僕はただの妖精だから執着しないで

ふわりんしず。

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淡いピンクのソラ

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木の枝に座り、足をぶらぶら揺らす。待っているのは言わずもがな彼等攻略対象者だ。

校門前でカバンに付けていたお守りを落としてしまう主人公。それを拾い声を掛けるのが皇子で、その後ろに控えていたのがロカ。

このシーンは全ルート共通。


(そう言えば主人公の名前って初期設定のままなのかな)

ふと思い出すのは主人公の名前。

主人公…つまりプレイヤーの名前を最初に入力する設定があるものの『キミ』とか『お前』と呼ばれる事がゲーム内では多く、

僕が主人公に付けた名前は『ソラ』だった。



何にも縛られない自由な空、

そこから付けた名前だったが…、

『ソラ』と名前をつける前の初期設定の名前が確か、ルー…、ルー、……ルー?


ううん、と頭を抱えながら記憶を探す。

記憶違いで無ければ名前に『ル』が付いていた…様な気がする。


はっきりと断言出来ないのは、多分、僕がちゃんとその名前を見ていなかったからだ。

ただ最初にその名前を見て、読みにくいなぁ。って感情を抱いたのだけははっきりと覚えている。



(ルッカス…?るるーしゅ?…ルッサン?…るるんば?なんか、どれも違う気が)

深くなる眉間の皺を揉みながら、不意に視野に入り込んだ淡い桃色の髪の毛を見て飛び跳ねた。


僕がいる木の真下を通った華奢な青年は、

真っ直ぐに体育館へと向かう。



風に揺れる綺麗な髪、

上からで顔はほとんど見えなかったが、

線の細い身体と、人目を引く存在感。



側を通った生徒全員が彼に視線を奪われ、足を止めて呆けてしまう程に。


(み…っ、……見つけたぁあ“ソラ”!!!)

一方的に僕が知っているだけだけど、有名人に会ったかの様な高揚感に、

思わず空をふよふよと飛び回る。


(ソラだぁ!本物だよね?後ついて行っちゃったらダメかなぁ…ダメだよね、)


ソラが歩いて行った方向と自分が居た木の側をふよふよと、行ったり来たり。

このまま着いて行きたい気持ちは強いけれど



出会いイベントを見守るだけと決めていた。





(早く主人公の落とし物を拾うシーンが見たいなぁ)

そわそわする気持ちを押し殺し、彼が落としたであろうお守りを探した。

きょろきょろと視線を彷徨わせ、

すぐ見つかるであろうお守りに期待を寄せた



彼と彼等が交差する必須アイテムお守りちゃん。











しかしそれはどこにも見当たらなかった。

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