33 / 74
32.嫌じゃないこと
しおりを挟む
キースの唇は何度か俺のそれの上で啄ばむ様に動いた。そして、急なことで開いたままだった俺の唇の合間から舌が入り込んでくる。
「……っぁ……」
漏れた声を覆う様に唇同士が密着する。
俺へと求婚の意を示してからこちら、軽く触れ合う様な口付けは何度かあった。
ただ、それは改めてする行為というよりは、挨拶のついでのようなものばかりで、今回とは違う。
咥内に入り込んできたものが、俺の舌に絡んできた。
「ん、んっ……」
どうすれば、と思うものの身体は動かない。キースの片手があがり、俺の背中を撫でて腰まで落ちる。
なんとも言えない感覚に、俺は手を握り込んだ。
「……っふ、……」
強めに舌を吸われると、腹の奥をぎゅっと掴まれたようだ。俺が息を 漏らしたところでキースの顔が離れた。
頬にあった手が俺の髪を梳くように動いて、後ろ頭にまわる。
そうしてから、その手がキースの胸元に俺の顔を引き寄せて、強く抱きしめられた。
「リアム……」
声が俺を呼びつつ、手が頭を優しく撫でた。
……恋愛経験が皆無な俺にさえわかるほどに、キースの全部の行動には
愛情が含まれていて、それがまた俺が拒むことを選ばせない。
相手も男で俺も男で俺はそれが嫌で……なのに、何故なのか。拒むこともせず腕の中にいる。
「……嫌なら、拒んだ方がいいよ?そうでないと、僕は僕の良いように受け取って、君を好きなようにしてしまうから」
頭の中でキースの言葉を繰り返す。
……俺だって、拒めるもんなら拒んでる。でもそうしない自分が不可解で仕方ないわけで。
……嫌いでは、ない。
では恋か、と問われれば……わからない。
分からないから流されてるのだろうか……ああ、でもこれがキース以外だったらどうなのだろうか……。
そう思い、思い浮かべてみる。
「……兄様以外は、嫌……なんですけどね……」
俺はキースの胸に額を押し付けながら、答える。
試しに頭の中で、リンドンだのレジナルドだのと、キスを交わす相手を変えてみたが……ありえないな、とそれはすぐに答えが出るのに、キースを好きだとはまだはっきりわからない。だから、そんな答えになってしまった。
キースは俺の答えを聞くと、髪を撫でる手を俺の顎へと滑らせ、ゆっくりと自分の方を見上げさせた。
また視線があう。
「それだと僕のことを好きだと言っている様なものだよ?」
「だって……わかり、ません……」
キースは苦笑を浮かべ、困ったね、と緩く息と一緒に吐き出した。
しゃーないだろ!
恋だの愛だのを俺はまだ知らないんだからさぁ!
身勝手なのは重々承知だ。
俺は、嫌いではないです、と先程思ったことを小さく呟く様に告げた。
「君が僕との行為に嫌悪がなく、でもしっかりとは選べないなら……僕のものにしてしまうよ?」
いいの?とキースは首を傾げる。
また難問を突きつけてくるなぁ、この人は。ただ、今までの行為が……キスが、嫌だったかどうかなら……。
「……嫌悪はない、です……」
正直に、そう俺が言うとキースは微笑んで、また俺の唇を塞いだ。
……まずいなぁ、これ……嫌どころか……気持ち良い、てやつな気が、す……る……。
「……っぁ……」
漏れた声を覆う様に唇同士が密着する。
俺へと求婚の意を示してからこちら、軽く触れ合う様な口付けは何度かあった。
ただ、それは改めてする行為というよりは、挨拶のついでのようなものばかりで、今回とは違う。
咥内に入り込んできたものが、俺の舌に絡んできた。
「ん、んっ……」
どうすれば、と思うものの身体は動かない。キースの片手があがり、俺の背中を撫でて腰まで落ちる。
なんとも言えない感覚に、俺は手を握り込んだ。
「……っふ、……」
強めに舌を吸われると、腹の奥をぎゅっと掴まれたようだ。俺が息を 漏らしたところでキースの顔が離れた。
頬にあった手が俺の髪を梳くように動いて、後ろ頭にまわる。
そうしてから、その手がキースの胸元に俺の顔を引き寄せて、強く抱きしめられた。
「リアム……」
声が俺を呼びつつ、手が頭を優しく撫でた。
……恋愛経験が皆無な俺にさえわかるほどに、キースの全部の行動には
愛情が含まれていて、それがまた俺が拒むことを選ばせない。
相手も男で俺も男で俺はそれが嫌で……なのに、何故なのか。拒むこともせず腕の中にいる。
「……嫌なら、拒んだ方がいいよ?そうでないと、僕は僕の良いように受け取って、君を好きなようにしてしまうから」
頭の中でキースの言葉を繰り返す。
……俺だって、拒めるもんなら拒んでる。でもそうしない自分が不可解で仕方ないわけで。
……嫌いでは、ない。
では恋か、と問われれば……わからない。
分からないから流されてるのだろうか……ああ、でもこれがキース以外だったらどうなのだろうか……。
そう思い、思い浮かべてみる。
「……兄様以外は、嫌……なんですけどね……」
俺はキースの胸に額を押し付けながら、答える。
試しに頭の中で、リンドンだのレジナルドだのと、キスを交わす相手を変えてみたが……ありえないな、とそれはすぐに答えが出るのに、キースを好きだとはまだはっきりわからない。だから、そんな答えになってしまった。
キースは俺の答えを聞くと、髪を撫でる手を俺の顎へと滑らせ、ゆっくりと自分の方を見上げさせた。
また視線があう。
「それだと僕のことを好きだと言っている様なものだよ?」
「だって……わかり、ません……」
キースは苦笑を浮かべ、困ったね、と緩く息と一緒に吐き出した。
しゃーないだろ!
恋だの愛だのを俺はまだ知らないんだからさぁ!
身勝手なのは重々承知だ。
俺は、嫌いではないです、と先程思ったことを小さく呟く様に告げた。
「君が僕との行為に嫌悪がなく、でもしっかりとは選べないなら……僕のものにしてしまうよ?」
いいの?とキースは首を傾げる。
また難問を突きつけてくるなぁ、この人は。ただ、今までの行為が……キスが、嫌だったかどうかなら……。
「……嫌悪はない、です……」
正直に、そう俺が言うとキースは微笑んで、また俺の唇を塞いだ。
……まずいなぁ、これ……嫌どころか……気持ち良い、てやつな気が、す……る……。
480
あなたにおすすめの小説
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
異世界で孵化したので全力で推しを守ります
のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる