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第4章 学園編2
4.6 反乱の処理
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祠で捕まったカオスニュクスと言う男は、アルブレヒトスクイド王と同じぐらいの年齢だ。魔法が使えない手錠をかけて、王の前で直接尋問を受けている。僕とヴィルヘルム王子は関係者として一緒に参加している。
カオスニュクスには記憶を読みとる魔道具が使えなかったそうだ。僕の鑑定も名前以外の所が隠蔽され弾かれていたから何らかの能力を持っているのだろう。
得られた情報はカオスニュクスとその側近から得た情報だ。
カオスニュクスは、古くから王を支える一族ではあったがその居住地は王都から北にある山の中だ。田舎の一画に住み王族の支援を受け食料の変わりに魔力や魔術具を提供していた。偶に暗殺業を請け負ったりもしていた。
一族は、王族の血を引く者達だ。王位を争い王となれず処分対象となった者達がこの地に隔離されていた。罪人の一族でもあり、それ故に王からの許可が無い限り他の領地へ行くことは許されず、ずっと山奥に閉じ込められていた。
だが今の王が王となった政変によってそれらの過去の歴史は引き継がれず、扱いも中途半端な状態となった。元々外に出れないように強く張られた結界は無くなり、一族のある一派は里を抜け出した。
王は、その歴史を知らず逃げた者達についても深く追求する事も無かった。
彼らは、ティベリウスに協力し彼の望みをかなえる魔道具を与え、代わりにエルレドルアの領民としての登録を融通してもらった。
最初は、王になる気もなく、自分たちが平和に暮らすためにティベリウスに協力し、いろいろと融通を利かせて貰っていたようだ。
カオスニュクス達は魔力があるので神殿の神官として働き魔力を領地の為に奉納していた。
だが1年前、急にカオスニュクスの性格が変わった。魔道具を作った時に魔力不足となり寝込んだ。その直後に温和だったカオスニュクスが野心を持つようになった。
それ以後、ティベリウスはカオスニュクスを使う立場から使われる立場に変わりカオスニュクスを王へする為に動きだした。カオスニュクスをエルレドルアの貴族へ登録を変更し、仲間たちを神殿に集めていた。
そこで十分に力を付け、学園に侵入。祠周りをした。祠周りをしている間に邪魔をされないよう、部下たち学園の転移装置を使えなくしたり、王都の近くで騒乱を起こして騎士達を引っ掻き回していたらしい。
「カオスニュクスよ、わしは神の書を持たぬ王政に疑問を持っておる。お主が王を目指すならば言ってくれれば協力をしただろう。なぜ言わなんだ」
「王よ、我にそれを言うか。あきれるほどにすべてが失われていたのだな」
「すまぬな。お主が何を悲観し、何を恐れておるのか、わしにはわからんのだ」
「われら一族が過去どのように扱われていたのか、わしらが王を目指すその意味も、すべてがわからぬのか」
「できれば神の書を得る方法を知っていたならば、それを伝えてほしかった。その上で我らと共に神の書を得る努力をしてはいけなかったのか」
「それは許されない。元々我ら一族は王を巡って負けた者が送られた流刑の地。我らはそなたら一族から殺される闇の呪いをかけられておる」
「だが、我の頼みごとも聞いてくれただろう。そなたらは忠義であった」
「生きるための妥協じゃ。願いをかなえると寿命が延びる。願いをかなえねば30を超える事すら出来ぬ」
「なんと、そのような呪いが」
「呪いが弱まり、かの地を出ることができた。王の願いをかなえたことで我の寿命の制限は伸びたが娘や息子の寿命は近い。新たな願いはこなかった。ゆえに寿命のあるワシが王となり、呪いを解こうと思ったのじゃ」
「だが、願いはかなわなかったのであろう、ならばそなたが手に入れている神の書の入手方法と古代語の知識は教えて貰えぬのか、お主の願いと引き換えに」
「教えぬ。願いは間に合わなかった。息子と娘は既に死んだ。間に合わなかったのだよ」
「そうか、だが」
「ワシの記憶は読めぬぞ。ワシは神の書を手に入れる条件である二つの魂を持つ者だ。二つの魂を持つ者の記憶は読めぬ。誰が楽に方法を教えるか」
やはり二つの魂を持っているのか。転生者ではなく二つの魂を持つ方法があるのは確実だな。
「どうやって二つの魂を手に入れるのだ」
「ふふふ。教えぬと言っただろう」
残念そうな顔で見るしかない。
「いい顔だ。少年。ヒントだ。自分が死なねば魂は得られぬ」
「死んだらだと。だがお主は生きているではないか」
「ふふふ、悩め。そして迷うが良い」
ダメだな。これ以上の情報は無理だな。
「陛下、図書館に領主候補生しか入れない部屋があるそうです。私は3年生にならなければそこの本を読んでもわからないと言われていたのでまだはいっていませんが、そこに神の書を取得する方法があるそうです」
「それは、本当か」
「ええ、エイレーネアテナ様が図書館に通っていて発見されたそうです。僕に教えてくれました」
「エイレーネアテナは、キャサリンエリザと同級生だろう。なぜキャサリンエリザではなくそなたに」
「古代語が読めなくては入っても無駄だと言われました。僕は古代語が読めるので僕に教えてくれました」
「ほう、彼女も古代語が読めると言う事か。では彼女は神の書を手に入れているのではないのか?」
「王の印が無いから手に入らないそうです」
「王の印。初期の王族には王の印は無かったと聞いている。王の印は王族の歴史でも中期に登場する仕組みだ。領主同士で争わぬように途中で条件が追加されたのか」
「今の王族は古代語を読めないのですか。それも文官を含めて全て失われているのでしょうか」
「そうだ。古代語は王族だけに伝えられた知識だった。だが徐々に継承される言葉は減り、政変で僅かな知識を得ていた兄達の死亡で完全に途絶えた。なぜお主やエイレーネアテナは読めるのだ」
「古代語は、別の世界で使われる言語です。僕の全鑑定は別の世界で書かれた言語も読むことができます。エイレーネアテナ様も似たような力を持っているのではないでしょうか」
「ふむ、ではクレストリアが翻訳をしてくれぬか。図書館には入っても良い。ヴィルヘルムも一緒に行くが良い、読めずともクレストリアが解らぬ知識を教えてやれるだろう」
「はい。仰せのままに」
僕らが退席してヴィルヘルム王子と話をする。
「エルレドルア領で母と妹が待っています。傍使えも全員置いて来たので、一度帰ります。その後でこちらに移動してきます」
「わかった」
転移で移動してきた騎士達と合流した。学生寮の転移装置が使えるようになっていたので、騎士の半分は連絡の為に戻っていた。
僕らは、残ったメンバーで転移してエルレドルア領の城に戻った。
カオスニュクスには記憶を読みとる魔道具が使えなかったそうだ。僕の鑑定も名前以外の所が隠蔽され弾かれていたから何らかの能力を持っているのだろう。
得られた情報はカオスニュクスとその側近から得た情報だ。
カオスニュクスは、古くから王を支える一族ではあったがその居住地は王都から北にある山の中だ。田舎の一画に住み王族の支援を受け食料の変わりに魔力や魔術具を提供していた。偶に暗殺業を請け負ったりもしていた。
一族は、王族の血を引く者達だ。王位を争い王となれず処分対象となった者達がこの地に隔離されていた。罪人の一族でもあり、それ故に王からの許可が無い限り他の領地へ行くことは許されず、ずっと山奥に閉じ込められていた。
だが今の王が王となった政変によってそれらの過去の歴史は引き継がれず、扱いも中途半端な状態となった。元々外に出れないように強く張られた結界は無くなり、一族のある一派は里を抜け出した。
王は、その歴史を知らず逃げた者達についても深く追求する事も無かった。
彼らは、ティベリウスに協力し彼の望みをかなえる魔道具を与え、代わりにエルレドルアの領民としての登録を融通してもらった。
最初は、王になる気もなく、自分たちが平和に暮らすためにティベリウスに協力し、いろいろと融通を利かせて貰っていたようだ。
カオスニュクス達は魔力があるので神殿の神官として働き魔力を領地の為に奉納していた。
だが1年前、急にカオスニュクスの性格が変わった。魔道具を作った時に魔力不足となり寝込んだ。その直後に温和だったカオスニュクスが野心を持つようになった。
それ以後、ティベリウスはカオスニュクスを使う立場から使われる立場に変わりカオスニュクスを王へする為に動きだした。カオスニュクスをエルレドルアの貴族へ登録を変更し、仲間たちを神殿に集めていた。
そこで十分に力を付け、学園に侵入。祠周りをした。祠周りをしている間に邪魔をされないよう、部下たち学園の転移装置を使えなくしたり、王都の近くで騒乱を起こして騎士達を引っ掻き回していたらしい。
「カオスニュクスよ、わしは神の書を持たぬ王政に疑問を持っておる。お主が王を目指すならば言ってくれれば協力をしただろう。なぜ言わなんだ」
「王よ、我にそれを言うか。あきれるほどにすべてが失われていたのだな」
「すまぬな。お主が何を悲観し、何を恐れておるのか、わしにはわからんのだ」
「われら一族が過去どのように扱われていたのか、わしらが王を目指すその意味も、すべてがわからぬのか」
「できれば神の書を得る方法を知っていたならば、それを伝えてほしかった。その上で我らと共に神の書を得る努力をしてはいけなかったのか」
「それは許されない。元々我ら一族は王を巡って負けた者が送られた流刑の地。我らはそなたら一族から殺される闇の呪いをかけられておる」
「だが、我の頼みごとも聞いてくれただろう。そなたらは忠義であった」
「生きるための妥協じゃ。願いをかなえると寿命が延びる。願いをかなえねば30を超える事すら出来ぬ」
「なんと、そのような呪いが」
「呪いが弱まり、かの地を出ることができた。王の願いをかなえたことで我の寿命の制限は伸びたが娘や息子の寿命は近い。新たな願いはこなかった。ゆえに寿命のあるワシが王となり、呪いを解こうと思ったのじゃ」
「だが、願いはかなわなかったのであろう、ならばそなたが手に入れている神の書の入手方法と古代語の知識は教えて貰えぬのか、お主の願いと引き換えに」
「教えぬ。願いは間に合わなかった。息子と娘は既に死んだ。間に合わなかったのだよ」
「そうか、だが」
「ワシの記憶は読めぬぞ。ワシは神の書を手に入れる条件である二つの魂を持つ者だ。二つの魂を持つ者の記憶は読めぬ。誰が楽に方法を教えるか」
やはり二つの魂を持っているのか。転生者ではなく二つの魂を持つ方法があるのは確実だな。
「どうやって二つの魂を手に入れるのだ」
「ふふふ。教えぬと言っただろう」
残念そうな顔で見るしかない。
「いい顔だ。少年。ヒントだ。自分が死なねば魂は得られぬ」
「死んだらだと。だがお主は生きているではないか」
「ふふふ、悩め。そして迷うが良い」
ダメだな。これ以上の情報は無理だな。
「陛下、図書館に領主候補生しか入れない部屋があるそうです。私は3年生にならなければそこの本を読んでもわからないと言われていたのでまだはいっていませんが、そこに神の書を取得する方法があるそうです」
「それは、本当か」
「ええ、エイレーネアテナ様が図書館に通っていて発見されたそうです。僕に教えてくれました」
「エイレーネアテナは、キャサリンエリザと同級生だろう。なぜキャサリンエリザではなくそなたに」
「古代語が読めなくては入っても無駄だと言われました。僕は古代語が読めるので僕に教えてくれました」
「ほう、彼女も古代語が読めると言う事か。では彼女は神の書を手に入れているのではないのか?」
「王の印が無いから手に入らないそうです」
「王の印。初期の王族には王の印は無かったと聞いている。王の印は王族の歴史でも中期に登場する仕組みだ。領主同士で争わぬように途中で条件が追加されたのか」
「今の王族は古代語を読めないのですか。それも文官を含めて全て失われているのでしょうか」
「そうだ。古代語は王族だけに伝えられた知識だった。だが徐々に継承される言葉は減り、政変で僅かな知識を得ていた兄達の死亡で完全に途絶えた。なぜお主やエイレーネアテナは読めるのだ」
「古代語は、別の世界で使われる言語です。僕の全鑑定は別の世界で書かれた言語も読むことができます。エイレーネアテナ様も似たような力を持っているのではないでしょうか」
「ふむ、ではクレストリアが翻訳をしてくれぬか。図書館には入っても良い。ヴィルヘルムも一緒に行くが良い、読めずともクレストリアが解らぬ知識を教えてやれるだろう」
「はい。仰せのままに」
僕らが退席してヴィルヘルム王子と話をする。
「エルレドルア領で母と妹が待っています。傍使えも全員置いて来たので、一度帰ります。その後でこちらに移動してきます」
「わかった」
転移で移動してきた騎士達と合流した。学生寮の転移装置が使えるようになっていたので、騎士の半分は連絡の為に戻っていた。
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