社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし

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第2章

22

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長い旅路を終えて、俺たちはようやくフランベルクの本邸に戻ってきた。
馬を降りた瞬間、冷たい風が吹き抜け身を震わせる。疲労の重さを感じ、俺は伸びをしながら、振り返ると、レイが険しい顔をして玄関の方に向かっていた。
俺も慌てて馬丁 に馬を預けてレイの後ろを追いかけた。

「お帰りなさいませ、レイ様、カイル様」

執事や使用人たちが列を成して出迎える中、俺は少し気恥ずかしさを覚えた。彼らの視線がどこか俺に集中している気がしてならない。飛び出したからなぁ、俺……エミリーが休暇中じゃなきゃだいぶんどやされていただろうな。

「カイル、今夜はしっかり休め」
玄関を抜けると、レイがふと立ち止まり、俺に振り返らずに言った。その声にはいつもの優しさが少しだけ欠けているように感じる。

「……分かったよ」

そう答えると、レイは執務室へ向かう。
……昨夜、仲直りしたと思ったのは俺だけだったのだろうか?
これ、寝室じゃなく自室に戻れって話だろ?なんだかなぁ……。
俺はその背中を静かに見送ったが、どこか胸の中がざわついていた。



部屋に戻り、荷解きをしていると、廊下から軽いノック音が聞こえた。

「カイル君、少しいいかな?」

聞き慣れた声にドアを開けると、アランが笑みを浮かべて立っていた。
リリウムが俺の足にまとわりつきながらアランを見上げている。

「……何だよ、こんな時間に」

少し警戒しながら問うと、アランは肩をすくめる。

「別に大した話じゃないさ。ただ、旅疲れしている君に少しでも気晴らしをと思ってね」
「……気晴らし?」

俺は疑問を抱きつつも断る理由が見つからない。
正直、面倒くさいんだけど……。

「ほんの少しでいいから。少し紅茶でも飲みながら話でもどうだい?」

アランに押される形で、俺はしぶしぶ部屋を出た。



ラウンジに着くと、暖炉の火がパチパチと音を立てていた。
アランはカップに注いだ紅茶を俺の前に差し出しながら座る。

「さて、カイル君」

紅茶を一口飲みながら、アランが静かに口を開いた。

「君が兄さんの側にいると、彼は本当に幸せそうだね」
「……何が言いたいんだ?」

俺が警戒を込めて問い返すと、アランは笑みを崩さずに続けた。

「ただの感想さ。けれど、君が兄さんのすべてを救えるかどうかは別の話だ」
その言葉に、俺は眉をひそめる。

「……どういう意味だよ?」
「兄さんは強い人間だ。でも、その強さは脆さの裏返しでもある。君がすべてを受け止められるのか、少し心配でね」

俺はアランの言葉の意味を測りかねていた。彼の口調はどこか優しい響きを持ちながらも、挑発のようにも感じられる。
……貴族って面倒くさい。俺も貴族の端くれで社交界にも出ていた……けれど、こういう裏がありそうなやり取りが嫌いで顔を出すことさえなくなった。
その点、レイは裏表がなく昔から傍にいてもすごく楽で……好きで……。

「俺は、レイを守るためにここにいるんだ」

強く言い放つと、アランはほんの少しだけ目を細めた。

「……なるほど、ね」

それ以上は何も言わず、アランは立ち上がる。

「また話そう、カイル君。良い夜を」

去り際の微笑みが妙に心に引っかかった。



朝の食堂はいつもと変わらない。陽が差し込む窓辺に並ぶ皿には、焼きたてのパンや新鮮な果物が並んでいる。温かな紅茶の香りが漂い、少しホッとする空間だった。

だけど、目の前にいるレイの表情は、まるで戦いの余韻を引きずったままみたいに険しかった。俺が紅茶を口にするたびに、彼の視線がチラチラとこちらに向く。その目には、言葉にならない何かが宿っていて、俺は居心地が悪くなる。

「どうしたの?」

たまりかねて尋ねると、レイはナイフとフォークを静かに置いた。その仕草が妙に重く感じる。

「昨夜、アランと何を話していた?」

低く鋭い声。その一言で、食堂の空気が一気に冷え込んだ気がした。

「……別に、大したことじゃないよ。ただの世間話みたいなものだ」

そう答えた俺を、レイはじっと見つめている。まるで何かを探るような、その目が刺さるみたいに痛い。

「具体的に、何を話したか教えろ」

さらに詰め寄られると、言葉に詰まる。昨夜アランと話した内容を思い返すけど、特に重要なことはなかったはずだ。

「だから、本当に何でもないんだって。アランも別に、深い話をしてたわけじゃないし」

俺の言葉が途切れるたびに、レイの眉間の皺が深くなる。その顔を見ると、俺が隠し事をしてるみたいに思われてる気がして、胸がざわついた。

「アランは人の心に入り込むのが得意だ。お前が気づかない間に、利用されることだってあり得る」

レイの声がさらに低くなる。
俺はその言葉に胸がもやっとする。
俺、やっぱ信用されてなくない……?いや、俺を心配しすぎてるだけなのかもだけどさ……。

「……分かったよ。でも、俺を信用してくれよ」

そう言う俺に、レイは一瞬目を細めたが、すぐに立ち上がった。

「お前の言葉を信じたいが……そのためにも、注意を怠るな」

その背中を見送りながら、俺はアランとの距離感に対して、もう一度考え直す必要があるのかもしれないと思った。
あいつが来てからレイとギスギスしてるんだよな……。本当、面倒くさい。
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