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サミエル・コールマスのその後
自分の気持ち
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サミエルは、パーティーの次の日の朝すぐに朝食をとっている自分の母親の元にいった。
「アミエ嬢は最近こちらにやってこないですが、何かあったのですか?」
サミエルに唐突にアミエの話を出された母親は、びっくりした様子でまじまじと自分の息子を見つめた。まるで奇妙な生き物でも見るように。
「いったい急にアミエの話なんてして、どうしたのです?」
「いえ。昨日のパーティーにも出ておりませんでしたし、最近こちらの屋敷にも来ておりません。ホワイトも寂しがっているようですし。私も、ブラックと会えなくて...」
「そう~。寂しがっているのね、ホワイトがねえ~」
何やら母親は、考えている風だったが
「アミエにもまた顔を出してもらうことにしましょう。もうすぐ忙しくなることでしょうしね」
「忙しく?」
「ええそうですよ。やっとアミエにも決まりそうなんです。婚約者がね」
それから自分が何の話をしたのか、サミエルは全く覚えていなかった。アミエに婚約者ができる!この前一緒に踊っていた男だろうか。そのあとサミエルは、仕事もろくに手につかなかった。
仕方なくサミエルは、ホワイトと庭の散歩をすることにした。ホワイトは楽しそうにしているが、サミエルの心は晴れなかった。どこを歩いていても、アミエとの思い出がよぎる。この一年アミエと一緒に犬の世話をしたり犬と遊んだり今思えば楽しかった。
そういえば婚約破棄のあと心にぽっかりと空いたはずの穴が、いつの間にかふさがっていた。モリッシュのことは今では思い出すことさえない。思い出すといえばアミエのことばかりだ。
その時に友人やエドワルドの言った言葉が思い出された。
彼らは、サミエルより先に気づいていた。いやサミエルが気付くのが遅すぎたのだ。サミエルは、アミエが自分に好意を持ってくれていると過信していた。人の心なんで移ろいやすいのを自分が一番知っていたはずなのに。アミエだけは、ずっと自分のことを思っていてくれると思い込んでいた。
サミエルは今更ながら頭を抱えたくなった。
サミエルはすぐさま、執事を探した。父が自分の執務室にいるのを聞いてすぐさま向かう。
「父上、お話があります」
「なんだ?」
部屋に入ると、書類に目を通していた父親がサミエルを見た。そしてサミエルの切羽詰まった顔を見て少し驚いたようだったが、何食わぬ顔で聞いてきた。
「実は、アミエ嬢のことなんですが...」
言葉が出なかった。
「アミエ嬢がなんだね」
父親は、サミエルに近くのいすに腰掛けるように言うと、じっくり聞くためか書類を見るときに使う眼鏡をはずした。
「今更ですが、私はアミエ嬢に好意を持っていることを自覚しました」
サミエルがそういうと、父親は首を振った。
「本当に今更だな」
父親はサミエルをじっと見つめた後、話をはじめた。
「これは、お前には決して言わないでくれと言われていたのだが...」
父親から聞いた話は、サミエルを驚愕させるものだった。
アミエが、もうサミエルとの婚約を望んでいないこと。サミエルには心に区切りがつくまで、そっとしてあげてほしいといったこと。長い間とは言わないのでせめて一年だけでもといったこと。それではアミエに申し訳ないといった父親に、それなら犬を連れてくるから、サミエルに世話をさせてほしいといったこと。それが今までサミエルがしでかしたお詫びの条件だといったこと。自分から侯爵家には話をするので、安心してほしいといったこと。ではアミエはどうするかと父親が聞いたところ、サミエルには本当に好きになった人と結婚してほしいので、自分はあきらめるといったこと。
サミエルはすべてを聞いて、ただうなだれるしかなかった。今まで自分が自由でいられたのは、アミエのおかげだったのだ。
思えばモリッシュと一緒にいたくなくて、自分からアミエに接近していった。サミエルは、体よくアミエを利用していたのだ。貴族女性にとって年齢は大きい。サミエルに使った時間は、計り知れない価値がある。それをサミエルのために貴重な時間を費やしてくれた。
「侯爵家は、よくアミエ嬢の話を了承しましたね」
サミエルが振り絞るような声で聞いた。
「私も気になって直接侯爵家当主に聞いてみた。そうしたら、自分の好きなことをさせてほしいといったそうだ。その覚悟を聞いて当主もアミエ嬢の話を許可したそうだ。ただ複雑そうな顔をしていたよ。娘ながらあまりに不憫だと」
「そうだったんですね」
サミエルは、部屋を出た。
ドアを閉めるときに後ろから声がした。
「サミエル、後悔はするな。どうなろうと偽りない自分の気持ちだけは言っておく方がいい」
父がそうサミエルに声をかけた。
サミエルは決意した。執事を探す。馬車を用意している暇さえ惜しかった。
「今からナダタル侯爵家に向かいたい。馬を一頭用意してくれないか」
「馬車で行かれては」
「いや今すぐに行きたいのだ」
「はい、かしこまりました」
サミエルは自ら馬に乗ってアミエのもとに向かった。
「アミエ嬢は最近こちらにやってこないですが、何かあったのですか?」
サミエルに唐突にアミエの話を出された母親は、びっくりした様子でまじまじと自分の息子を見つめた。まるで奇妙な生き物でも見るように。
「いったい急にアミエの話なんてして、どうしたのです?」
「いえ。昨日のパーティーにも出ておりませんでしたし、最近こちらの屋敷にも来ておりません。ホワイトも寂しがっているようですし。私も、ブラックと会えなくて...」
「そう~。寂しがっているのね、ホワイトがねえ~」
何やら母親は、考えている風だったが
「アミエにもまた顔を出してもらうことにしましょう。もうすぐ忙しくなることでしょうしね」
「忙しく?」
「ええそうですよ。やっとアミエにも決まりそうなんです。婚約者がね」
それから自分が何の話をしたのか、サミエルは全く覚えていなかった。アミエに婚約者ができる!この前一緒に踊っていた男だろうか。そのあとサミエルは、仕事もろくに手につかなかった。
仕方なくサミエルは、ホワイトと庭の散歩をすることにした。ホワイトは楽しそうにしているが、サミエルの心は晴れなかった。どこを歩いていても、アミエとの思い出がよぎる。この一年アミエと一緒に犬の世話をしたり犬と遊んだり今思えば楽しかった。
そういえば婚約破棄のあと心にぽっかりと空いたはずの穴が、いつの間にかふさがっていた。モリッシュのことは今では思い出すことさえない。思い出すといえばアミエのことばかりだ。
その時に友人やエドワルドの言った言葉が思い出された。
彼らは、サミエルより先に気づいていた。いやサミエルが気付くのが遅すぎたのだ。サミエルは、アミエが自分に好意を持ってくれていると過信していた。人の心なんで移ろいやすいのを自分が一番知っていたはずなのに。アミエだけは、ずっと自分のことを思っていてくれると思い込んでいた。
サミエルは今更ながら頭を抱えたくなった。
サミエルはすぐさま、執事を探した。父が自分の執務室にいるのを聞いてすぐさま向かう。
「父上、お話があります」
「なんだ?」
部屋に入ると、書類に目を通していた父親がサミエルを見た。そしてサミエルの切羽詰まった顔を見て少し驚いたようだったが、何食わぬ顔で聞いてきた。
「実は、アミエ嬢のことなんですが...」
言葉が出なかった。
「アミエ嬢がなんだね」
父親は、サミエルに近くのいすに腰掛けるように言うと、じっくり聞くためか書類を見るときに使う眼鏡をはずした。
「今更ですが、私はアミエ嬢に好意を持っていることを自覚しました」
サミエルがそういうと、父親は首を振った。
「本当に今更だな」
父親はサミエルをじっと見つめた後、話をはじめた。
「これは、お前には決して言わないでくれと言われていたのだが...」
父親から聞いた話は、サミエルを驚愕させるものだった。
アミエが、もうサミエルとの婚約を望んでいないこと。サミエルには心に区切りがつくまで、そっとしてあげてほしいといったこと。長い間とは言わないのでせめて一年だけでもといったこと。それではアミエに申し訳ないといった父親に、それなら犬を連れてくるから、サミエルに世話をさせてほしいといったこと。それが今までサミエルがしでかしたお詫びの条件だといったこと。自分から侯爵家には話をするので、安心してほしいといったこと。ではアミエはどうするかと父親が聞いたところ、サミエルには本当に好きになった人と結婚してほしいので、自分はあきらめるといったこと。
サミエルはすべてを聞いて、ただうなだれるしかなかった。今まで自分が自由でいられたのは、アミエのおかげだったのだ。
思えばモリッシュと一緒にいたくなくて、自分からアミエに接近していった。サミエルは、体よくアミエを利用していたのだ。貴族女性にとって年齢は大きい。サミエルに使った時間は、計り知れない価値がある。それをサミエルのために貴重な時間を費やしてくれた。
「侯爵家は、よくアミエ嬢の話を了承しましたね」
サミエルが振り絞るような声で聞いた。
「私も気になって直接侯爵家当主に聞いてみた。そうしたら、自分の好きなことをさせてほしいといったそうだ。その覚悟を聞いて当主もアミエ嬢の話を許可したそうだ。ただ複雑そうな顔をしていたよ。娘ながらあまりに不憫だと」
「そうだったんですね」
サミエルは、部屋を出た。
ドアを閉めるときに後ろから声がした。
「サミエル、後悔はするな。どうなろうと偽りない自分の気持ちだけは言っておく方がいい」
父がそうサミエルに声をかけた。
サミエルは決意した。執事を探す。馬車を用意している暇さえ惜しかった。
「今からナダタル侯爵家に向かいたい。馬を一頭用意してくれないか」
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