貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第2章 上級貴族の息子

2.31 クレストリア周辺への影響

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 冬の3の月前半に領主会議が終わり、3の月が終わる時に学園の卒業式があった。卒業式の後で結婚式があり、そしてクリスティーナレオノール様が嫁いできて、今はすっかり春だ。
 春は、気候も良く、とても過ごしやすいせいか、あっと言う間に月日が流れ、僕らはようやく城での暮らしも慣れてきた。
 最近は、領主候補の教育として夕食を食べる相手が順繰りと回る。家族だけではなく、領主夫妻や、領地内の上級貴族との会食が行われる。
 領主候補として上級貴族との付き合いが必要らしい。最初のうちは上級貴族の夫婦とだけにポイと放り込まれるわけではない。おとうさまかおかあさま、そして領主夫妻が一緒にいてくれる。もちろんクリスティーナレオノール様は僕らの教育の比ではない数の会食やお茶会をこなしている。
 僕らはあくまで教育なので、上級貴族といっても引退されている方々との会食をこなし、練習している。そうなると必然的に昔話をしてくれるお相手もいる。
「アンゼルム様とオルトヴィアー様が小さい時を思い出しますな」
 とある会食で一緒になったのは城で働いていた元財務係りのおじいちゃん夫婦だった。どうやらアンゼルム様とオルトヴィアー様が小さい時にもこうして会食をした事を話してくれた。
「今日は、クレストリアとアイリーンクリスタの勉強だ。私の子供の頃の話は止めてくれ」
「はいはい。ではその話は別の時に教えましょう」
 そんな約束をしてくれ、後日こっそりとおとうさまの話を教えてくれた。
 今日は、会食の前の税金について講義をしてくれた。その後で夕食だった。幾つか質問をしたが、基本は農業政策主になる社会で、地税が税収の大半だ。商業の取引は徐々に増えているが、平民の売り買いは食料品が締める割合が高く工業品による税収はそこまで多く無い。平民が使う金額よりは、貴族が使う魔道具や他領を含めた魔石のやり取りに比べると桁がちがうらし。貴族よりも平民の商人が金持ちになる時代ではないようだ。
 この領地は少し前まで魔力不足で魔石を購入する側だった。なので、かなり厳しい財政状況だったらし。近年になり、徐々に貴族が増えさらに僕の虹色魔石で魔力に余裕ができ、今は売り側になった。
 領内の魔力が満ちると食物の出来がよくなり今年もかなり豊作だった。余裕のある小麦は上小麦粉として輸出。さらに香辛料を出すことが出来たので最近が一番税収的に余裕があるらしい。
 今年は、王女様と一緒に上級貴族が沢山移動して来たのでさらに余裕が増えた。今のうちに貴族が作る魔道具の工房を充実させ、平民向けには道路の整備や工業品への投資などやった方が良いとおじいちゃんが言っていた。
 老人だから保守的かと思ったら、わりと改革派の意見を言うおじいちゃんだった。

 そうして日々を過ごしていたら、徐々に僕の周りに変化がでてきた。最初の変化は僕の傍仕えだ。領内のおばちゃんが3人交代で面倒を見てくれていたが、中央から来た上級貴族のおばちゃんが加わるようになった。名前はミーシャと呼ぶように言われた。
 そして文官も1人中央の上級貴族が増えた。使っても良いと言うので植物や動物の資料をまとめる手伝いをしてもらっている。彼はローヴィッド
 そして、いつもそばに連れているのはヤットルッドだが、部屋の外の護衛、移動する時に付いてくる兵士が領内の近衛が減り中央から来た騎士に変わった。
 僕の護衛に領内の近衛ではなくクリスティーナレオノール様が連れて来ていた騎士を入れてもよいのだろうか。クリスティーナレオノール様と一緒に来た人は専属だったのではなかったのか。近衛にいれて普通に使っても良いのかなと疑問が沸いた。
 最近、領主様との会食が延期されていたので気になっていたが質問が出来ていなかった。今日は久しぶりに中止にならず会うことができたので聞いて見た。
「アンゼルム様、僕の護衛にクリスティーナレオノール様が連れて来た騎士が混ざっています。あの人達はクリスティーナレオノール様の専属では無いのですか?」
「クリスティーナレオノールの専属はきちんと残されている。あの者達はクレストリアの護衛で間違い無い。中央からクリスティーナレオノール様の護衛と別に王が貸してくださったのだ」
「え、王様が僕の為に?」
「そうよ、クレストリア、私がここに来る前に陛下がおっしゃていたの。気にすることなく使いなさい。騎士達は王宮からの貸し出しだから途中で交代もあるそうよ」
「僕が誰かに狙われているのですか?」
「そんな話は聞いた事はない。学園に向けて騎士を選抜していると話したら、クリスティーナの護衛が減るのを危惧して陛下が貸してくださったのだ。クリスティーナが学園で護衛に使っていた騎士もいる。中央からの騎士の方が学園で守るのに都合がよいだろう。感謝してありがたく使えば良い」
「そんなものですか」
「陛下からの指示なのだから、従っていれば良い」
「はい」
 まあ、気にする必要なないと言われたので僕は関与しないことにした。

 エリーもエリックが、相談があると傍使えを通して伝わってきたので面談をした。彼らは家から城に移動してきたので、なにか不満でもあるのかと気になり、すぐに面談をした。だが、もともと城と料理人は、ちょくちょく入れ替えて練習に来ていた人がおおく、城で働くようになっても知り合いが多くてそれほど働きにくい環境ではないらしい。それよりも新しい料理のテクニックを教えてくれる師匠ができたらしくエリックが喜んでいた。
 エリーはお菓子専用の厨房を貰え、部下として専属スタッフも付いたそうだ。現状の待遇にかなりご満悦だ。部下に追い抜かれない様に、とても頑張っているそうだ。
 そして2人からの相談は、結婚したいと言うことだった。二人の関係がそうなっていたことにちょっと驚いたが特に反対はない。とてもめでたいことだ。
 すぐに、おとうさまとおかあさまに相談して2人の結婚に対して許可が貰えた。
 平民が貴族街で結婚する場合は、年に2回、集団結婚式が行われるらしい。今からだと夏に結婚式が行われるそうだ。
 書類や手続き、それに城に2人の部屋を用意することはおとうさまがやってくれることになった。そして2人の衣装はおかあさまが用意するらしい。貴族街での平民の結婚は後ろ盾の貴族が面倒をみるらしい。

 後で2人に結婚の許可が出た事と夏に集団での結婚式が行われる事を伝えた。2人はとても喜んでいた。
 2人が幸せそうで、良かった。
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