聖礼式にも親が参加していた。聖礼式には普通は子供は参加しない。だから親戚筋と言えど学年違いの子供は合っていない。ヒルベルトは同級生だったので特別に参加していたのだ。
 事前に貴族の名前と関係を勉強していたのであっさりと上級貴族の顔と名前が一致した。
 それにしても上位貴族の子供は揃いも揃って美男美女になりそうな人達ばかり。中級貴族にも美男美女は存在するが全員ではない。上級貴族はそろいもそろって全員がレベルが違う。不思議だ。ちなみに下級貴族は女子が多く、なぜか綺麗な感じの子ばかりだ。中級の女子より綺麗かもしれない。これもまた不思議だ。

 その後は、先生が適当に班分けして親交を深めたが、一日で全ての学生を覚える事は出来なかった。
 次の日からテストの結果に応じた教育が始まる。学年ごとに同じ教育をするわけではない。座学は上級ほど年上に混じって教育を受ける。下級貴族は下手をすると1学年下に回される。落とされた学生は慌てて復習が必要になるわけだ。
 僕は、3つ上の学年の子と一緒に勉強する事になった。ヒルベルトも一緒だ。実は座学は3つ上の学年の内容もわかった。テストでは3つ以上上の学年の問題を出していなかったから実力が把握しきれなかったらしい。
 再度、ヒルベルトと一緒に試験を受けて、ヒルベルトはそのまま残留、僕は11歳の子供に混じる事になった。
 1日のスケジュールは午前中が座学。午後が魔法や武の時間になる。
 さっそく1日目の魔法教育、低学年の子供は魔力の動かし方、つまり魔石に魔力を溜める方法から教えてもらう。
 僕らは7,8歳のグループで集まり演習が始まった。魔力操作は慣れが必要で、8歳の子供も復習として魔力操作からの練習になる。
 皆に小さな魔石が渡され、魔石に魔力を込めるように言われた。
 いままで魔石を顔に当てられてると勝手に魔力が吸い出されていたが、この小さな魔石は手に握っても、顔に当てても魔力は吸い出されなかった。
「クレストリア様、魔石を顔に押し当てても魔力は勝手に流れませんよ。魔力を魔石に押し出すようにイメージしなければダメです」
 先生の説明を聞きながら試してみるが、上手く魔力が移動しない。一つ上の子供達は去年からやっているので簡単に達成していた。

 魔力は最近は吸い出されていないので自分の体に充満しているはず。吸い出された時の感じを思い出し体の中の魔力を探すと徐々にイメージが沸いてくる。体の中にある魔力を魔石に押し出すようにイメージして魔力を魔石に溜め込む。流れ始めると、ああやっぱりこれが魔力だとイメージと体感の一致を感じ、どんどん魔力を流し込む。魔力が流れ始めると一瞬で魔石が虹色にピッカと輝いたので慌てて魔力の流れを止めた。
「先生、これで良いですか?」
「おや、クレストリア様は早いですね。それにしても全属性の魔石は噂どおり虹色で美しいですね。では練習でこちらの魔石にも魔力を溜めてください」
 先生はそういって同じ大きさの魔石を5つくれた。僕と同じ時に上級生が同じように魔石を貰っていた。その時に魔力が溜まった魔石を見たが皆赤や青の色がついた石になっていた。どうやら僕が全属性だから虹色になったようだ。だが上級貴族は複数属性のはずだが、魔石は単色に見える。どうしてだろうか?
 僕は言われたとおり5つの魔石に魔力を流して全てに魔力を満たしたあとで先生に質問した。
「先生、上級貴族は複数の属性があるはずですが、どうして魔石は単色なのですか?」
「良い質問です。では魔石の説明も含めてご説明しましょう。意識しなければ魔石の染まる色は赤、橙、黄、緑、青、紫の6色です。全属性以外の者が魔石を染めると自分の一番強い属性がいろとして現れます。複数の属性があってもすべての属性が同じ強さでは無いのです。クレストリア様も8つ全ての属性が同じでは無いはずです。ですが全属性はひとつの色に染まるのではなく均等に色が分かれ虹色になるのです。このように見えるのは白と黒の属性が赤、橙、黄、緑、青、紫の6色が混じらない様にしているといわれています。白と黒の属性を持っていても残りの6色が不足いると虹色になりません。全属性だけが特別に虹色魔石を作れ、ひとつでもかけた属性の人が作る魔石の6色のうちのどれかの色になります。魔力の扱いに慣れると特定の属性だけを魔石に溜めることができる様になります。その様な魔力の分離を行えば命の属性の白、空間属性が使える黒の魔石も作れます」

「ところで、そもそも魔石って何に使うんですか」

「魔石は魔方陣と組み合わせる事で魔法を使えます。このように小さな魔石は魔道具に組み込んで使うのが一般的です。他には魔法を使う場合に手に持つことで魔石から魔力を供給し魔法を使えます。自分が持たない属性をもった魔石を持てば使えないはずの属性魔法が使えます」
「はい、よくわかりました」
「では皆様、そろそろ疲れたでしょう。休憩に入ります。特に低学年の子供は魔力を使い始めたばかり、予想以上に疲れているはずです。休憩をしてください休憩が終わったら体を動かす授業です」
 休憩が終わると今日は剣の習熟度合いを見られた。残念だが剣術はやったことが無い。
ヒルベルトは9歳の子供並にビシビシと剣を振るっている。僕は木刀ですらかなりの重さに感じられ、木刀を一振りするのがやっとだった。
 結局、皆よりも圧倒的に体力がなく女の子たちに混ぜてもらい準備運動で体を動かして終わった。

 子供教室は体を動かしたり魔力を使った実技は学年毎で教えてくれる。座学はそれぞれの子供に応じた学習進度で教えてくれる。なかなか決め細かい指導をしてくれ楽しめた。
 実技の時間で同級生とは少しづつ話す機会があったので少し仲良くなれた。ただ体力がなかったせいか、男子よりは女子と仲良くなった気がする。
 こんな感じで毎日が過ぎる。
 1週間は7日で、週に1回の休みがある。途中で二つ上の上級貴族の女子にお茶会に誘われたが女子のお茶会に男子が行く場合は姉妹かおかあさまが一緒に行かないといけないそうだ。おかあさまは忙しいから行けないと言われ、アイリーンがまだ聖礼式を向かえていないので行けない。来年になったら妹が聖礼式なので来年ぜひ誘ってくださいと返事した。
 とりあえずたったの1ヶ月だったし目立つこともなく無事に終えることができた。
 この1ヶ月で僕は貴族として育ってこなかったせいなのか、同じ年頃の子供とずっと接していなかったせいなのか子供との付き合いが下手だなと自覚した。
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