婚約破棄をされましたが私は元気です

にいるず

文字の大きさ
17 / 19
サミエル・コールマスのその後

自分の気持ち

しおりを挟む
 サミエルは、パーティーの次の日の朝すぐに朝食をとっている自分の母親の元にいった。

 「アミエ嬢は最近こちらにやってこないですが、何かあったのですか?」

 サミエルに唐突にアミエの話を出された母親は、びっくりした様子でまじまじと自分の息子を見つめた。まるで奇妙な生き物でも見るように。

 「いったい急にアミエの話なんてして、どうしたのです?」

 「いえ。昨日のパーティーにも出ておりませんでしたし、最近こちらの屋敷にも来ておりません。ホワイトも寂しがっているようですし。私も、ブラックと会えなくて...」

 「そう~。寂しがっているのね、ホワイトがねえ~」

 何やら母親は、考えている風だったが

 「アミエにもまた顔を出してもらうことにしましょう。もうすぐ忙しくなることでしょうしね」

 「忙しく?」

 「ええそうですよ。やっとアミエにも決まりそうなんです。婚約者がね」

 それから自分が何の話をしたのか、サミエルは全く覚えていなかった。アミエに婚約者ができる!この前一緒に踊っていた男だろうか。そのあとサミエルは、仕事もろくに手につかなかった。
 
 仕方なくサミエルは、ホワイトと庭の散歩をすることにした。ホワイトは楽しそうにしているが、サミエルの心は晴れなかった。どこを歩いていても、アミエとの思い出がよぎる。この一年アミエと一緒に犬の世話をしたり犬と遊んだり今思えば楽しかった。
 そういえば婚約破棄のあと心にぽっかりと空いたはずの穴が、いつの間にかふさがっていた。モリッシュのことは今では思い出すことさえない。思い出すといえばアミエのことばかりだ。
 その時に友人やエドワルドの言った言葉が思い出された。

 彼らは、サミエルより先に気づいていた。いやサミエルが気付くのが遅すぎたのだ。サミエルは、アミエが自分に好意を持ってくれていると過信していた。人の心なんで移ろいやすいのを自分が一番知っていたはずなのに。アミエだけは、ずっと自分のことを思っていてくれると思い込んでいた。
 サミエルは今更ながら頭を抱えたくなった。
 
 サミエルはすぐさま、執事を探した。父が自分の執務室にいるのを聞いてすぐさま向かう。

 「父上、お話があります」

 「なんだ?」

 部屋に入ると、書類に目を通していた父親がサミエルを見た。そしてサミエルの切羽詰まった顔を見て少し驚いたようだったが、何食わぬ顔で聞いてきた。

 「実は、アミエ嬢のことなんですが...」

 言葉が出なかった。

 「アミエ嬢がなんだね」

 父親は、サミエルに近くのいすに腰掛けるように言うと、じっくり聞くためか書類を見るときに使う眼鏡をはずした。

 「今更ですが、私はアミエ嬢に好意を持っていることを自覚しました」

 サミエルがそういうと、父親は首を振った。

 「本当に今更だな」

 父親はサミエルをじっと見つめた後、話をはじめた。

 「これは、お前には決して言わないでくれと言われていたのだが...」

 父親から聞いた話は、サミエルを驚愕させるものだった。

 アミエが、もうサミエルとの婚約を望んでいないこと。サミエルには心に区切りがつくまで、そっとしてあげてほしいといったこと。長い間とは言わないのでせめて一年だけでもといったこと。それではアミエに申し訳ないといった父親に、それなら犬を連れてくるから、サミエルに世話をさせてほしいといったこと。それが今までサミエルがしでかしたお詫びの条件だといったこと。自分から侯爵家には話をするので、安心してほしいといったこと。ではアミエはどうするかと父親が聞いたところ、サミエルには本当に好きになった人と結婚してほしいので、自分はあきらめるといったこと。

 サミエルはすべてを聞いて、ただうなだれるしかなかった。今まで自分が自由でいられたのは、アミエのおかげだったのだ。
 思えばモリッシュと一緒にいたくなくて、自分からアミエに接近していった。サミエルは、体よくアミエを利用していたのだ。貴族女性にとって年齢は大きい。サミエルに使った時間は、計り知れない価値がある。それをサミエルのために貴重な時間を費やしてくれた。

 「侯爵家は、よくアミエ嬢の話を了承しましたね」

 サミエルが振り絞るような声で聞いた。

 「私も気になって直接侯爵家当主に聞いてみた。そうしたら、自分の好きなことをさせてほしいといったそうだ。その覚悟を聞いて当主もアミエ嬢の話を許可したそうだ。ただ複雑そうな顔をしていたよ。娘ながらあまりに不憫だと」

 「そうだったんですね」

 サミエルは、部屋を出た。

 ドアを閉めるときに後ろから声がした。

 「サミエル、後悔はするな。どうなろうと偽りない自分の気持ちだけは言っておく方がいい」

 父がそうサミエルに声をかけた。

 サミエルは決意した。執事を探す。馬車を用意している暇さえ惜しかった。

 「今からナダタル侯爵家に向かいたい。馬を一頭用意してくれないか」

 「馬車で行かれては」

 「いや今すぐに行きたいのだ」

 「はい、かしこまりました」

 サミエルは自ら馬に乗ってアミエのもとに向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

伯爵令嬢の婚約解消理由

七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。 婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。 そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。 しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。 一体何があったのかというと、それは…… これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。 *本編は8話+番外編を載せる予定です。 *小説家になろうに同時掲載しております。 *なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。

私のブルースター

くびのほきょう
恋愛
家で冷遇されてるかわいそうな侯爵令嬢。そんな侯爵令嬢を放って置けない優しい幼馴染のことが好きな伯爵令嬢のお話。

これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子
恋愛
この度、幼馴染とお見合いを経て政略結婚する事になりました。 でも、その彼の左手薬指には、指輪が輝いてます。 もしかして、これは本当に形だけの結婚でしょうか……? 表紙はぱくたそ様のフリー素材、フォントは簡単表紙メーカー様のものを使用しております。 全年齢作品です。 ベリーズカフェ公開日 2022/09/21 アルファポリス公開日 2025/06/19 作品の無断転載はご遠慮ください。

母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈
恋愛
最愛の母モニカかが病気で生涯を終える。娘の公爵令嬢アイシャは母との約束を守り、あたたかい思いやりの心を持つ子に育った。 そんな中、父ジェラールが再婚する。継母のバーバラは美しい顔をしていますが性格は悪く、娘のルージュも見た目は可愛いですが性格はひどいものでした。 バーバラと義姉は意地のわるそうな薄笑いを浮かべて、アイシャを虐げるようになる。肉親の父も助けてくれなくて実子のアイシャに冷たい視線を向け始める。 逆に継母の連れ子には甘い顔を見せて溺愛ぶりは常軌を逸していた。

【完結】小さなマリーは僕の物

miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。 彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。 しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。 ※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)

婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。

佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。 だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。 カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。 そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。 三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。

処理中です...