貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油

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第3章 学園編1

3.10 魔法の勉強開始

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 翌日の朝、食事をすませ指定の時間にヒルベルトのところへ向かった。そして盗聴防止の魔道具を使って石像の使い方を説明した。おおよそ必要になる魔力も説明する。学園にいる3ヶ月の間に終わるとは思えないが、余裕のある魔力は像に使うと伝えた。
ヒルベルトは火属性が欲しいらしい。かなり乗り気だ。
 王族やそれに近い人たちは6属性か7属性が沢山いる。全属性になると礎に魔力を注ぐ効率も変わり楽になる。だが5属性程度の上級貴族は魔力的にも全属性に到達するのは難しいだろう。できれば今後、領主候補生だけでも全属性になってほしいのだが、今は確証がない。
 現状は、情報が他に漏れない様に気を付けて領主に報告して欲しいとお願いした。一瞬厳しい顔をしたが、転移を使って直接話すと約束してくれた。
 そして僕は寮に戻った。

 今日から魔法の訓練が始まる。いよいよ魔法だ。嬉しい。
「まずは、魔法を使うための初歩からです。みなさん領地で魔力操作の練習をしてきたと思いますが、まずはその確認からです。今からお渡しする水晶にできるだけ薄く均一に魔力を流す練習です。流した魔力の量で色が付きます。色を均一に、できるだけ薄くしてください。上級貴族の方は濃くなる傾向がありますがそれは無駄です。これから教える魔法は下級貴族でもできるのです。できる限り薄くした方が魔力の消費が少なく、物体がもともと持っている属性や成分をわけやすくなります。クレストリア様、濃すぎます。その100分の1程度にしてください」
 先生にそう指摘されたがびっくりだ。これでもかなり薄くした。自信があったのに。それも10分の1ではなく、100分の1か。そんなに濃いのか。まずいな。
 近くは上級貴族の子供たちばかりで、彼らの水晶は確かに僕より薄いが100分の1と言うほど薄くは無い気がした。ちょっと離れたところにいる中央ではない区画に目を向ける。そこで下級貴族が集まって練習していたのでその色を参考に魔力を薄く延ばす練習をした。
「アデリートメアリー様はお上手ですね。ですがあと半分ぐらいには減らしてください」
先ほどの先生からアドバイスが出た。
「半分ですか。頑張ります」
「アデリートメアリー様は魔力操作が上手なのですね。僕は100分の1まで薄めろといわれました。どうすれば減らせられるのか見当もつきませんよ」
「クレストリア様は魔力が多いから大変ですね。わたくしは少しだけ取り出した魔力を、匂いが広がるイメージで薄く広げています」
 そうか、匂いか。空気のようなものだな。空気を広げる。そうだ風船をイメージしよう。自分の魔力を小さく切り取って取り出す。そして風船が膨らむように周りにぱっと広がる。
「おお、できた。めっちゃすくなった」
 とりあえず水晶の数倍のところまで魔力の空間は広がっているが薄く広げることができた。
「あら、クレストリア様、いつのまにかできるようになったのですね。ですが魔力のエリアが大きすぎますね。もう少し練習してくださいね」
 先生が後ろから来て褒めてくれた。
 とりあえず感覚的にはわかってきたので、エリアを小さくする訓練を続ける。
「さあ、今日は皆様に分離の魔法を教えます。二つの教材を渡します。一つは鉄を取り出したものです。もう一つは色々な材料が混じった石です。この色々な材料が混じった物から鉄だけを分離して取り出しましょう」
 そう言って石が配られた。
「では、お手本を見せます。まずは、鉄に触って魔力を流してそれを認識します。魔力を流すと頭の中に何かが浮かび上がります。人によりますが、鉄の文字や魔法陣が浮かぶ人が多いそうです。それが出来たら次のステップです。いろいろな材料の混じった石にも魔力を流します。この雑多な石から鉄に流した魔力と同じ反応を示す物質を探します。見つかったら、鉄『分離(ぶんり)』と言ってください。すると鉄が取り出せます。魔力の流れ方は物質によって異なります。その違いを意識して分離するのです。まずは鉄を意識できるように鉄に魔力を流して、雑多な石との違いが分かるところから始めてください」
 今、『分離(ぶんり)』が日本語だったような。
 とりあえず、純鉄と思われる物を触り魔力を流す。次に雑多な物質にも魔力を流す。比べると違いが何となく判る。何度か繰り返したら、鉄に魔力を流した時にFeと頭の中で表示された。あれ、これが物体を認識した感じなのだろうか。
 さっそく実験。
雑多な石から鉄を分離してみよう。
魔力を流して、鉄と考える。頭の中にFeの記号が思い浮かぶ。『分離(ぶんり)』と言ってみる。すると塊から鉄が取り出されて小さな粒が出てきた。
 もう一度やろうと思ったが雑多な塊の中から鉄が無いらしく鉄を感じることができなかった。
 多少魔力は減ったが、そよりも何よりも、超簡単だったことに感動した。
科学技術を使ってこの分離をやると、どれだけの設備と燃料が必要か。魔法を使えばこんなに簡単にできる。これならば科学技術が発展しないはずだと納得した。

「できた方は次の研修です。銅の塊を受け取って分離してください」
 魔力に対する物質の違いを見極めできるのは中級や下級の方が多いようだ。僕も前に行って銅の塊を受けとった。
「クレストリア様はもう分離ができたのですね。わたくしはなかなか魔力の反応の違いが判りません。どうしましょう」
 アデリートメアリー様からの質問だ。
「純鉄の方は、多めに魔力を注いで見てください。さっきの薄い魔力よりも濃い魔力を流し込んでください。物質の特性を理解するときは大目に注いだ方が記憶しやすいみたいです。理解するとなんとなく頭の中に響くような感じを体感したら記憶したことになるようです」
「試して見ます」
 そういってアデリートメアリー様が鉄に多めに魔力を注ぐとにこっと笑った。
「クレストリア様、なんとなくわかった気がします」
 そのあとで、雑多な塊に向けて魔力を流し、鉄を分離した。
「できましたね。流石です」
「クレストリア様のおかげです」
「助力できたようで何よりです。ではこちらの銅を使いますか。僕は銅も分離できたので」
 僕は、彼女が挑戦中にスパッと銅の分離ができていた。彼女は銅を受け取り、挑戦を始めた。しばらくするとできたようだ。
「鉄や銅を取り出すのは魔力があればできますが、さらさらとして砂状になった方とまとまった粒になった方の差は土属性の有無です。土属性を持つ人は金属の形を変えることができますが、これは属性毎の魔法演習で勉強します。今日の全体演習はこれで終わりです。できなかった方も出来た方も戻ってからも練習を続けてください。今日の練習がすべての魔法の基礎になりますからね」
 先生からのコメントの後で鐘がなり授業が終わった。
 こんな感じで属性魔法の基礎が始まった。1年生は攻撃、防御魔法の講習がなく、この後属性毎の基礎魔法を習う。いわゆる生活魔法に毛が生えた程度だがこの基礎が出来なければその後の魔法が使えないらしい。とても大切な魔法なので、一生懸命練習が必要だ。

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