18 / 19
サミエル・コールマスのその後
告白
しおりを挟む
サミエルは、アミエの屋敷であるナダタル侯爵家を訪れた。執事が出てきて怪訝な顔をした。目の前のサミエルは、馬に乗ってきたせいか息を切らし髪も少し乱れている。前もって行くと先ぶれも出していないサミエルに困惑しているのだ。
「アミエ嬢にお会いしたいのですが」
サミエルのあまりの切羽詰まった表情に、執事は思わずといった風で一歩後ずさりそうになっていたが、瞬時に平静を装いこちらでお待ちくださいといって部屋に通された。やはり爵位が高いのが功を奏した。
部屋で落ち着きなく待っていると、アミエが慌てた風でやってきた。後ろには犬のブラックがちょこちょことついてきている。ただサミエルの緊張がブラックにも伝わったのだろうか。いつもならすぐに抱っこをせがむブラックが、アミエの横に並んでいる。
「どうしましたの?サミエル様?」
「ああ、急に押しかけて申し訳ない」
サミエルの緊張した様子にアミエは、びっくりしていた。
「ああ、もしかしてホワイトに何かありましたの?」
サミエルのこわばった顔にアミエは、そう解釈したようで今度はアミエの顔に緊張感が走った。
「いや、ホワイトは元気だ。ホワイトの事ではないんだ」
サミエルの言葉にアミエはほっと胸をなでおろしたが、今だサミエルの緊張した様子にアミエも怪訝な表情を浮かべ始めた。
「実は...」
サミエルはなかなか切り出せなかった。ただアミエの顔を見つめることしかできない。アミエもはじめこそサミエルの言葉を黙って待っていたが、そのうちにそわそわしてきた。
「あのう、サミエル様...」
アミエがサミエルに話しかけた時だ。ドアがノックされて声がした。
「姉さん、そろそろ行く時間だよ」
サミエルがはっとアミエを見れば、アミエは外出するような服装をしている。
「すまない。これからどこか用事でも?」
サミエルがそういうと、アミエが答える前に部屋に入ってきたアミエの弟がいった。
「姉さんは、これから劇を見に行く予定なんです」
「劇?」
「はい。お誘いを受けておりますので」
アミエが答える。
「誰と?」
サミエルが思わずアミエに問いかけた。
「姉さんに好意を見ってくれている方で、姉さんを大切にしてくれそうな方です」
アミエの弟は、そういって目の前のサミエルを厳しい表情でにらんだ。サミエルのほうが爵位も歳も上にもかかわらず、決してひるむことなくにらみつけてきた。
その様子から本当に姉であるアミエを大切に思っているのが見て取れた。
サミエルはそんな弟を気にすることもなく、アミエをじっと見た。そしてアミエに頭を下げた。
「アミエ嬢、今までほんとにすまなかった。許してくれとは言わない。それぐらいひどいことをしていた。ただ自分の気持ちを伝えたくて今日やってきた。
私は、君のことが好きだ。この気持ちは偽りないと誓える。本当に今更なのはわかっている。今更自分の気持ちを伝えたところで、君には迷惑しかないだろう。でも自分本位なのはわかってはいるが伝えたかったんだ。君を好きなことを。いや愛しているんだ。
確かに私は、モリッシュを愛していた。確かに愛していたという自覚はある。しかし今は君のことを愛している。君だけだ。いつからかと言われれば正直なところよくわからない。いつの間にか好きになっていたんだ。君が男とパーティーに出席していた時には、もう君のことが好きだったんだと思う。君のことしか見ていなかった。
こんな今になって言われても迷惑だというのはわかっているんだ。自分でも。だけど言いたかった。君に知ってもらいたかったんだ。すまない。言わないで後悔したくなかった。本当に今までありがとう」
サミエルは、そこまで言うと再びアミエに頭を下げた。そしてアミエを見つめた。アミエはサミエルの告白に言葉も出ないようだった。
しかしアミエの目から涙があふれてきたのをサミエルは見た。サミエル自身も泣いているのだろう。アミエが涙でにじんで見える。
「まいったなあ。こんなところで、告白ですか。どうするの姉さん」
アミエの弟が心底参ったという声を出してアミエを見た。アミエはだた涙を流し続けている。自分でもどうしていいのかわからないようだ。サミエルもそんなアミエを見て抱きしめてやりたいが、もしかしたら拒否されるのではと弱い自分がいる。
「もう~。いい大人が二人して仕方がないなあ。僕から伯爵には言っておくよ。今日の劇はいかないんだろう?」
アミエの弟がそう言って、部屋を出て行ってしまった。
サミエルは、アミエのもとにいってアミエを抱きしめた。
「本当にすまなかった。今からでも間に合うだろうか。君も私を少しでも愛してくれる気はあるかい?」
「ワン!」
サミエルがそういうと、今までおとなしかった犬のブラックが急に声を出した。まるでアミエの代わりに返事をするかのように。アミエはずっとサミエルの胸の中で、ただ抱かれているだけだったが小さい声を出した。
「私...私こそ、サミエル様のおそばにいてもいいのですか?」
「私はアミエ嬢にずっとそばにいてもらいたい」
「嬉しい」
サミエルとアミエは、弟から話を聞いた両親が部屋になだれ込んでくるまでずっと抱き合っていたのだった。
※このお話で終わりですが、おまけアミエの弟が一話あります。
「アミエ嬢にお会いしたいのですが」
サミエルのあまりの切羽詰まった表情に、執事は思わずといった風で一歩後ずさりそうになっていたが、瞬時に平静を装いこちらでお待ちくださいといって部屋に通された。やはり爵位が高いのが功を奏した。
部屋で落ち着きなく待っていると、アミエが慌てた風でやってきた。後ろには犬のブラックがちょこちょことついてきている。ただサミエルの緊張がブラックにも伝わったのだろうか。いつもならすぐに抱っこをせがむブラックが、アミエの横に並んでいる。
「どうしましたの?サミエル様?」
「ああ、急に押しかけて申し訳ない」
サミエルの緊張した様子にアミエは、びっくりしていた。
「ああ、もしかしてホワイトに何かありましたの?」
サミエルのこわばった顔にアミエは、そう解釈したようで今度はアミエの顔に緊張感が走った。
「いや、ホワイトは元気だ。ホワイトの事ではないんだ」
サミエルの言葉にアミエはほっと胸をなでおろしたが、今だサミエルの緊張した様子にアミエも怪訝な表情を浮かべ始めた。
「実は...」
サミエルはなかなか切り出せなかった。ただアミエの顔を見つめることしかできない。アミエもはじめこそサミエルの言葉を黙って待っていたが、そのうちにそわそわしてきた。
「あのう、サミエル様...」
アミエがサミエルに話しかけた時だ。ドアがノックされて声がした。
「姉さん、そろそろ行く時間だよ」
サミエルがはっとアミエを見れば、アミエは外出するような服装をしている。
「すまない。これからどこか用事でも?」
サミエルがそういうと、アミエが答える前に部屋に入ってきたアミエの弟がいった。
「姉さんは、これから劇を見に行く予定なんです」
「劇?」
「はい。お誘いを受けておりますので」
アミエが答える。
「誰と?」
サミエルが思わずアミエに問いかけた。
「姉さんに好意を見ってくれている方で、姉さんを大切にしてくれそうな方です」
アミエの弟は、そういって目の前のサミエルを厳しい表情でにらんだ。サミエルのほうが爵位も歳も上にもかかわらず、決してひるむことなくにらみつけてきた。
その様子から本当に姉であるアミエを大切に思っているのが見て取れた。
サミエルはそんな弟を気にすることもなく、アミエをじっと見た。そしてアミエに頭を下げた。
「アミエ嬢、今までほんとにすまなかった。許してくれとは言わない。それぐらいひどいことをしていた。ただ自分の気持ちを伝えたくて今日やってきた。
私は、君のことが好きだ。この気持ちは偽りないと誓える。本当に今更なのはわかっている。今更自分の気持ちを伝えたところで、君には迷惑しかないだろう。でも自分本位なのはわかってはいるが伝えたかったんだ。君を好きなことを。いや愛しているんだ。
確かに私は、モリッシュを愛していた。確かに愛していたという自覚はある。しかし今は君のことを愛している。君だけだ。いつからかと言われれば正直なところよくわからない。いつの間にか好きになっていたんだ。君が男とパーティーに出席していた時には、もう君のことが好きだったんだと思う。君のことしか見ていなかった。
こんな今になって言われても迷惑だというのはわかっているんだ。自分でも。だけど言いたかった。君に知ってもらいたかったんだ。すまない。言わないで後悔したくなかった。本当に今までありがとう」
サミエルは、そこまで言うと再びアミエに頭を下げた。そしてアミエを見つめた。アミエはサミエルの告白に言葉も出ないようだった。
しかしアミエの目から涙があふれてきたのをサミエルは見た。サミエル自身も泣いているのだろう。アミエが涙でにじんで見える。
「まいったなあ。こんなところで、告白ですか。どうするの姉さん」
アミエの弟が心底参ったという声を出してアミエを見た。アミエはだた涙を流し続けている。自分でもどうしていいのかわからないようだ。サミエルもそんなアミエを見て抱きしめてやりたいが、もしかしたら拒否されるのではと弱い自分がいる。
「もう~。いい大人が二人して仕方がないなあ。僕から伯爵には言っておくよ。今日の劇はいかないんだろう?」
アミエの弟がそう言って、部屋を出て行ってしまった。
サミエルは、アミエのもとにいってアミエを抱きしめた。
「本当にすまなかった。今からでも間に合うだろうか。君も私を少しでも愛してくれる気はあるかい?」
「ワン!」
サミエルがそういうと、今までおとなしかった犬のブラックが急に声を出した。まるでアミエの代わりに返事をするかのように。アミエはずっとサミエルの胸の中で、ただ抱かれているだけだったが小さい声を出した。
「私...私こそ、サミエル様のおそばにいてもいいのですか?」
「私はアミエ嬢にずっとそばにいてもらいたい」
「嬉しい」
サミエルとアミエは、弟から話を聞いた両親が部屋になだれ込んでくるまでずっと抱き合っていたのだった。
※このお話で終わりですが、おまけアミエの弟が一話あります。
25
あなたにおすすめの小説
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
伯爵令嬢の婚約解消理由
七宮 ゆえ
恋愛
私には、小さい頃から親に決められていた婚約者がいます。
婚約者は容姿端麗、文武両道、金枝玉葉という世のご令嬢方が黄色い悲鳴をあげること間違い無しなお方です。
そんな彼と私の関係は、婚約者としても友人としても比較的良好でありました。
しかしある日、彼から婚約を解消しようという提案を受けました。勿論私達の仲が不仲になったとか、そういう話ではありません。それにはやむを得ない事情があったのです。主に、国とか国とか国とか。
一体何があったのかというと、それは……
これは、そんな私たちの少しだけ複雑な婚約についてのお話。
*本編は8話+番外編を載せる予定です。
*小説家になろうに同時掲載しております。
*なろうの方でも、アルファポリスの方でも色んな方に続編を読みたいとのお言葉を貰ったので、続きを只今執筆しております。
天真爛漫な婚約者様は笑顔で私の顔に唾を吐く
りこりー
恋愛
天真爛漫で笑顔が似合う可愛らしい私の婚約者様。
私はすぐに夢中になり、容姿を蔑まれようが、罵倒されようが、金をむしり取られようが笑顔で対応した。
それなのに裏切りやがって絶対許さない!
「シェリーは容姿がアレだから」
は?よく見てごらん、令息達の視線の先を
「シェリーは鈍臭いんだから」
は?最年少騎士団員ですが?
「どうせ、僕なんて見下してたくせに」
ふざけないでよ…世界で一番愛してたわ…
【完結】小さなマリーは僕の物
miniko
恋愛
マリーは小柄で胸元も寂しい自分の容姿にコンプレックスを抱いていた。
彼女の子供の頃からの婚約者は、容姿端麗、性格も良く、とても大事にしてくれる完璧な人。
しかし、周囲からの圧力もあり、自分は彼に不釣り合いだと感じて、婚約解消を目指す。
※マリー視点とアラン視点、同じ内容を交互に書く予定です。(最終話はマリー視点のみ)
婚約してる彼が幼馴染と一緒に生活していた「僕は二人とも愛してる。今の関係を続けたい」今は許してと泣いて頼みこむ。
佐藤 美奈
恋愛
公爵令嬢アリーナは、ダンスパーティの会場で恋人のカミュと出会う。友人から紹介されて付き合うように煽られて、まずはお試しで付き合うことになる。
だが思いのほか相性が良く二人の仲は進行して婚約までしてしまった。
カミュにはユリウスという親友がいて、アリーナとも一緒に三人で遊ぶようになり、青春真っ盛りの彼らは楽しい学園生活を過ごしていた。
そんな時、とても仲の良かったカミュとユリウスが、喧嘩してるような素振りを見せ始める。カミュに繰り返し聞いても冷たい受け答えをするばかりで教えてくれない。
三人で遊んでも気まずい雰囲気に変わり、アリーナは二人の無愛想な態度に耐えられなくなってしまい、勇気を出してユリウスに真実を尋ねたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる