16 / 19
サミエル・コールマスのその後
助言
しおりを挟む
「今度ございますパーティーですが、ご出席なさいますか?」
執事がパーティーの招待状を持ってきた。サミエルが招待状を見ると、わが公爵家に親しいものが主催するようだ。サミエルはふとアミエ嬢の顔が思い浮かんだ。婚約破棄してからは、自分から懇願して出たものをの除いては家族からの要望で2回ほど一緒に出席したことがあったが、最近はパーティー自体に出席していなかった。ちょうど閑散期に入っていたことも大きいのだが、誰からも言われなかったのも大きい。
わが公爵家にも招待状が来ているとなると、アミエの家の侯爵家にも来ているだろう。今日は、ちょうどアミエ嬢が来る予定だったので、聞いてみることにした。
「アミエ嬢、今度のパーティーには出席する?」
サミエルは、いつものようにブラックを連れてきたアミエに尋ねた。いつもならすぐ返事があるのだが、今日のアミエはなぜかサミエルのほうを見ずに、じゃれついてくる犬たちの方を見たまま答えた。
「...ええ、出席いたします」
「そうか、私も出席する予定なんだ。もしよければ一緒に...」
サミエルは、一緒に行かないかというつもりだったが、アミエにさえぎられてしまった。
「そのパーティーは、他の方と一緒に行くことになっておりますの」
「そうなのか」
サミエルは、その時は別段気にしていなかった。親戚か弟と行くのかと思っていたのだ。アミエには弟がいる。この前社交界デビューしたばかりだ。
サミエルがパーティーに着くと、フロアにはもう何組か踊っている者たちがいた。その一組に思わず目がいっ た。どう見てもアミエが男性と踊っている。アミエが楽しそうに踊っているのを見たサミエルは、自分がどんな顔をしていたのかわからなかった。
「やあサミエル」
サミエルに声をかけてきたのは、親しい友人だった。以前の婚約破棄の時にも助言や苦言をしてくれた大切な友人だ。
「やあ」
「アミエ嬢、いつにもましてきれいだな」
その友人が感心したように言った。サミエルもアミエの様子をじっと見る。ここ一年犬の事でよく会っていたが、その時のアミエは犬を連れていたため軽装のドレス姿だった。今日のような正装を見たのは久しぶりだ。サミエルがアミエから視線を外せずにいると、友人が自分を凝視しているのに気が付いた。
サミエルが友人を見ると、その友人は呆れたような顔になった。
「サミエル、今お前自分がどんな顔しているか知ってるか?まるで嫉妬しているようなすごい形相になっていたぞ」
「嫉妬?誰に?」
サミエルは、友人が言った言葉に理解できずつぶやいた。友人はそれを見てやれやれといった顔をした。
「お前、自覚してないのか?早く自分の気持ちに気がつかないと手遅れになるぞ」
まるで小さい子供でも諭すようにサミエルに言った友人は、他の人に声をかけられてその人と別の話を始めた。サミエルは、先ほど友人が言った言葉に戸惑っていたが、その時こちらにやってきたご婦人から声をかけられた。どうやらダンスを踊ってほしい様子だ。サミエルがどうやって断ろうかと思案しているうちに、先ほどの友人の話は、すっかり頭の中から消えていた。
ただアミエの事が気になり、どうしても見てしまう自分がいた。特に男が、アミエにきやすく腰に手を当てているのを見た時には、そばに言ってはたいてやろうとまで思う自分がいた。
結局パーティーでは、サミエルは少しも楽しめずに帰ることとなった。帰るときもアミエを探したが、一足先に会場を出たようで、姿が見えなかった。
屋敷に戻ったサミエルは、今度アミエがきたら絶対にパーティーに一緒に参加しようと言おうと決意した。しかしそのパーティーを境に、アミエがサミエルの屋敷に来ることはなかった。
そして一か月がたった。母にアミエの事を聞こうかとも思ったが、なかなか切り出せずにいた。その時にまたパーティーの招待状を受け取った。今回も公爵家寄りの貴族が主催するらしい。たぶんアミエも来るだろうと思い、参加することにした。
会場に着くとすぐにアミエを探した。まだアミエは来ていないようで見当たらなかった。話しかけてくるものをうまくかわしながら、アミエが来るのを今か今かと待っていた。その時だ。
「これはこれは、コールマス次期公爵ではありませんか」
話しかけてきたのは、エドワルド・ウィシュカム子爵だった。
「お久しぶりです」
サミエルが一応挨拶すると、エドワルドが横に並んできた。今日は彼も一人で来たようだった。
「誰かをお探しですか?」
「いえ」
サミエルが、パーティー会場の入り口に目を配っているのを見ていった。
「逃した魚は大きいですよ。きちんと自分の心に向き合って後悔なさらないように」
「えっ?」
エドワルドが、サミエルに言った。サミエルは何の事かとエドワルドのほうをじっと見た。
「まるで自覚がおありにならないんですね。周りのほうがはるかにわかっているというのに」
エドワルドは、サミエルを見て苦笑いをした。この時サミエルは、初めてエドワルドの年相応の表情を見た気がした。
「まさか私もあなたに、こんなアドバイスをするなんて思ってもいませんでしたが。私が言ったことを忘れないでくださいね」
そういってエドワルドはサミエルの元から離れていった。それからすぐにひとりでいるサミエルの元には、何人もの女性がやってきたのだが、サミエルが軽くあしらうと皆残念そうに去っていった。
アミエは結局そのパーティーにはやってこなかった。そういえばエドワルドと話したのに、モリッシュの事は少しも思い出すことはなかったと後で気が付いたサミエルだった。
執事がパーティーの招待状を持ってきた。サミエルが招待状を見ると、わが公爵家に親しいものが主催するようだ。サミエルはふとアミエ嬢の顔が思い浮かんだ。婚約破棄してからは、自分から懇願して出たものをの除いては家族からの要望で2回ほど一緒に出席したことがあったが、最近はパーティー自体に出席していなかった。ちょうど閑散期に入っていたことも大きいのだが、誰からも言われなかったのも大きい。
わが公爵家にも招待状が来ているとなると、アミエの家の侯爵家にも来ているだろう。今日は、ちょうどアミエ嬢が来る予定だったので、聞いてみることにした。
「アミエ嬢、今度のパーティーには出席する?」
サミエルは、いつものようにブラックを連れてきたアミエに尋ねた。いつもならすぐ返事があるのだが、今日のアミエはなぜかサミエルのほうを見ずに、じゃれついてくる犬たちの方を見たまま答えた。
「...ええ、出席いたします」
「そうか、私も出席する予定なんだ。もしよければ一緒に...」
サミエルは、一緒に行かないかというつもりだったが、アミエにさえぎられてしまった。
「そのパーティーは、他の方と一緒に行くことになっておりますの」
「そうなのか」
サミエルは、その時は別段気にしていなかった。親戚か弟と行くのかと思っていたのだ。アミエには弟がいる。この前社交界デビューしたばかりだ。
サミエルがパーティーに着くと、フロアにはもう何組か踊っている者たちがいた。その一組に思わず目がいっ た。どう見てもアミエが男性と踊っている。アミエが楽しそうに踊っているのを見たサミエルは、自分がどんな顔をしていたのかわからなかった。
「やあサミエル」
サミエルに声をかけてきたのは、親しい友人だった。以前の婚約破棄の時にも助言や苦言をしてくれた大切な友人だ。
「やあ」
「アミエ嬢、いつにもましてきれいだな」
その友人が感心したように言った。サミエルもアミエの様子をじっと見る。ここ一年犬の事でよく会っていたが、その時のアミエは犬を連れていたため軽装のドレス姿だった。今日のような正装を見たのは久しぶりだ。サミエルがアミエから視線を外せずにいると、友人が自分を凝視しているのに気が付いた。
サミエルが友人を見ると、その友人は呆れたような顔になった。
「サミエル、今お前自分がどんな顔しているか知ってるか?まるで嫉妬しているようなすごい形相になっていたぞ」
「嫉妬?誰に?」
サミエルは、友人が言った言葉に理解できずつぶやいた。友人はそれを見てやれやれといった顔をした。
「お前、自覚してないのか?早く自分の気持ちに気がつかないと手遅れになるぞ」
まるで小さい子供でも諭すようにサミエルに言った友人は、他の人に声をかけられてその人と別の話を始めた。サミエルは、先ほど友人が言った言葉に戸惑っていたが、その時こちらにやってきたご婦人から声をかけられた。どうやらダンスを踊ってほしい様子だ。サミエルがどうやって断ろうかと思案しているうちに、先ほどの友人の話は、すっかり頭の中から消えていた。
ただアミエの事が気になり、どうしても見てしまう自分がいた。特に男が、アミエにきやすく腰に手を当てているのを見た時には、そばに言ってはたいてやろうとまで思う自分がいた。
結局パーティーでは、サミエルは少しも楽しめずに帰ることとなった。帰るときもアミエを探したが、一足先に会場を出たようで、姿が見えなかった。
屋敷に戻ったサミエルは、今度アミエがきたら絶対にパーティーに一緒に参加しようと言おうと決意した。しかしそのパーティーを境に、アミエがサミエルの屋敷に来ることはなかった。
そして一か月がたった。母にアミエの事を聞こうかとも思ったが、なかなか切り出せずにいた。その時にまたパーティーの招待状を受け取った。今回も公爵家寄りの貴族が主催するらしい。たぶんアミエも来るだろうと思い、参加することにした。
会場に着くとすぐにアミエを探した。まだアミエは来ていないようで見当たらなかった。話しかけてくるものをうまくかわしながら、アミエが来るのを今か今かと待っていた。その時だ。
「これはこれは、コールマス次期公爵ではありませんか」
話しかけてきたのは、エドワルド・ウィシュカム子爵だった。
「お久しぶりです」
サミエルが一応挨拶すると、エドワルドが横に並んできた。今日は彼も一人で来たようだった。
「誰かをお探しですか?」
「いえ」
サミエルが、パーティー会場の入り口に目を配っているのを見ていった。
「逃した魚は大きいですよ。きちんと自分の心に向き合って後悔なさらないように」
「えっ?」
エドワルドが、サミエルに言った。サミエルは何の事かとエドワルドのほうをじっと見た。
「まるで自覚がおありにならないんですね。周りのほうがはるかにわかっているというのに」
エドワルドは、サミエルを見て苦笑いをした。この時サミエルは、初めてエドワルドの年相応の表情を見た気がした。
「まさか私もあなたに、こんなアドバイスをするなんて思ってもいませんでしたが。私が言ったことを忘れないでくださいね」
そういってエドワルドはサミエルの元から離れていった。それからすぐにひとりでいるサミエルの元には、何人もの女性がやってきたのだが、サミエルが軽くあしらうと皆残念そうに去っていった。
アミエは結局そのパーティーにはやってこなかった。そういえばエドワルドと話したのに、モリッシュの事は少しも思い出すことはなかったと後で気が付いたサミエルだった。
7
あなたにおすすめの小説
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
走馬灯に君はいない
優未
恋愛
リーンには前世の記憶がある。それは、愛を誓い合ったはずの恋人の真実を知り、命を落とすというもの。今世は1人で生きていくのもいいと思っていたところ、急に婚約話が浮上する。その相手は前世の恋人で―――。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く
りこりー
恋愛
天真爛漫で笑顔が似合う可愛らしい私の婚約者様。
私はすぐに夢中になり、容姿を蔑まれようが、罵倒されようが、金をむしり取られようが笑顔で対応した。
それなのに裏切りやがって絶対許さない!
「シェリーは容姿がアレだから」
は?よく見てごらん、令息達の視線の先を
「シェリーは鈍臭いんだから」
は?最年少騎士団員ですが?
「どうせ、僕なんて見下してたくせに」
ふざけないでよ…世界で一番愛してたわ…
伯爵令嬢の婚約解消理由
七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。
婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。
そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。
しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。
一体何があったのかというと、それは……
これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。
*本編は8話+番外編を載せる予定です。
*小説家になろうに同時掲載しております。
*なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。
婚約破棄されたので、もうあなたを想うのはやめます
藤原遊
恋愛
王城の舞踏会で、公爵令息から一方的に婚約破棄を告げられた令嬢。
彼の仕事を支えるため領地運営を担ってきたが、婚約者でなくなった以上、その役目を続ける理由はない。
去った先で彼女の能力を正当に評価したのは、軍事を握る王弟辺境伯だった。
想うことをやめた先で、彼女は“対等に必要とされる場所”を手に入れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる