連合艦隊司令長官、井上成美

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”明治の頭”からの脱却

模擬海戦

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過日の井上の演説の内容はすぐに艦隊ばかりか海軍中に広まった。
反応はそれぞれだったが最も反響があったのが航空屋と大砲屋だった。
前者はこれまであくまで補助の役割として日の目を見てこなかったが、ここに来て一気に主力としての役割を期待されたのだ。
搭乗員から整備兵、それに加え航空機の設計者などの雰囲気は晴朗なものとなった。
それと対照的にくぐもった雰囲気になったのが大砲屋である。
これまで自分たちが一流であると自負していたのにも関わらず、急に明治の頭、いわば時代遅れと言われたことは彼らのプライドを大いに傷つけた。
そして、ある男がそんな大砲屋の現状を変えるために井上の所に殴り込みに来た。


「長官!あの演説はなんですか!まるで戦艦が無用の長物のようではありませんか!」
そうまくし立てたのは井上より後輩の福留繁だった。
「なにも言った通りだ。戦艦は航空機の前では大して役に立たないものだ。」
この井上の言葉はますます福留を憤慨させた。
「貴方はいつもそうだ!戦艦と聞いただでそれを否定しにかかる!大体、航空機が海戦に役に立ったという記録はないじゃないか!」
井上はその気迫にも動ぜず言い放った。
「では記録を作れば良いではないか。」


高雄沖100海里、民間船の通行を一時的に禁止しての模擬海戦が行われた。
参加したのは第1艦隊から戦艦「長門」「扶桑」「榛名」「霧島」、第30駆逐隊、第21駆逐隊、そしてその敵役として鹿屋航空隊の96式陸攻32機だった。
「さてどうなるか。」
井上は駆逐艦「白露」からその様子を見守っていた。
福留は長門で指揮を執るためここにはいなかった。
「そろそろだぞ。」
横に居た小沢が双眼鏡を覗き込みながら言う。
そして艦隊の対空射撃が始まった。


「敵編隊、二つに分かれました!」
その報告は予想されていたことだ。
雷撃を行うには低空、水平爆撃を行うには航空を飛ぶ必要があったからだ。
「まずは雷撃隊を始末しろ。」
福留の命令通り4戦艦の高角砲、機銃が一斉に雷撃隊に火を噴いた。
駆逐艦の機銃も同様だった。
だが撃墜判定になった機体はまだ1機もない。
「銃座は何をしている!」
福留は憤りを隠せない。
そしてやっとここで撃墜判定が出た。
高角砲が直撃したようだ。
陸攻の機首が赤い塗料で塗りつぶされているのが見えた。
だがそれは見えるまで接近していたことを意味した。
「扶桑、被雷!」
「榛名、速力低下!」
また長門も2本被雷して速力が低下していた。
福留にとってそれはまさに悪夢だった。
そこに追い打ちをかけるように水平爆撃が行われる。
狙われたのは速力が低下していた榛名と扶桑、そして長門。
対空射撃のほとんどが雷撃隊に行われていたこともあり爆撃隊は正確に照準が行えた。
250㎏爆弾32発の内8発が榛名、7発が扶桑、5発が長門に命中した。
これで榛名、扶桑が撃沈判定となり長門も大破判定となった。
それに対して鹿屋航空隊は2機の96式陸攻を撃墜判定にされただけだった。
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