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ご指導
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「……すごいですね、降宮さん」
「ふふっ、ざっとこんなもんですよ。なにせ、幼少の頃は令和の家康と称されていましたから」
「あれ、さっきと変わってません?」
それから、10分ほど経て。
そう、眩い汗を軽く拭きつつゲージから出てくる降宮さんを讃える僕。……うん、すごいね。野球のことはあんまり知らないけど、それでもすごいということは分かる。……ところで、さっきは信長じゃなかったですか?
「――さて、次は先輩ですね。是非とも、カッコいいところを見せてくださいね? 愛する彼女に」
「……そう、ですね。それでは、見ててください舞衣さん」
「どちらさま!? 今どこ見て言ったんですか!!」
その後、そんな馬鹿なやり取りを交わしつつゲージへと向かう。……うん、ほんとどちらさまだろうね。
ともあれ、お陰さまで少し緊張も解け右打席へと入る僕。そして、ゆっくりとバットを構え第1球を――
「ふふっ、残念ながらあまりカッコいいところはお見せできませんでしたね、舞衣さんに」
「……あの、本当にすみません。だから……その、もうイジらないでいただけると」
それから、数分後。
げんなりとゲージから出てきた僕に、揶揄うように告げる降宮さん。……あの、ごめんなさい。なので……その、もうイジらないでいただけると。
ところで、僕の成績なのだけども……まあ、散々たる結果で。20球中、4球ほど辛うじてバットに当たっただけで、あとは空振り。どころか、マトモに振れてもいなかったという有り様で――
「――あの、先輩。少し失礼しますね」
「…………へっ?」
「……こう、肩を開かないようにして、それからバットの持ち方は……あっ、なるべくで良いのでリラックスしてくださいね。今、少し力んじゃっていますので」
「……あの、そう言われましても……」
そう、優しく告げてくれる降宮さん。……だけど、僕としては狼狽える他なく。と言うのも、全く打てる気配のない僕に懇切丁寧に教えてくれているのだけど……その、文字通り手取り足取りと言いますか、僕の背中から腕を回す形で僕のバッティングフォームを修正してくれているので……その、色々と密着してしまっている状況でして……うん、すっごく恥ずかしい。
「お疲れさまです、先輩! さっきよりも断然良くなってましたよ!」
「……あ、ありがとうございます降宮さん」
その後、ややあって再び挑戦。未だ色んな意味で緊張はあったけど、それでも降宮さんの懇切丁寧なご指導のお陰でさっきより断然バットに当たるようになり、更には2本だけではあるけれどヒットのような当たりもあって……ふぅ、良かった。これでさっき以上に散々だったら、ほんとに合わせる顔がないし。
「――いや~今日も楽しかったですね先輩!」
「はい、降宮さん。今日もありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
それから、数時間後。
茜色の空の下、パッと咲くような笑顔でそう口にする降宮さん。……うん、ほんとに楽しかった。
あの後、続けて何度かバッティング――そしてボールを投げ的に当てるゲームや、野球以外にもサッカーボールで的を当てたりというゲームもあって。うん、こんなにアクティブに身体を動かしたのは久しぶ――
「…………降宮さん?」
ふと、立ち止まる尋ねてみる。と言うのも……さっきまで花のような笑顔を見せていた降宮さんが、ふと立ち止まり僕をじっと見つめていたから。……えっと、いったいどう――
「……あの、先輩。先輩は、私のこと……いえ、やっぱり何でもないです。それでは、また明日」
「……あ、はい、また明日……」
そう言って、少し駆け足で去っていく降宮さん。そして、そんな彼女をしばし見送った後、再びゆっくりと歩みを進める。
……さっきの、あの言葉……あの続きは、きっと二つの内のどちらかで。一方は、躊躇うことなく明確に応えられる言葉。だけど……もしも、もう一方の方だとしたら――
「ふふっ、ざっとこんなもんですよ。なにせ、幼少の頃は令和の家康と称されていましたから」
「あれ、さっきと変わってません?」
それから、10分ほど経て。
そう、眩い汗を軽く拭きつつゲージから出てくる降宮さんを讃える僕。……うん、すごいね。野球のことはあんまり知らないけど、それでもすごいということは分かる。……ところで、さっきは信長じゃなかったですか?
「――さて、次は先輩ですね。是非とも、カッコいいところを見せてくださいね? 愛する彼女に」
「……そう、ですね。それでは、見ててください舞衣さん」
「どちらさま!? 今どこ見て言ったんですか!!」
その後、そんな馬鹿なやり取りを交わしつつゲージへと向かう。……うん、ほんとどちらさまだろうね。
ともあれ、お陰さまで少し緊張も解け右打席へと入る僕。そして、ゆっくりとバットを構え第1球を――
「ふふっ、残念ながらあまりカッコいいところはお見せできませんでしたね、舞衣さんに」
「……あの、本当にすみません。だから……その、もうイジらないでいただけると」
それから、数分後。
げんなりとゲージから出てきた僕に、揶揄うように告げる降宮さん。……あの、ごめんなさい。なので……その、もうイジらないでいただけると。
ところで、僕の成績なのだけども……まあ、散々たる結果で。20球中、4球ほど辛うじてバットに当たっただけで、あとは空振り。どころか、マトモに振れてもいなかったという有り様で――
「――あの、先輩。少し失礼しますね」
「…………へっ?」
「……こう、肩を開かないようにして、それからバットの持ち方は……あっ、なるべくで良いのでリラックスしてくださいね。今、少し力んじゃっていますので」
「……あの、そう言われましても……」
そう、優しく告げてくれる降宮さん。……だけど、僕としては狼狽える他なく。と言うのも、全く打てる気配のない僕に懇切丁寧に教えてくれているのだけど……その、文字通り手取り足取りと言いますか、僕の背中から腕を回す形で僕のバッティングフォームを修正してくれているので……その、色々と密着してしまっている状況でして……うん、すっごく恥ずかしい。
「お疲れさまです、先輩! さっきよりも断然良くなってましたよ!」
「……あ、ありがとうございます降宮さん」
その後、ややあって再び挑戦。未だ色んな意味で緊張はあったけど、それでも降宮さんの懇切丁寧なご指導のお陰でさっきより断然バットに当たるようになり、更には2本だけではあるけれどヒットのような当たりもあって……ふぅ、良かった。これでさっき以上に散々だったら、ほんとに合わせる顔がないし。
「――いや~今日も楽しかったですね先輩!」
「はい、降宮さん。今日もありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
それから、数時間後。
茜色の空の下、パッと咲くような笑顔でそう口にする降宮さん。……うん、ほんとに楽しかった。
あの後、続けて何度かバッティング――そしてボールを投げ的に当てるゲームや、野球以外にもサッカーボールで的を当てたりというゲームもあって。うん、こんなにアクティブに身体を動かしたのは久しぶ――
「…………降宮さん?」
ふと、立ち止まる尋ねてみる。と言うのも……さっきまで花のような笑顔を見せていた降宮さんが、ふと立ち止まり僕をじっと見つめていたから。……えっと、いったいどう――
「……あの、先輩。先輩は、私のこと……いえ、やっぱり何でもないです。それでは、また明日」
「……あ、はい、また明日……」
そう言って、少し駆け足で去っていく降宮さん。そして、そんな彼女をしばし見送った後、再びゆっくりと歩みを進める。
……さっきの、あの言葉……あの続きは、きっと二つの内のどちらかで。一方は、躊躇うことなく明確に応えられる言葉。だけど……もしも、もう一方の方だとしたら――
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