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63、公爵家へ
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王宮を後にし、エリオットはレオンと共に公爵家へ向かっていた。
馬車の車輪が静かに石畳を踏みしめる音が響く。
外はすでに夕闇に包まれ、街灯の灯りがちらちらと揺れていた。
レオンは対面に座り、軽く足を組みながら短剣を弄んでいる。
「……まったく、公爵夫人は大胆ですねぇ」
気楽そうな口調だが、その琥珀色の瞳は鋭いままだ。
「そんなつもりはありません」
エリオットは落ち着いた声で答えたが、レオンは軽く肩をすくめる。
「公爵家に戻るってことは、敵のど真ん中に突っ込むのと同じですよ? それを大胆と言わずして、何と言うんです?」
「情報を得るには、動かなければいけないでしょう?」
エリオットは窓の外を見つめながら静かに言う。
レオンはしばらくエリオットを観察した後、ふっと笑った。
「……なるほど。公爵夫人は、本当に覚悟を決めたんですね」
「覚悟……?」
エリオットが少し視線を戻すと、レオンは短剣を器用に回しながら言った。
「覚悟がなければ、公爵家に戻ろうなんて思わないでしょう。あの愛人がどんな手を使うか分からないし、最悪の場合、陛下の庇護下から離れることになる」
エリオットの指が、わずかに膝の上で組まれる。
(そうだ。ここを出たら、もう皇帝陛下の加護はすぐそばにはない……あの腕も届かない)
「……それでも、僕は行かなければなりません」
レオンはその言葉を聞くと、しばらく沈黙した。
やがて、クスッと笑う。
「はは、いいですねぇ。まるで陛下みたいな言い方です」
「……僕が?」
「ええ。『自分が行かなければならない』……陛下もよくそんなことを言ってましたよ。何が何でも、譲れないものがある時に」
「……」
「公爵夫人も、陛下に似てきたんじゃないですか?」
エリオットは言葉に詰まり、目を伏せる。
(僕が……陛下に?)
「まぁ、そういうことなら、私も腹をくくるとしましょうか」
レオンは軽く肩をすくめ、短剣を鞘に収めると、真剣な眼差しでエリオットを見た。
「いいですか、公爵夫人。公爵家に戻るということは、敵の射程範囲に入るということです」
「……分かっています」
「なら、いいんですけど。私としては、陛下に怒鳴られない程度には守りますからねぇ。怖いんですよね、あの人。流石竜帝と言うか……」
レオンの口調は軽いが、その奥には確かな覚悟があった。
エリオットはわずかに微笑んだ。
「ありがとう、レオン」
「どういたしまして。ま、無事に帰れたら、陛下に褒めるように伝えてくださいよ」
馬車はゆっくりと公爵家の門へと近づいていく。
エリオットはふっと息を吸い、まっすぐ正面を見据えた。
※
公爵家の門をくぐると、屋敷の雰囲気が変わっていた。
門番の数が増え、まるで誰かを締め出そうとするかのような張り詰めた空気が漂っている。
「……歓迎されていませんねぇ。もしくはこれだけ出来るのだから、という証明なのか」
レオンが軽く苦笑する。
エリオットは表情を変えずに玄関へ向かう。
扉が開くと、そこにはヴェロニク・クレイヴンが立っていた。
ヴェロニクはエリオットを見るなり、薄く笑う。
しかし、その目には明らかな警戒と苛立ちが滲んでいた。
「へぇ……ずいぶんと堂々と戻ってこられましたね」
「あなたが迎えをよこしたのでは?」
エリオットが静かに言うと、ヴェロニクは肩をすくめる。
「ええ、そうですが」
彼はゆっくりと歩み寄り、エリオットを値踏みするように眺める。
「帰ってきたということは、自分の立場を思い出した、ということでよろしいですね?」
「元から忘れてはいませんよ」
エリオットは軽く微笑むが、はっきりとは答えなかった。
ヴェロニクの目がわずかに細まる。
「フフ……相変わらず、そうやって飄々としていらっしゃる」
「あなたも、相変わらずですね」
「おや、それはどういう意味です?」
「僕がいない間に、この屋敷の雰囲気が随分と変わりました」
ヴェロニクの口元がわずかに歪む。
「まぁ、当然でしょう。ここはもう、あなたの居場所ではないのですから」
エリオットは微笑んだまま、静かに言った。
「それは、これから決まることです」
ヴェロニクの眉がピクリと動く。
(やはり、僕の存在を警戒している、か……しかし、こうまで顔色に出るところを見ると、やはり単独ではないことは明らか。そして関わっているのはヴァルフォード伯爵……)
その時——
屋敷の奥から、足音が近づいてきた。
「何の騒ぎだ?」
低く響く声とともに、アドリアン・オルディスが現れた。
彼の視線がエリオットを捉えた瞬間、目つきが険しくなる。
「……エリオット」
アドリアンは一度エリオットを見下ろした後、ヴェロニクに目を向ける。
「ヴェロニク、何のつもりだ?」
「何のつもり、とは?」
ヴェロニクは苦笑しながら、エリオットに視線を戻す。
「公爵夫人が戻ってきたのですよ。公爵閣下のもとへ」
「……ほう?」
アドリアンの目が細められる。
「もう皇帝陛下は良いのか?それとも王太子だったか」
エリオットは彼の視線を真っ直ぐ受け止めながら、静かに答えた。
「あなたに用があるから戻ってきました」
「……私に?君がか?」
「ええ、公爵家に関わることですので」
エリオットの言葉はあくまで公的なものだったが、それがかえってアドリアンの神経を逆撫でする。
彼の眉間に深い皺が寄る。
「私に用、か……それならわざわざ戻ってくる必要はなかったのではないか。書簡でも済んだだろう」
「ですが、公爵家のことを話すなら、公爵家で話すのが筋でしょう?あなたが公爵閣下で僕が公爵夫人という立場にいる限り、夫婦の問題でもある」
アドリアンの視線が鋭くなる。
(やはり、気にしているのだな……僕をどうしたいんだか、あなたは)
シグルドの庇護下にいたこと、そしてエリオットが自ら戻ってきたこと——
それらがアドリアンにとって「気分が悪い」ものであることが伝わってくる。
ヴェロニクが口を挟むように前に出る。
「公爵閣下、もうこんな男に惑わされるべきではありません」
「ヴェロニク」
アドリアンが低く名を呼ぶ。
その声音には苛立ちが滲んでいた。
ヴェロニクは小さく息を呑み、後ろへ引く。
エリオットはその様子を見ながら、静かに続けた。
「僕は、ただ話をしにきただけです」
(それが本当かどうかは、彼ら次第だけれどもね……アドリアン、馬鹿なことに関わっていなければ良いが……まあ彼が失脚したら侯爵家で使用人は引き取れるかもしれない)
アドリアンはしばらくエリオットを見つめた後、短く息を吐いた。
「……好きにしろ」
彼が背を向け、屋敷の奥へ歩き出す。
エリオットは表情を変えずに、それに続いた。
ヴェロニクの視線が背中に突き刺さるのを感じながら——。
馬車の車輪が静かに石畳を踏みしめる音が響く。
外はすでに夕闇に包まれ、街灯の灯りがちらちらと揺れていた。
レオンは対面に座り、軽く足を組みながら短剣を弄んでいる。
「……まったく、公爵夫人は大胆ですねぇ」
気楽そうな口調だが、その琥珀色の瞳は鋭いままだ。
「そんなつもりはありません」
エリオットは落ち着いた声で答えたが、レオンは軽く肩をすくめる。
「公爵家に戻るってことは、敵のど真ん中に突っ込むのと同じですよ? それを大胆と言わずして、何と言うんです?」
「情報を得るには、動かなければいけないでしょう?」
エリオットは窓の外を見つめながら静かに言う。
レオンはしばらくエリオットを観察した後、ふっと笑った。
「……なるほど。公爵夫人は、本当に覚悟を決めたんですね」
「覚悟……?」
エリオットが少し視線を戻すと、レオンは短剣を器用に回しながら言った。
「覚悟がなければ、公爵家に戻ろうなんて思わないでしょう。あの愛人がどんな手を使うか分からないし、最悪の場合、陛下の庇護下から離れることになる」
エリオットの指が、わずかに膝の上で組まれる。
(そうだ。ここを出たら、もう皇帝陛下の加護はすぐそばにはない……あの腕も届かない)
「……それでも、僕は行かなければなりません」
レオンはその言葉を聞くと、しばらく沈黙した。
やがて、クスッと笑う。
「はは、いいですねぇ。まるで陛下みたいな言い方です」
「……僕が?」
「ええ。『自分が行かなければならない』……陛下もよくそんなことを言ってましたよ。何が何でも、譲れないものがある時に」
「……」
「公爵夫人も、陛下に似てきたんじゃないですか?」
エリオットは言葉に詰まり、目を伏せる。
(僕が……陛下に?)
「まぁ、そういうことなら、私も腹をくくるとしましょうか」
レオンは軽く肩をすくめ、短剣を鞘に収めると、真剣な眼差しでエリオットを見た。
「いいですか、公爵夫人。公爵家に戻るということは、敵の射程範囲に入るということです」
「……分かっています」
「なら、いいんですけど。私としては、陛下に怒鳴られない程度には守りますからねぇ。怖いんですよね、あの人。流石竜帝と言うか……」
レオンの口調は軽いが、その奥には確かな覚悟があった。
エリオットはわずかに微笑んだ。
「ありがとう、レオン」
「どういたしまして。ま、無事に帰れたら、陛下に褒めるように伝えてくださいよ」
馬車はゆっくりと公爵家の門へと近づいていく。
エリオットはふっと息を吸い、まっすぐ正面を見据えた。
※
公爵家の門をくぐると、屋敷の雰囲気が変わっていた。
門番の数が増え、まるで誰かを締め出そうとするかのような張り詰めた空気が漂っている。
「……歓迎されていませんねぇ。もしくはこれだけ出来るのだから、という証明なのか」
レオンが軽く苦笑する。
エリオットは表情を変えずに玄関へ向かう。
扉が開くと、そこにはヴェロニク・クレイヴンが立っていた。
ヴェロニクはエリオットを見るなり、薄く笑う。
しかし、その目には明らかな警戒と苛立ちが滲んでいた。
「へぇ……ずいぶんと堂々と戻ってこられましたね」
「あなたが迎えをよこしたのでは?」
エリオットが静かに言うと、ヴェロニクは肩をすくめる。
「ええ、そうですが」
彼はゆっくりと歩み寄り、エリオットを値踏みするように眺める。
「帰ってきたということは、自分の立場を思い出した、ということでよろしいですね?」
「元から忘れてはいませんよ」
エリオットは軽く微笑むが、はっきりとは答えなかった。
ヴェロニクの目がわずかに細まる。
「フフ……相変わらず、そうやって飄々としていらっしゃる」
「あなたも、相変わらずですね」
「おや、それはどういう意味です?」
「僕がいない間に、この屋敷の雰囲気が随分と変わりました」
ヴェロニクの口元がわずかに歪む。
「まぁ、当然でしょう。ここはもう、あなたの居場所ではないのですから」
エリオットは微笑んだまま、静かに言った。
「それは、これから決まることです」
ヴェロニクの眉がピクリと動く。
(やはり、僕の存在を警戒している、か……しかし、こうまで顔色に出るところを見ると、やはり単独ではないことは明らか。そして関わっているのはヴァルフォード伯爵……)
その時——
屋敷の奥から、足音が近づいてきた。
「何の騒ぎだ?」
低く響く声とともに、アドリアン・オルディスが現れた。
彼の視線がエリオットを捉えた瞬間、目つきが険しくなる。
「……エリオット」
アドリアンは一度エリオットを見下ろした後、ヴェロニクに目を向ける。
「ヴェロニク、何のつもりだ?」
「何のつもり、とは?」
ヴェロニクは苦笑しながら、エリオットに視線を戻す。
「公爵夫人が戻ってきたのですよ。公爵閣下のもとへ」
「……ほう?」
アドリアンの目が細められる。
「もう皇帝陛下は良いのか?それとも王太子だったか」
エリオットは彼の視線を真っ直ぐ受け止めながら、静かに答えた。
「あなたに用があるから戻ってきました」
「……私に?君がか?」
「ええ、公爵家に関わることですので」
エリオットの言葉はあくまで公的なものだったが、それがかえってアドリアンの神経を逆撫でする。
彼の眉間に深い皺が寄る。
「私に用、か……それならわざわざ戻ってくる必要はなかったのではないか。書簡でも済んだだろう」
「ですが、公爵家のことを話すなら、公爵家で話すのが筋でしょう?あなたが公爵閣下で僕が公爵夫人という立場にいる限り、夫婦の問題でもある」
アドリアンの視線が鋭くなる。
(やはり、気にしているのだな……僕をどうしたいんだか、あなたは)
シグルドの庇護下にいたこと、そしてエリオットが自ら戻ってきたこと——
それらがアドリアンにとって「気分が悪い」ものであることが伝わってくる。
ヴェロニクが口を挟むように前に出る。
「公爵閣下、もうこんな男に惑わされるべきではありません」
「ヴェロニク」
アドリアンが低く名を呼ぶ。
その声音には苛立ちが滲んでいた。
ヴェロニクは小さく息を呑み、後ろへ引く。
エリオットはその様子を見ながら、静かに続けた。
「僕は、ただ話をしにきただけです」
(それが本当かどうかは、彼ら次第だけれどもね……アドリアン、馬鹿なことに関わっていなければ良いが……まあ彼が失脚したら侯爵家で使用人は引き取れるかもしれない)
アドリアンはしばらくエリオットを見つめた後、短く息を吐いた。
「……好きにしろ」
彼が背を向け、屋敷の奥へ歩き出す。
エリオットは表情を変えずに、それに続いた。
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