108 / 136
101
しおりを挟む
101
パイセンが次の点検箇所へと歩き出した。
みんな、その後を付いていく。
「良通(よしみち)を語る前に、もう少しこの地方の歴史について教えてあげようか。あまりに信長のインパクトが強すぎるし、斎藤道三の方も信長とは親戚関係だからこの2人ばかり名前が挙がってしまうけど、元々この地域を収めていたのは土岐(とき)家だよ。平安時代末期に美濃へ勢力を広げた源氏一族の流れを汲んでいるんだ。1338年には足利尊氏(あしかが たかうじ)によって京都に室町幕府が誕生した。その時、尊氏に従って武功を上げると土岐家は美濃・尾張・伊勢の三国、今の東海三県を守護する一大勢力になったんだ。あ、守護というのはその地域を治める武将の官職名だよ」
「あんまりイメージにないわね」
「それはしょうがないかもね。政治の中心は元々京都で、それが鎌倉幕府の時に関東へ移り、また室町幕府の時に京都へ戻り、今度は江戸幕府で再び関東へ。この中部というのは中間に位置していて飛ばされることが多いから」
「ナゴヤ飛ばし」
チカ丸がまた変な言葉を言っている。
「地理的には関西へ行くにも関東へ行くにも便利だし、逆に言うと関西と関東を行き来するにはここを通るしかないんだから重要な地域ではある。だから美濃を押さえた信長は脅威に映っただろうね」
「その信長のいた時代に土岐はどこにいっちゃったのよ?」
「待って、順番に話してあげるから。歴史というのは順を追って話さないと、こんがらがるからね。名前と年号だけ覚えたって頭には残らないよ?」
ふーみんが手をひらひらと振る。
「信長が台頭する少し前から話してあげようか。元々、美濃国(みののくに)を治めていた土岐家。1500年代初め頃は兄弟で守護の座を巡って争っていたんだ。お兄さんが頼武(よりたけ)で、弟が頼芸(よりのり) 詳しい事は省くけど、勝ったのは弟の頼芸だよ。その頼芸に仕えていたのが斎藤利政(さいとう としまさ ) 後の道三であり、稲葉良通(いなば よしみち)だよ」
「良通、ここで出てくるのね」
少しは興味が出てきたのかふーみんが応えてくれた。
「良通はお寺に預けられていたんだけど、浅井家との戦でお父さんと兄弟5人が一度に討ち死にしたもんだから、」
「うわぁ、」生々しい話に彼女から声が漏れた。
「無念ナリ」チカ丸の方はおとぎ話でも聞くように反応が軽い。
「、良通は稲葉家の家督と曽根城を継いだんだ。曽根城は今の大垣市にあったお城だよ。西に行けばすぐ関ケ原でその先が浅井家の居城、小谷城がある近江(おうみ)、滋賀県さ」
「ああ、あの辺りなの」
「ん?」よく分かっていないチカ丸は首を傾げた。
「チカ丸はまず桃太郎○鉄をやってみるといいよ。日本の地理が覚えられるから。そのうえで、信長の○望も合わせてやると昔の日本の国名も覚えられていい」
「美濃、メモして」
「あ、ハイ」
ヒメがメモし終えたのを確認して話を続ける。
「良通には深芳野(みよしの)というお姉さんが居たらしいんだ。あ、らしいというのはこの人物が後世の創作じゃないかとも言われているからなんだけどね。いる前提で話すよ。深芳野は美濃一の美人と言われていて土岐頼芸(とき よりのり)の妾だったんだ」
「めかけ?」
チカ丸の質問にアタシは小声で応えた。
「mistressだよ」
「Oh、」チカ丸も小声になった。
「深芳野(みよしの)は次に斎藤利政(さいとう としまさ)の側室となった」
「そくしつ?」
「second wifeだよ」
「Oh、」
「日本も一夫多妻制だったんだ。どこの国も権力者はそうだろうけど。頼芸はね、目を掛けていた利政へ深芳野を譲ったんだ」
「そういうのはアタシには分からん」
パイセンが次へさっさと歩きだしたので、みんなで付いていく。
「昔は息子や娘は政略結婚させて家の存続と防衛をはかる人質の様な存在だった。深芳野もそういった事情に振り回されたんだろうね。けど、斎藤利政(さいとう としまさ)は主人である土岐頼芸(とき よりのり)を裏切って尾張へ追放してしまったんだ。目を掛けてあげてたのに。」
「あらま、」
「この頃は親兄弟、主従の間柄でも骨肉の争いをしていた時代だよ。下剋上ってやつさ。頼芸は美濃を取り戻そうと信長のお父さん、織田信秀(おだ のぶひで)を頼って利政を攻めるんだけど結果は敗退。その後は親類縁者を頼って各地を転々としたそうだよ。これで美濃の国は斎藤家が収めることになった。利政は和睦の証として織田家に娘の帰蝶を嫁がせる約束をしたんだ。大体ここまでで1550年頃の出来事だよ」
「良通はどうしたのよ?」
「稲葉良通(いなば よしみち)は斎藤側に味方したよ。どういういきさつだったのかは諸説あるようだけど、アタシはお姉さんである深芳野(みよしの)が斎藤側にいたからという説を押すね。もし、お姉さんが頼芸の妾のままだったら土岐側に付いていたかもしれない」
「シスコン?」チカ丸から戦国時代に合わない言葉が飛び出した。
「それは分からないけど、この深芳野が斎藤家にまさしく火種を生むんだよ」
パイセンが次の点検箇所へと歩き出した。
みんな、その後を付いていく。
「良通(よしみち)を語る前に、もう少しこの地方の歴史について教えてあげようか。あまりに信長のインパクトが強すぎるし、斎藤道三の方も信長とは親戚関係だからこの2人ばかり名前が挙がってしまうけど、元々この地域を収めていたのは土岐(とき)家だよ。平安時代末期に美濃へ勢力を広げた源氏一族の流れを汲んでいるんだ。1338年には足利尊氏(あしかが たかうじ)によって京都に室町幕府が誕生した。その時、尊氏に従って武功を上げると土岐家は美濃・尾張・伊勢の三国、今の東海三県を守護する一大勢力になったんだ。あ、守護というのはその地域を治める武将の官職名だよ」
「あんまりイメージにないわね」
「それはしょうがないかもね。政治の中心は元々京都で、それが鎌倉幕府の時に関東へ移り、また室町幕府の時に京都へ戻り、今度は江戸幕府で再び関東へ。この中部というのは中間に位置していて飛ばされることが多いから」
「ナゴヤ飛ばし」
チカ丸がまた変な言葉を言っている。
「地理的には関西へ行くにも関東へ行くにも便利だし、逆に言うと関西と関東を行き来するにはここを通るしかないんだから重要な地域ではある。だから美濃を押さえた信長は脅威に映っただろうね」
「その信長のいた時代に土岐はどこにいっちゃったのよ?」
「待って、順番に話してあげるから。歴史というのは順を追って話さないと、こんがらがるからね。名前と年号だけ覚えたって頭には残らないよ?」
ふーみんが手をひらひらと振る。
「信長が台頭する少し前から話してあげようか。元々、美濃国(みののくに)を治めていた土岐家。1500年代初め頃は兄弟で守護の座を巡って争っていたんだ。お兄さんが頼武(よりたけ)で、弟が頼芸(よりのり) 詳しい事は省くけど、勝ったのは弟の頼芸だよ。その頼芸に仕えていたのが斎藤利政(さいとう としまさ ) 後の道三であり、稲葉良通(いなば よしみち)だよ」
「良通、ここで出てくるのね」
少しは興味が出てきたのかふーみんが応えてくれた。
「良通はお寺に預けられていたんだけど、浅井家との戦でお父さんと兄弟5人が一度に討ち死にしたもんだから、」
「うわぁ、」生々しい話に彼女から声が漏れた。
「無念ナリ」チカ丸の方はおとぎ話でも聞くように反応が軽い。
「、良通は稲葉家の家督と曽根城を継いだんだ。曽根城は今の大垣市にあったお城だよ。西に行けばすぐ関ケ原でその先が浅井家の居城、小谷城がある近江(おうみ)、滋賀県さ」
「ああ、あの辺りなの」
「ん?」よく分かっていないチカ丸は首を傾げた。
「チカ丸はまず桃太郎○鉄をやってみるといいよ。日本の地理が覚えられるから。そのうえで、信長の○望も合わせてやると昔の日本の国名も覚えられていい」
「美濃、メモして」
「あ、ハイ」
ヒメがメモし終えたのを確認して話を続ける。
「良通には深芳野(みよしの)というお姉さんが居たらしいんだ。あ、らしいというのはこの人物が後世の創作じゃないかとも言われているからなんだけどね。いる前提で話すよ。深芳野は美濃一の美人と言われていて土岐頼芸(とき よりのり)の妾だったんだ」
「めかけ?」
チカ丸の質問にアタシは小声で応えた。
「mistressだよ」
「Oh、」チカ丸も小声になった。
「深芳野(みよしの)は次に斎藤利政(さいとう としまさ)の側室となった」
「そくしつ?」
「second wifeだよ」
「Oh、」
「日本も一夫多妻制だったんだ。どこの国も権力者はそうだろうけど。頼芸はね、目を掛けていた利政へ深芳野を譲ったんだ」
「そういうのはアタシには分からん」
パイセンが次へさっさと歩きだしたので、みんなで付いていく。
「昔は息子や娘は政略結婚させて家の存続と防衛をはかる人質の様な存在だった。深芳野もそういった事情に振り回されたんだろうね。けど、斎藤利政(さいとう としまさ)は主人である土岐頼芸(とき よりのり)を裏切って尾張へ追放してしまったんだ。目を掛けてあげてたのに。」
「あらま、」
「この頃は親兄弟、主従の間柄でも骨肉の争いをしていた時代だよ。下剋上ってやつさ。頼芸は美濃を取り戻そうと信長のお父さん、織田信秀(おだ のぶひで)を頼って利政を攻めるんだけど結果は敗退。その後は親類縁者を頼って各地を転々としたそうだよ。これで美濃の国は斎藤家が収めることになった。利政は和睦の証として織田家に娘の帰蝶を嫁がせる約束をしたんだ。大体ここまでで1550年頃の出来事だよ」
「良通はどうしたのよ?」
「稲葉良通(いなば よしみち)は斎藤側に味方したよ。どういういきさつだったのかは諸説あるようだけど、アタシはお姉さんである深芳野(みよしの)が斎藤側にいたからという説を押すね。もし、お姉さんが頼芸の妾のままだったら土岐側に付いていたかもしれない」
「シスコン?」チカ丸から戦国時代に合わない言葉が飛び出した。
「それは分からないけど、この深芳野が斎藤家にまさしく火種を生むんだよ」
0
あなたにおすすめの小説
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
学校1のイケメン♀️から逃げ出した先には地獄しかありませんでした
山田空
ライト文芸
ハーレムを目指していた主人公は転校してきたイケメンによってその計画を壊される。
そして、イケメンが実は女の子でありヤンデレであったことを知り逃げる。
逃げた途中でむかし付き合った彼女たちとの過去を思い出していく。
それは忘れたくても忘れられない悲しき記憶
この物語はヒロインと出会いそして別れるを繰り返す出会いと別れの物語だ。
そして、旅の最後に見つける大切で当たり前なものとは
クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2025.12.18)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる